きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「桜餅」__金曜俳句への投句一覧
(2月26日号掲載=1月31日締切)

「鶯餅」「草餅」「桜餅」など、季節感あふれる和菓子が店頭に並びます。この読みわけは楽しく、難しいですね。

さて、どんな句が寄せられたでしょう。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2021年1月29日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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※投句のまとめに漏れがありました。追加して掲載しました。申し訳ございませんでした。(2月8日)

【桜餅】
大学は画面の向かふ桜餅
釣銭は賽銭となる桜餅
二段づつ階段上り桜餅
下の子はまだ葉を残し桜餅
桜餅鶯餅と買いにけり
手の平に葉の香り匂ふ桜餅
老いの目の見つめて緩む桜餅
桜餅へこみて餡に潮の味
さくらもち少女の頬に色のこす
見入らるる枯れ枝の先桜餅
桜餅おまけに一つ若女将
玄関に赤き傘並ぶ桜餅
チェーホフの話などして桜餅
碁敵の内儀は微笑み桜餅
春本のブックカバーや桜餅
菓子折の中より匂ふ桜餅
傷跡のやうな筋あり桜餅
桜餅葉の緑こしかくし味
踊り子の小手に名代の桜餅
ホステルで皆で広げる桜餅
ゆるゆると一人の午後や桜餅
百歳の木の百枚で桜餅
祝い事少なき暮らし桜餅
襟立てて急ぐ坂道桜餅
丸い皿寝床で食べる桜餅
葉を食べる食べない派あり桜餅
お抹茶と桜餅でる茶房かな
残り香の眩暈に似たり桜餅
身を靠れ葉に擁かれるる桜餅
桜餅吉野の山の匂ひかな
桜餅わが青春の田舎町
湯を沸かす合間桜の餅艶り
食べるのは桜餅プラスデニッシュパン
ご褒美の桜餅食ぶ庭掃除
川風に香りを乗せて桜餅
「心」ある「秘密」の二文字桜餅
途中下車できぬ恋路や桜餅
桜餅葉の塩味の旨きこと
手渡しに母妻我へさくらもち
移り香や葉に包まれし桜餅
ゆるゆると一人の午後や桜餅
友達をすぐにつくる子桜餅
本件の捜査対象桜餅
硝子窓撫でるよな風桜餅
馬の上の風に口開け桜餅
天城峠の茶屋に名代の桜餅
葉の反れり話はずみし桜餅
一つだけ残り唾飲む桜餅
パティシエの心延へ愛し桜餅
掌に載せ香しや桜餅
桜湯やひとりの午後にひらきゆく
指先の香なごり惜しむ桜餅
うす紅のふくらみ麗ら桜餅
車座で桜餅食ぶビル現場
老僧のこれはこれはと桜餅
仏壇の遠くにひとつ桜餅
たらちねの母の手小さき桜餅
万歩計酷使の後や桜餅
目線まで位牌高くし桜餅
名物にも旨きものあり桜餅
桜餅ニコちゃん顔で食す孫
歯の浮きし世辞と日本茶桜餅
園児らはいつも大声さくら餅
革命の遠き託ちつ桜餅
来し方の程よき塩味桜餅
ドアノブに5円袋の桜餅
桜もち赤子を抱くように持ち
窓ぎはのこけし明るし桜餅
つつまれてゐる絆かと桜餅
桜餅葉には母なる海の味
仏前に供える桜餅二つ
お使いのご褒美一つ桜餅
喜寿祝ふ禁酒の身には桜餅
海からの風来るごとし桜餅
桜餅江戸は異国と道明寺
百万回生きて食べたし桜餅
桜葉のしおれ具合や桜餅
飲ん兵衛の一言こねる桜餅
桜餅つぶの甘さに磯香る
繰り返す喧嘩の訳や桜餅
桜餅となりはしんとしたる部屋
洋風の桜餅売る老舗かな
桜餅涙の味に似たりかな
詠み人を伏せる一句や桜餅
黒文字に手応えの良し桜餅
桜餅用のなけれど母を訪ひ
パーティーに一人三個の桜餅
糖尿病患者つくりし桜餅
酒酌まぬ君には二つ桜餅
介護施設に弾むざわめき桜餅
余白なきやうに買ひたる桜餅
この香りこの色あいや桜餅
粒餡に和を閉じ込めて桜餅
押し売りのごと母の来て桜餅
桜餅しきそくぜくう三回忌
ぴったりの靴だったのに桜餅
酩酊のあるじむかへて桜餅
じき消灯今日の栞の桜餅
桜餅足には足の主張有り
百年を守り通して桜餅
塩かげん母にならひて桜餅
雨あがる嵯峨嵐山桜餅
