きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

これが「暫定立ち入り取材申請書だ」

 前回のこの欄でお約束したとおり、『毎日新聞』から回答が届きましたので、その全文を掲載します。

 また、2月13日号で紹介した「暫定立ち入り取材申請書」について、読者から「全文を知りたい」との要望がありましたので、ここに掲載します。表形式になっている原本を掲載するため、読みやすくなるよう若干の工夫をしてあります。ただし、文章は原本の通りです。

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【マスコミ各社への質問】
1)クウェート国アリアルサレム空軍基地内の取材において、1月20日に防衛庁側が提出を求めてきた防衛庁長官官房広報課長宛ての「誓約書」を提出しましたか。

2)その際、空軍基地内で撮影したビデオ映像や写真について基地を出る前に防衛庁側がチェックし、不適と判断されればデータの消去に応じるよう防衛庁側が求めてきましたが、そのことに同意しましたか。また、同意した場合、なぜ同意したのですか。

3)イラク現地における自衛隊の取材に係わるルールづくりについて、防衛庁と話し合うため日本新聞協会と日本民間放送連盟が2月10日、委員会を設置しました。イラク報道の今後のあり方を規定する、極めて重要な動きだと思いますが、なぜ報道しなかったのですか。

【マスコミ各社の回答】
●新聞社
《毎日新聞》
1)宣誓書を出しました。ただ、内容は「自衛隊以外の他国の軍隊の動向などについては報道しない」といったものでした。

2)同意していません。

3)毎日新聞社は「暫定立入取材員証」の際も、防衛庁に「取材制限を主旨としたものではないこと」などを確認したうえで、申請した経緯などを誌面で読者に説明しています。今回も協議がまとまった段階で読者に説明することが報道機関の責務と考えています。

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 下の斜線よりあとが、自衛隊の陸上幕僚監部が1月30日、報道各社に提出を求めた「暫定立ち入り取材申請書」です。このことに関する記事は2月13日号に掲載しています。

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                                年  月  日

イラク復興業務支援隊長
 1等陸佐 佐藤正久殿

             立入制限区域への暫定立ち入り取材申請書

 イラク域内に所在する自衛隊宿営地、他国軍基地等内の自衛隊が提供された区画その他自衛隊部隊が直営・展開する区域のうち部外者の立ち入りを制限する区域(以下、「立入制限区域」という。)への以下の記者等の立入取材を求めるに当たり、現在防衛庁と防衛記者会との間で進められているイラク現地における自衛隊の取材に係るルール作りのための協議がまとまるまでの間に予想される危険や混乱を防止するとの観点から、当面の措置として、下記の確認事項に同意し、遵守事項の遵守を誓約の上、立入取材員としての暫定的な登録及び「暫定立入取材員証」の発行を申請します。
 なお、立入取材者の詳細については、別紙のとおりです。

申請者 報道機関名:
    担当部署名:
    部署長等名:                職印

立入  下記の確認事項に同意し、遵守事項の遵守を誓約します。
記者等(代筆)
        年  月  日(署名)        印
(注)本申請書については、申請者が捺印した申請書と立入記者等が署名捺印した申請書とに分けて本庁及び現地部隊に別々に提出することも可能です。

                   記

1.立入制限区域への立入に関する確認事項
1) 立入制限区域内においては、取材者が現場に所在する部隊員と同様の危険に曝される可能性があることを理解するとともに、当該危険に際しての安全確保の責任は申請者及び立入取材者自身が負います。
2) 個々の立入制限区域への立ち入りは、立入取材員証を確認の上、その都度関係部隊が許可して実施することに同意します。
3) 任務遂行上又は安全確保上その他の理由により必要な場合には、部隊の判断により随時に立入制限区域への立ち入りが中止されることに同意します。
4) 本申請書に記載する遵守事項に違反があった場合は、立入制限区域外に退出します。また、重大な違反があった場合には立入取材員証が無効となることに同意します。
5) 移動、宿泊、食事、物品の借用等の便宜供与は、部隊等の本来の任務を阻害するおそれがあるため、原則として行われないことに同意します。
6) イラク入域に先立ち、あらかじめ次の予防接種を終えるよう努めます。A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン、破傷風ワクチン
7) 他国軍基地等内の自衛隊が提供された区画への立ち入りに当たっては、別途当該他国軍等の同意を要することを理解します。

2.全般統制に関する遵守事項
1) 部隊・隊員の任務遂行を阻害しないため、所定の取材対応時以外においては、隊員に対する取材(追尾・接触)を行いません。
2) 立入制限区域内においては、隊長及び担当官の統制に従います。
3) 立入制限区域内への立入に際しては、自衛官及び外国軍人との識別が容易な服装を着用します。
4) 立入制限区域内への立入に際して、及び立ち入り取材中は、立入取材員証を常に身体の見やすい場所に着用します。
5) 立入取材員証が失効した場合は、直ちにこれを返納します。
6) 部隊が必要と認めた場合には、部隊等が定める記者及び隊員の安全確保等に資する所定の教育訓練を受講します。
7 部隊が電波封止・灯火管制を行う場合など記者及び隊員の生命及び安全の確保上必要な)場合には、通信・撮影器材等の使用を控えます。

