きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

ボブ・サップはミッキー・ロークと試合を

古い話になってしまったが、石井和義館長が脱税で逮捕されているのに(注1)、それでもなんとかK1グランプリが開催されたのには、いささかびっくり。これには最近、格闘技に復活して元気のいい猪木もがっくり……か?
いやー、私はK1が大好きでした。過去形です。今は関心があまりありません。関心がない理由は、石井館長の逮捕とは関係ありません。ちなみに正道会館は結構明るいイメージですけど、結構、シゴキが厳しいらしい、ということとも関係ないです。

やっぱり「ボブ・サップブーム」でしょう。あらゆる媒体に出まくりで、もう、サップにゲップですよ。やっぱり負けたし。ミルコ・クロコップに勝っていたら、格闘技の危機を感じて、K1にも注目していたのですけど、あまりにもみっともなく負けましたよね。それまでは、私も幻想みちゃっていたんですけど、ふと冷めてしまいました。ボブ・“ゲップ”が、破竹の勢いでボカスカ殴り倒していたときは、『空手バカ一代』で大山培達センセイのおっしゃていたことは本当だった、力は技なり!と、しみじみと思っていたのですが。
でも、やはり格闘技ってそんなもんじゃなかった。ミルコの一発でやられるのは、やはり技術がなかったからでしょうね。または、ミルコにびびっていたんでしょうかね。対戦相手のミルコ・クロコップは強い。身体のバランスいいし、ハングリーだし。あのクールな目がいい意味でコワイです。殺し屋っぽい。何をするかわからん、という怖さがありますよね。

私も学生時代にボクシングをかじっていたのですが、フライパンの上のポップコーンのように動きがよくて、拳の硬い背の低いやつとスパーリングしたときです。相手をなめていて、ガツンとやられました。歯もボキボキ折りました。
ミルコの硬そうな拳がサップの顔面に入っているのを見て、このスパーリングを思い出しました。経験のある人は言わずもがなですが、グローブはしていても、殴られたときには拳の形がわかるもんです。私もガツンとやられるときは「あ、グーになっている」って何回も感じたものです。いやー、ぞっとします。転がるボブ・サップみてトラウマが出そうになりました。

しかし何? ボブって眼底骨折ですか? ちょっと骨がおれたくらいで、転んで泣いちゃうボブってタレントになっちゃったんですよねえ。CM出演もあるのだろうし、顔が大事なんだろうな。昨年末の高山善広との試合はよかったけどなあ。というか高山が良かったですね。その後、業界で男を上げましたからね。サップは今後はマイク・タイソンと同じで、1回あっけなく負けると次から負けが込むんでしょうかね。対戦相手の恐怖感や腐敗神話幻想が崩れるというか。

その上、後日やった日本テレビ系のK1ジャパン軍団対サップ軍団もとんだ茶番でしたね。
サップの負け試合に対して翌日のスポーツ新聞はおおむね批判的でしたね。テレビやCMに出過ぎだから負けた。つまり不摂生だと。負けるとボロクソに言われてもしようがないですね。しかし、「強かったのに女の家にいりびたってスタミナ消耗してチャンプになれなず芸人になったある意味天才肌のトミーズ雅(元日本Jミドル級1位)の不摂生」(長い!)よりはマシだから、安心してね、ボブ。
だけど、ボブ、今度は、ハリウッド俳優で伝説の試合を日本で残したミッキー・ロークとでも試合やってくれないか(注2)。どちらが役者が上か見たいんだよ。
K1といえば、やはり記念すべきは1994年の第1回目大会。当時、フジテレビはお台場ではなくて河田町にあり、フジテレビのゴールデンウイークの興業は「夢工場」という超ダサいタイトルがついていたナリ。私も『格闘技通信』を片手に(ウソ)行ってしまいました、代々木体育館。私の何個か前の席には、夢枕漠さんもいましたね。当時は、格闘技小説をたくさん書いていらした。格闘技の裾野を広げるのに大きな役割を果たしていましたね。だけど確か、小説のモデルとなんかトラブって格闘技もの書かなくなっちゃたはずですが。
当時の決勝戦ではオランダのランバージャック(木こり)ピーター・アーツが「怪獣王子」佐竹雅昭をばっさりと切り倒しました。私が応援していたのは、アンディ・フグ(故人)。ついついリングへ向かう花道のアンディの肩を思わず叩いちゃいました。硬くて大きかったですよ、あの肩は。鍛え上げた身体にきりっとした姿勢は「サムラ~イ」といわれただけあり、格好よかった。それが、とんだ跳ね馬・フロックのドレッドヘアーに星条旗トランクス(まさにザ・アメリカ)のパトリック・スミスにまさかの初戦TKO負け。スミスは大金星だった。しかし、あれからアンディ・フグ伝説が始まりました。少々、しつこい伝説作りだったような気もしますけど。
ちなみにパトリック・スミスは黒人で顔がすごいこわかった。アンディを倒しときには完全にヒールでした。しかし、その後の追跡取材記事ではすっかりお茶目なナイスガイになりましたね(『格闘技通信』の請け売り情報)。それはピーター・アーツやアーネスト・ホーストも同じ。ボブ・サップもほんとうにヤバイヤツなのかと思わせて、実はそんなにワルじゃないってのが多いですね。やはりストイックに身体鍛えないと、リングで怪我しますからね。
ちなみに石井館長が呼ぼうとした(苦笑)マイク・タイソンは本当に暴れん坊でしたね。今年2月に試合やりましたけど、顔面に入れ墨だもんね。アイシャドウやプチ整形じゃないよ! どこまで行くのだろうか、あの人は(注3)。失敗したら全部黒くしちゃうしかないですよね。