お好みを言ふと関東桜餅
桜餅葉の塩味の旨きこと
三つ違ひの姫路の姉と桜餅
仲人の話まどろし桜餅
桜餅日めくりほどに葉を剥かれ
葉の中の少女の記憶桜餅
桜餅自宅勤務の妻のため
桜餅銀婚の日のつつがなく
桜餅見合ひの卓の漆塗り
さくら餅提げ長き橋長き坂
川音に身を置きなほす桜餅
その家の歴史包める桜餅
神棚に冷ゆるひとつの桜餅
葉の味を分かり初めたり桜餅
ほんのり匂ふ差し入れの桜餅
塩味に甘み増したり桜餅
病床に置かれラジオと桜餅
初めての最後の見合桜餅
風鐸に光したたり桜餅
桜餅まぶしく雨の上りける
指きりで約束かわし桜餅
あとで知る母の好物さくら餅
桜もち一つお供えりん二つ
年頃の子を聞き役に桜餅
桜餅小さき鐘を風が突き
桜餅松崎の葉に包まれり
桜餅好みはほんのり桜色
馥郁と夢中に香る桜餅
旅に出る日を待ちわびて桜餅
鳥と日と人の賑はひ桜餅
制服を脱ぎてきし子と桜餅
百年の京の老舗や桜餅
夕寺の雨を厭わず桜餅
大川にかをりを乗せて桜餅
しっとりと品よき餡の桜餅
さくらもち頬に紅さす乙女達
卒業を祝うレイより桜餅
桜餅夜を抱ける曙よ
あんぱんのおへそにちょっと桜漬
恩師には卒業以来桜餅
桜餅茶は到来を封開けて
亡母まだ名勝巡る桜餅
桜餅葉ごと食べる人笑ふ人
嘱託の小さな机桜餅
このあたり観るものなくも桜餅
結婚も離婚もせずに桜餅
大口で桜餅食ぶ男かな
さくらもち手に栗鼠ほどの重さかな
牛乳を飲みつつ老父桜餅
清姫のことにもふれて桜餅
この街のとらやは二軒桜餅
懲悪の間際のしをり桜餅
母思ひ即ち供ふ桜餅
残る葉の喜怒哀楽や桜餅
しよっぱかり何もせぬ夜の桜餅
老いの手に拝むがごとく桜餅
絵手紙に待たせし後の桜餅
いつからの阿吽の呼吸桜餅
やや斜めに飾る二つの桜餅
日だまりに明日嫁ぐ子と桜餅
あえかなる江戸の手ざはり櫻餅
葉一枚はがさづに喰ぶ長命寺
真白なる桜餅買ふ嵐山
桜餅嘘はお互ひ様であり
お抹茶と桜餅でる茶房かな
千曲川見晴らす墓の桜餅
墨堤を歩き疲れて桜餅
雉鳩のいる日向にて桜餅
桜餅ひとり旅せし言問橋
嬰児の肌の柔みや桜餅
テラスてふ大川端や桜餅
幼子の頬こそ愉し桜餅
毛氈に光集まる桜餅
桜餅一枚の葉の取り合はせ
桜餅想い浮かぶは母の顔
墨堤の子規を偲びし桜餅
しなだれて葉に肌寄せる桜餅
期せずして笑み交わしけり桜餅
大川や橋の丸みの桜餅
桜もち箱を開け閉め帰り道
合格の報を待ちわび桜餅
大黒の替はれば変はる桜餅
葉を食ぶる間合頃合桜餅
先取りと云いて茶紙の桜餅
葉を食べる食べない派ある桜餅
点滴の速さを落とし桜餅
半分こ残りは妻とさくらもち
ひねもすの雨しづかなる桜餅
師を訪うて師の顔緩ぶ桜餅
うすい葉に記憶の香り桜餅
桜餅葉つぱ喰ふ人喰はぬ人
香ぐはしき匂ひをかぶる桜餅
さくら餅一つに味方と変わる人
ひとり旅ふらりと入る桜餅
節約の日々の疲れや桜餅
剥きし葉に遊ぶ幼子桜餅
黒文字の焼印褒めて桜餅
日照雨する坂みてゐたり桜餅
桜餅お茶っ葉半さじ多く入れ
おねいさんになるのと幼さくら餅
食べ頃は食べる前だと桜餅
定年を勤め上げ食ぶ桜餅
手づくりは母から娘桜餅
二度寝せし土曜の朝や桜餅
葉に餡子かをり楽しむ桜餅
ほどほどの暮らしほどよき桜餅
のんしやらと隅田堤は桜餅
万智さんの歌を言ふ子や桜餅
ガラス越しに波を打ちたる桜餅
縁側の碁敵唸り桜餅
結局は手づかみで食ふ桜餅
菓舗の名を挙げ子より桜餅
けふ集ふ顔を数へて桜餅
桜もち落ちた葉をもて遊ぶ猫
謝りたき人の一覧桜餅
美しき夢醒めぬ続きの桜餅
桜餅葉っぱは鹿に茶店裏
買出しの駄賃富士屋の桜もち
目と鼻を動かす香り桜餅
思う人はありやなしやと櫻餅
東には東の人の桜餅
楽しみは子の寝たあとの桜餅
治りますと告げられし母桜餅
桜餅ライチ大福栗饅頭
揃ひたるをんな四代桜餅
唐揚げを好む時勢の桜餅
桜餅茶釜に侍して客を待つ
一葉の残りし皿や桜餅
あくまでも地元の葉つぱ桜餅
桜餅客間に姉の晴れ着かな
葉脈はいのちの在処桜餅
桜もち赤本は捨てずに仕舞ふ
掌のうへに葉をひろげたる桜餅