3.情報の取り扱いに関する遵守事項
1) 下表右欄に例示する情報その他記者及び隊員の生命及び安全の確保などに影響する可能性がある情報については、仮に入手した場合においても、別途部隊等において公表し、又は同意するまでの間、報道を自粛します。
2) 安全確保等への影響の有無について疑義のある情報については、報道に先立ってその取り扱いにつき現地部隊等と協議し、その結果に従います。

(1)部隊、装備品、補給品等の数
報道しても支障のない情報
・派遣部隊の総員数
・部隊の少数負傷者の概数
・宿営地外での復興支援活動に従事する隊員の概数
・装備品、補給品等の概数
安全確保等に影響し得る情報
・部隊の勢力の減耗状況
・部隊の負傷者の正確な数
・各担当部門に所属する隊員の数
 (概数及び正確な数)
・宿営地外で個別の復興支援活動に従事する隊員の正確な数
・装備品、補給品等の正確な数

(2)部隊活動地域の位置
報道しても支障のない情報
・宿営地の概略位置
・宿営地外における過去の部隊活動地域の概略位置
安全確保等に影響し得る情報
・宿営地外の将来部隊活動が予定・計画される地域の位置
・宿営地外の現に部隊活動が行われる地域の細部位置

(3)部隊の活動に関わる情報
報道しても支障のない情報
・部隊の将来の活動に関する一般的な政策及び全般的傾向
・部隊が現に実施している復興支援活動の状況
・部隊の過去の復興支援活動の状況
・部隊の過去の復興支援活動の実施回数、実施成果
安全確保等に影響し得る情報
・部隊の将来の活動の予定・計画等
・部隊が現に実施する機動・展開の状況

(4)部隊行動基準、部隊の防護手段、警戒態勢に関わる情報
報道しても支障のない情報
・部隊が過去に実施した部隊防護、警戒監視活動の概要
・部隊の情報収集活動に関する一般的な政策及び全般的傾向
安全確保等に影響し得る情報
・部隊行動基準、部隊行動基準の内容及び概要並びに内容を反映した教育訓練の内容
・部隊が現に実施している部隊防護、警戒監視活動の状況
・部隊が現に実施し、又は将来予定・計画している部隊防護、警戒監視活動と同様な過去 の活動の状況
・宿営地内の各天幕等の配置及び用途
・その他部隊の防護手段、警戒態勢に関わる情報

(5)部隊の情報収集手段、情報収集態勢に関わる情報
報道しても支障のない情報
・部隊の情報収集活動に関する一般的な政策及び全般的傾向
安全確保等に影響し得る情報
・部隊の情報収集手段、情報収集態勢(情報収集活動の状況を含む。)に関わる情報

(6)部隊の情報収集等により得られた警備関連情報
報道しても支障のない情報
・部隊長等の現地治安情勢に関する一般的な認識
・部隊以外から報道機関が独自に入手したことが明確な警備関連情報
安全確保等に影響し得る情報
・部隊の情報収集等により得られた警備関連情報

(7)米軍等の関係部隊に関する情報
報道しても支障のない情報
・米軍等の関係部隊に関する開示情報
・米軍等の関係部隊に関する不開示情報のうち米軍等が報道を許可した情報
安全確保等に影響し得る情報
・米軍等の関係部隊に関する不開示情報

(8)隊員・家族等の生命及び安全に関する情報
報道しても支障のない情報
・隊員・家族等に関する個人情報のうち本人を特定できない情報
・隊員・家族等に関する本人を特定できる個人情報のうち防衛庁が公表したもの及び本人 が報道に同意したもの
安全確保等に影響し得る情報
・隊員・家族等に関する本人を特定できる個人情報(肖像を含む。)(防衛庁が公表した もの及び本人が報道に同意したものを除く。)

(9)地元住民・部族等との信頼関係を損ねるおそれのある情報
報道しても支障のない情報
・地元の宗教・社会・文化の観点から特に反感を持たれるおそれのない隊員の日常の行動
安全確保等に影響し得る情報
・地元の宗教・社会・文化の観点から特に反感を持たれるおそれのある隊員の日常の行動
(10)その他、部隊等が定める内容に関する情報

4.その他
 本「暫定立入取材証」の申請は、本証が暫定的なものであり、今後、防衛庁と防衛記者会との間の協議を経て設けられる正式な「立入取材証」の発行が開始され次第、速やかにこれに切り替えられるとの前提で行うものです。