(注1) 石井和義館長
正道会館館長。KI社長。元世界王者マイク・タイソンを呼んだが失敗して、10億円の違約金が出たなどと偽って脱税していた。それがばれてしまい、今年2月3日に法人税法遺憾の脱税容疑で逮捕。世の中で「武蔵」が流行っているのに、正道会館の武蔵選手の注目がイマイチなのはいかに? もちろん「小次郎」選手も正道には用意されています。バカボンド・武蔵ファンは要チェック。

(注2) しょぼいけど得した気分のミッキー・ロークの伝説の一戦
映画俳優。ボクシング好きで1992年6月23日に日本でボクシングの試合をした(なんとその前座が、勇利・アルバチャコフ=当時、ユーリ・海老原。角海老宝石ジム、のWBC世界フライ級のタイトルマッチだった。おそるべき興業でした。トミーズ雅のエキシビションマッチなど、ぶっとびます)。
ミッキーの相手はネイティブアメリカンかメキシカンらしきダリル・ミラー。ミッキーはスケスケの半ケツトランクスを着用し、日本中の女性を悩殺。ミッキーは試合でもミッキーが疑惑の「猫パンチ」で相手をぺしっと撫でて一発KOの秒殺。テレビを観ていた人間とキャッツは「なめんなよ!」と殺気立ちました。あの伝説の試合は見てない人はぜひ見てほしいですね。同じしょぼい試合でもボブ・サップに勝っていますよ。
ボクシング好きの同じくハリウッドスターと言えば、映画『追撃者』でミッキーと共演した『ロッキー』のシルベスタ・スタローンが第一人者でしょう。このスタローンも漫画『プロレス・スーパースター列伝』では、『ロッキー3』撮影中にハルク・ホーガンに軽~く失神させられてしまった恥ずかしいエピソードが暴露されていました。アフリカ最高峰のキリマンジャロ登山で泣いた漢(「おとこ」と読む)・反町隆史はこの路線を狙っていますね。
ところで、ミッキー・ロークって昔バイカーズグループ「ヘルス・エンジェルス」だったはずですけど、正確なところを知っている人いますか? バイカーであるミッキーの銀ピカのチョッパー、ハーリー・デイビッドソンが、ザッツ・ハリウッドな映画『ハーレ・ダビッドソン&マルボロマン』に登場していかしていた! マルボロマン役のドン・ジョンソンは、ぼろっぼろっのカワサキZII。滲み出るアメリカ人の日本人コンプレックス。ハリウッドはことあるごとに、典型的かつイヤミな表現をしますよね。

(注3) マイク・タイソンの入れ墨
出所後には右腕に故・毛沢東主席と?の入れ墨は、まあいい。驚くのは今年2月に見せた顔面の入れ墨。アフリカの戦士を意識しているらしいけど、十分戦士です。目が合った瞬間、狩られそうです。街で会いたくないですね、あんな人。『ビッグコミック・スピリッツ』で連載している漫画『オメガドライブ』を思い出しました。マイク・タイソンの話で面白かったのは二宮清純さんの確か『1ミリの大河―新スポーツ論』(マガジンハウス)載っていたエッセイ。タイソンの師匠カス・ダマトの下でなぜタイソンがなぜ強かったのかが描かれている。ヘビー級なのにタイソンのコンビネーションは見えなかったものなあ。アマチュアでもパンチに自身のあるファイターは、黒シューズに靴下はかないタイソンスタイルのやついましたね。

次回は「書かせてください! 思い出の総合格闘技草創期」編に続く……かも。
(平井康嗣)