きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「雛市」__金曜俳句への投句一覧
(3月31日号掲載=2017年2月28日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年3月31日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【雛市】
雛市や孫に似ている顔はなく
チワワ抱く男雛市よぎりけり
室町で富士見えし日や雛の市
妊娠と解つたその日に雛市に
雛市のありし雨降る街をゆく
雛市に寄り道したき金曜日
甲高き声重なりて雛の市
雛市で魂浮かぶ雛の顔
雛市や帰りは熱き蕎麦啜る
義母と母義父と父連れ雛市に
雛市の雛と目が合ひ雛笑ふ
雛市に行かずネットで済ませけり
雛市や値踏みしながらされながら
雛市や幾年超えて発光す
雛市や赤は嫌ひと女の子
雛市やひときわ高き幟立つ
異国(とつくに)の孫には似ずや雛の市
迂回路を示す矢印雛の市
雛市から帰りピアノをどうしやう
雛市や置けぬものまで買はされて
雛市の洋服を着た小犬たち
ざわざわとさざめき渡る雛の市
惣菜を片手に覗く雛売場
雛市の灯り泡だつやうに増ゆ
雛市や妻のこだわるおぼこ顔
おさな子が泣いて佇む雛売場
背の高き父に抱かれて雛の市
雛の市走り抜ければ雛のかざ
雛市や並ぶ雛みな陽に染まる
雛市や甘味処に緋毛氈
雛の市奥にまします古代雛
母と行く灯りやはらか雛の店
鄙びたる街の日向の雛市よ
雛市に怖き顔つき並ぶ段
雛市の中の民家の中のひと
雛市や顔つきに気の強くあり
暮れかぬる浅草の灯や雛の市
雛市に何を求めん老女あり
遠縁に娘生まれし雛の市
まみえゆたかなるを求む雛の市
お義母さま雛市だけはご容赦を
孫思い雛市回る老夫婦
雛市の建つ門前の晴れ晴れと
たっぷりと一歩を進む雛の市
飾付けサービス付の雛売場
雛市にかくれんぼして声のする
雛市に我を見詰める雛見付け
運命の出逢いを求む雛の市
雛市から帰つた日から断捨離に
雛市の綺羅まばやきに魅かれ来て
桐箱の香に雛市のはじまれり
雛市のあまたの視線躱し過ぐ
早退をして雛市に寄りたき日
雛市に話題の顔の雛もあり
雛市で雛に見られてる気がする
雛市やお転婆に買ふ藤娘
異国語の響く一角雛の市
母方の声高らかに雛売場
雛市の乳母車の子眠りけり
雛市に鎧飾も売られをり
雛市の幟に混じる店じまい
雛市の綿ぼこりてふ艶やかさ
雛の市袂に挟む風細か
華やぎの底の寥しさ雛の市
雛市の赤光めくウインドウ
雛の市を三日も過ぎて市仕舞ふ
複雑な道を辿って雛市へ
こまごまと調度買い足す雛の市
雛市や客も疎らな寺の前
大店の屋号むずかし雛の市
初恋に似た顔探す雛売場
子が母となりし歳月雛の市
非売なる謂れの飾り雛売場
雛市や届かぬ棚に京美人
雛市に付き添ふ四人の息子たち
緋毛氈の色焼け激し雛の市
オルゴール鳴り調べ聞く雛の市
雛市の野掛のごとく始まりぬ
娘三人孫も女や雛市に
かわいさや心なごます雛の市
これもまたデパートでのみ雛の市
雛の市改札にある古き雛
二歳児も女の顔に雛の市
子からくる携帯電話雛の市
雛市の裸電球好々爺
屋号もて呼び合ふ習ひ雛の市
そのなかに思ひ出づるや雛市
面差しのどこか売り子似雛の市
艷やかな声の掛りし雛の市
雛市のうす紅色の店明り
雛市の人形町に待ち合はす
撫牛の鼻のかがよふ雛の市
雛市に妻子を送り独りかな
雛市や小さきものほどよく売れて
雛市の値札はみ出す墨の文字
雛市や値踏みに勝る好みかな
子も孫も皆男なり雛の市
チャタレイにもノラにもならず雛の市
窓越しに会釈を交わし雛祭
雛店の更けて居並ぶ雛の黙
雛市に男兄弟ばかりの身
雛市の話も弾むちらし寿し
雛市のかかりて下駄の指温し
明々と灯りて雨の雛の市
くれなゐのやがて眩暈の雛の市
地下鉄の地上に出れば雛の市
おひな様風の柳の屏風背に
雛市や父の意外な秘密知る
雛市もなく闇で買ひしと祖母云ひき
月の滴ぼんぼりに落ち雛市更く
雛市の薄らあかりや頬の紅
せがまれて奥に分け入る雛の市
妹の手をひき通る雛の市
まつ毛濃き内裏さまあり雛の市
早世の娘に出逢ふ雛の市
雛市や今では遠きことばかり
雛よりも比ぶる道具雛の市
三姉妹長居や雨の雛の市
夕暮れや雛市あとにバスを待つ
雛市の荷を解く父子や裏参道
冬疲れ柴折戸開けて雛の市
伊那谷の雛市どつと笑ひ声
茶柱の立ち妹と雛の市
頬そめし顔の並ぶや雛の市
立ち止まる買はぬつもりの雛の店
子宝に恵まれずをり雛の市
雛市の末座におはす老婆かな
雛市や近くに列車の走る音
雛市や孫の祝いに小買物
我が子にも着せた錦雛の市
雛市や目の合う顔の二つ三つ
雛市に整然と居る富士額
雛市を抜け温顔となりにけり
雛市や声なき声に煽られる
みづからも何か抱きたし雛の市
雛市を行く自転車やベルの音
雛の店お道具だけを欲しがりて
雛市や親兄弟と距離を置く
雛市や箱に作者の筆薄き
手短かに商談済まし雛の市
雛市や母の秘密も知りにけり
憧憬のひとつにありぬ雛の市
手に持ちて帰れるひひな抱く車内
雛市や古き家並にピアノ曲