「復興」のためには、政治家や官僚の「人間復興」が欠かせない
2012年10月17日4:42PM|カテゴリー:多角多面(発行人コラム)|北村 肇
<北村肇の「多角多面」(98)>
消費税の陰に隠れてしまった感があるが、2011年度から5年間で、住民税や所得税などで10兆円以上の増税が実施される。これらを元につくったのが19兆円の「復興予算」だ。東北地方の悲惨な状況を考えればやむをえないと、多くの市民は納得していたように思う。ところが、かなりの金額が官僚や大企業の利権と化していた。その実態が明らかになるにつれ、懲りない連中への怒りは高まる一方だ。
最も尊敬される官僚とはいかなる人物か。霞ヶ関の裏から入って聞き回れば、こんな回答が返ってくるだろう。「わが省に予算をもってくる。関連団体との関係を強化し、あるいは団体を新設し、天下り先を増やす」。要は、国益よりも省益にかなう仕事に専念した官僚の評価が高いのである。もちろん、真から国を思う官僚はたくさんいる。でも、「復興予算」のあほらしさを見せつけられると、やはり大半の官僚は人でなしだと言いたくなる。
いくつか例をあげてみよう。
▼ 文部科学省・日本原子力研究開発機構の運営*青森、茨城県での国際熱核融合実験炉(ITER)の研究事業(42億円)……復興と何の関係があるのか。どさくさ紛れの焼け太りだろう。
▼ 財務省・国税庁施設費*首都圏など12庁舎の耐震改修工事(12億円)……「納税者と職員の安全確保」が理由だそうだ。ふざけるな!
▼ 水産庁・調査捕鯨費(18億円)……補助金を受ける財団法人「日本鯨類研究所」は2010年まで水産庁OBがトップ。捕鯨船の基地は広島県で東北の利益にはつながらず。
こんなばかげたことがまかり通るのは、復興基本方針に盛り込まれた“仕掛け”のせいだ。「日本経済の再生なくして被災地の真の復興はない」。だから「被災地に一体不可分として緊急に実施すべき施策」を認めると書かれている。いくらでも拡大解釈できるように最初から仕組まれていたわけだ。
官僚と腹を割って話す機会に、尋ねてみたことがある。なぜ天下りがそんなに大事なのかと。「大学(主として東京大学)の同期は一流企業の経営陣になり相当な収入を得る。われわれ官僚はそれに比べたら低賃金だ。天下ることでようやく追いつく」。本音に聞こえた。官僚も人間だ。自分の暮らしやプライドにこだわるのもわかる。だが、せっかく持って生まれた頭脳をそんなことだけに使ってわびしくないのか、悲しくないのか。どうやらこの国に必要なのは、官僚や政治家の「人間復興」のようだ。(2012/10/19)