きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「秋の昼」__金曜俳句への投句一覧
(10月26日号掲載=9月30日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

のんびりと明るい「春の昼」に対し、透明感あふれる「秋の昼」は空間の広がりも感じさせますね。

さて、どんな句が寄せられたでしょうか。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2018年10月26日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【秋の昼】
秋の昼までに帰れば恙なく
秋の昼遠く電車の窓光り
呼びかけの避難訓練秋の昼
秋の昼母のリボンの黒さかな
秋の昼木下に白き曼珠沙華
逸れることひたすら祈る秋の昼
ロボツトに我が名呼ばれし秋の昼
てとてとと歩き初む吾子秋の昼
クシコスポスト微かに聞こゆ秋の昼
今月のノルマ達成秋の昼
厚切りのチャーシュー二枚秋の昼
妹に父のこころで秋の昼
秋の昼メールに絵文字混ざりけり
湯上がりの石鹸かをる秋の昼
秋の昼主治医の診察は五秒
古物屋に聖母マリアや秋の昼
延々と愚痴は続くよ秋の昼
書きかけの手紙伏せあり秋の昼
大道具の後ろに廻る秋の昼
秋の昼立心偏の文字並べ
冬瓜の粉吹き止まず秋の昼
秋昼の仁王駆け寄る下駄の音
秋の昼誂へたての喪服かな
来る年の暦並びぬ秋の昼
どこまでも歩けさうな日秋の昼
抱き上げし児の燥ぎ出す秋の昼
秋の昼帽子選びの頬緩み
遠くからマーチの太鼓秋の昼
新聞紙チラシを畳む秋の昼
秋の昼日だまりに立つ蚤の市
理は生者必滅秋の昼
腕組んでリトル・ソウルや秋の昼
テーブルの鍵眩しくて秋の昼
ベランダに空の水槽秋の昼
退廃と倦怠に満ちた秋の昼
秋の昼アイロン掛けとジムノペディ
山寺の赤いポストや秋の昼
美少年に育ちし孫や秋の昼
年ごとにふるさと遠く秋の昼
秋の昼野良猫の来る勝手口
エアーメール巴里の香放つ秋の昼
摘んだ花ベンチに萎れ秋の昼
装丁は本の玄関秋の昼
秋の昼目ぞ屢叩く正午かな
雨音はスタッカートや秋の昼
秋の昼今際を誇るぎんやんま
水底に光る小魚秋の昼
秋の昼ひたすら西へ行く列車
街道に江戸のおもかげ秋の昼
秋の昼畠の向こうはまた畠
帆をたたむ音は湖畔に秋の昼
空群青タルチョはためく秋の昼
湯けむりの立ち上がりを秋の昼
秋の昼クレーンに二歩あとずさり
哀しみを含みし光秋の昼
うたた寝にEメール音秋の昼
無機質な物の美学や秋の昼
銭湯の桶のこだます秋の昼
地図拡げ猫と留守居や秋の昼
いまさらの反戦フォーク秋の昼
秋の昼あいつの出方待ちにけり
秋の昼大内刈の決まりけり
迫りくるブラスバンドや秋の昼
ふしだらに抱かれてみたい秋の昼
高鳴きに追われ茅刈る秋の昼
常歩の回転木馬秋の昼
牛の背を洗ふ少年秋の昼
秋の昼日陰に干さる物想ひ
干葡萄値切る露店や秋の昼
絵葉書も売るたばこ屋や秋の昼
秋昼の突貫工事仮歯取る
胎動は自分の腹か秋の昼
秋の昼買ひ物籠は口開けて
秋の昼雲の固さを身振りにて
秋の昼道なりに訪ふ小寺かな
あんパンは月の丸さよ秋の昼
テレビ見て欠伸出るなり秋の昼
秋の昼ラーメン定食餃子付
樹々の葉の数さえ見えて秋の昼
蕎麦切の音まで美味し秋の昼
秋の昼遊ばせるだけの足の指
あれこれとお八つ集まる秋の昼
峡奥の三戸だけなる秋の昼
植物はどんどん伐られ秋の昼
秋の昼飛行機雲の伸びゆけり
美しき野良猫もいて秋の昼
猫たちは思い思いに秋の昼
水脈すぐにほどけて無数秋の昼
秋のひる男坂より海を見て
秋の昼百円で売る三輪車
秋の昼極太麺荒々しかる
秋の昼さざなみめける夫の声
植え込みや上に咲く花秋の昼
リハビリに励みし母や秋の昼
丁寧に珈琲を淹れ秋の昼
象の鼻止まるときなき秋の昼
秋の昼聳えて白きポタラ宮
僧叩く鉦の音高し秋の昼
水際に跼むひとりや秋の昼
ラジオより長き朗読秋の昼
湯上りの背に風渡る秋の昼
秋の昼けんけんぱして膝痛む
秋の昼少女は髪を束ねをり
どこへ行こうと老人だらけ秋の昼
秋の昼横に裸のをんなをり
外回りさぼつてゐたる秋の昼
カスタードにバニラビーンズ秋の昼
喉仏ゆつくり動く秋の昼
友だちとゲームに夢中秋の昼
映画館出で眩しき秋の昼
若かりし頃のエロ本秋の昼
蛇使ひ遠巻きして秋の昼
生きること輝いてくる春の昼
だるま船過ぐる墨堤秋の昼
裏山に本を枕や秋の昼
交番で僧が道聞く秋の昼
関節のねじをゆるめる秋の昼
差し水に泡の鎮もり秋の昼
絵の売れてパリの左岸や秋の昼
草叢に虫の音微か秋の昼
レコードの小さきノイズや秋の昼
空耳で亡き妻の声秋の昼
鳩尾に落とすカステラ秋の昼
ひと気無き賽の河原や秋の昼
秋の昼光学研究室覗く
秋の昼貴女が嘘を吐く訳は
古本に書き込み多し秋の昼
パスワード二度間違へて秋の昼
秋の昼飛ぶものはみな光帯び
詩作にはちょうどよい坂秋の昼
行商の車に演歌秋の昼
鶏頭のいよよ色凝り秋の昼
秋の昼厨の隅のコルク栓
珈琲をゆつくり落とす秋の昼
「みずうみ」に残る折り目や秋の昼
秋の昼至急回覧庭越しに
白磁皿金継ぎおへし秋の昼
広辞苑両手で受くる秋の昼
秋の昼丸山健二短篇集
お代りは二杯までなり秋の昼
助手席の長い寝息や秋の昼
拝殿のただ暗かりし秋の昼
友だちと談笑す父秋の昼
秋の昼警報だらけのテレビ画面
秋の昼家族写真の水族館
幾万の人形立てる秋の昼
宇宙に人が生きている秋の昼
草生えて人と犬おり秋の昼
壜は影四角くおとす秋の昼
登窯煙の匂う秋の昼
冬籠りまで日数(ひかず)読む秋の昼
秋の昼ししゃも味噌汁イモサラダ
座り込む人の談笑秋の昼
水車から光の跳ぬる秋の昼
駄菓子屋に子等の影無く秋の昼
おにぎりのフイルム外す秋の昼
植ゑ替の花苗選ぶ秋の昼
聞くほどに嘘の交じりし秋の昼
若冲の石仏にあふ秋の昼
移ろへる時美しき秋の昼
秋の昼ヨーガの呼吸深く吐く
避難所の人まばらにて秋の昼
秋真昼五分遅れし腕時計
もう嫌と情死をせがむ秋の昼
売上げのグラフ伸びずや秋の昼
重吉か中也か迷う秋の昼
節穴を塞いでをりぬ秋の昼
床の間にトランプの箱秋真昼
引き下がる時の敬語や秋の昼
民生の会合秋の昼頃か
落語家の茶を飲む仕草秋の昼
蓬けては空をながめる秋の昼
湖の波の眩しき秋の昼
嘘ばれし漢のかづら秋の昼
目ぐすりの一すじ頬に秋の昼
路地に干す紫紺の和傘秋の昼
湧き水に魚動かざる秋の昼
秋の昼二人に三つプリン買ふ
秋の昼通りすがりのケンケンパ
秋昼の不要不急の喫茶店
けん玉で世界一周秋の昼
解体のお堂の梁や秋の昼
薄玻璃で雨隔てをる秋の昼
秋の昼心のなかを見せたがる
秋の昼彫刻刀のひと揃ひ
山寺に出囃子聞ゆ秋の昼
生くるとは死すとは秋の昼に想ふ
視力8こんな人いる秋の昼
薄雲をくぐる飛行機秋の昼
秋の昼母の話はエンドレス
秋の昼次来る列車二時間後
秋の昼百円均一の御世辞
車押す母の歩みや秋の昼
ホットコーヒー口に急く秋の昼
あの人の短篇集や秋の昼