きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「絨緞」__金曜俳句への投句一覧
(1月27日号掲載=2017年1月5日締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』2017年1月27日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【絨毯】
絨毯の柱の分が欠けてゐる
絨毯に墨痕一滴考の失
絨毯に人の窪みの二つあり
絨毯を織る人の歌呪文かな
絨毯に大の字になり覚悟決め
絨毯をのびのびとゆくピンヒール
絨毯の猫の領分決まりけり
段通ぞ父母の婚礼写真には
絨毯や父の記憶の一滴
一枚の絨毯一枚の果し状
惜しみ無く施されたる大絨毯
絨毯の黒の足跡猫も居て
絨毯や跡の深けり猫の足
いくらでもチャイを薦める絨毯屋
絨毯の島にて自給自足かな
絨毯の模様のごとく眠る猫
絨毯に寄せ来た波の跡にじむ
絨毯の毛足にヒールとられけり
絨毯を干すベランダや日の光り
目を入れぬ片目達磨や赤絨毯
絨毯に本音を掻いてすぐ消しぬ
一晩で一升絨毯に一合
絨毯に鏡台の足あと残す
絨毯に靴のヒールがおしゃれなり
絨毯を野原のごとく子ら遊ぶ
日を溜めて絨毯の部屋集まりぬ
絨毯に合わす歩幅や父娘
落日や波の絨毯赤く染む
真つ青のペルシャ絨毯空飛ばむ
段通の重み増したる鳳凰文
絨毯に陽射明るき孫の声
犬用の絨毯に犬抱いてゐる
絨毯を干すベランダに眠る猫
絨毯の猫の尻尾ががJの文字
じゅうたんで飛んでゐたひと齢とらず
絨毯に寝そべる腹を踏む肉球
絨毯に寝転んで見る機影かな
絨毯にファッション製を引き立てて
絨毯に花嫁のごと少女座す
絨毯の糸ほつれてる昼下がり
絨毯は空を飛ぶとも泳ぐとも
亡き父の重みの跡が絨毯に
絨毯やいまだ青々アラベスク
絨毯や空へ飛ぶごと逝きし猫
絨毯を買い替えた日の目覚めかな
絨毯の花柄似合ひ独り住む
値踏みしてトルコ絨毯旅に買ふ
バザールのひときは灯る絨毯屋
絨毯を黄に新調し過去は過去
絨毯の吐息がもれる夜半かな
立ち上がるとき絨毯に躓きぬ
絨毯にエッフェル塔の小ささよ
絨毯の宮殿に猫おはすなり
絨毯の店どことなくむず痒き
絨毯にあふれつぱなしのやさしさ
絨毯の新しくあるホテルかな
深海のごと絨毯の面接場
タラップへ赤き絨毯解かれけり
絨毯を爆撃すとは誰そ言ひぬ
絨毯の父の定位置尻の跡
絨毯や猫と思案の赤い爪
絨毯を敷いてはじめの冬支度
絨緞をヤク背負いゆく青海湖
スリッパを脱いで絨毯確める
絨毯のピカソの女神抱きしめる
絨毯の上で二匹の猫になり
絨毯の上に非常と日常と
絨毯や流布とふ仕業隅々に
絨毯の柄をたどりて寝ころびて
絨毯にしっかと残る祖母の生
段通の旧りて美し京町家
絨毯を敷けばコーラン響きけり
絨毯を織る少女の手柔らかき
絨毯の縁(へり)に躓く寒さかな
田舎寺庫裡に敷かるる赤絨毯
絨毯や木の階段の留金具
絨毯の端トランクの痕深し
絨毯や染みるトルコの空の紺
寝ころべる絨毯も無し戦火の子
絨毯の深みに躰解けゆく
絨毯にピアノの後が残りをり
絨毯の象形文字をなぞりけり
絨毯の海に沈みて眠りけり
絨緞やベビー箪笥の跡残り
絨毯に染みますますや独居母
絨毯にヒマラヤの香のあるらしき
絨緞織る杼を送る手の乾きたる
絨毯は色あせひとりは寥しかり
絨毯に子等のこぼせし染み残る
宙に飛ぶペルシャ絨毯夢の夢
絨緞やカシュガル遠き砂嵐
赤絨毯踏みしが今はただの人
絨毯に手足延ばして目を閉じて
絨毯の花を汚せし人の去る
絨毯掃く今もコーラン耳奥に
ひとりづつ来て絨毯を埋め尽くす
絨毯に黒猫二匹並び居り
絨毯にそれぞれの匂ひありにけり
ひろびろとある絨毯に子を放つ
絨毯や毛玉と欠伸ばかり増え
唐草の絨毯いまに飛びさうな
絨緞のホロスコープに倒れ臥す
絨毯に残るピアノのありし場所
絨毯で甘くなるまで泣いちまえ
厠まで魔法の絨毯曳く介護
裸足なら飛ぶ絨毯のように跳び
絨毯の下の沙漠を掃きにけり
絨毯や仏蘭西庭園咲くごとく
絨毯を選びし頃の君何処
今年また絨毯市のモハンさん
エナメルの靴の光りやカーペット
段通や生老病死夢のごと
絨毯や幸福という遠き過去
コーカサス絨毯敷いて礼拝堂
絨毯の色はさまざま人生も
隠せしか絨毯強いて恥じ汚れ
お土産は絨毯一巻ひとり旅
絨毯にひとひら落ちる供花の白
亀飼うて独りに広き絨毯の青
絨毯に染みる燻香仏間奥
絨毯の足の手触りフィット感
幅少し足りぬ絨毯ある実家
墨痕の消えぬ絨毯父母老いぬ
絨毯に離婚届のインク染む
絨毯にアロハを畳む旅支度
一人居や電気絨毯広過ぎて
絨毯のへこむ図説大歳時記
俗塵の積るばかりの赤絨毯
絨毯に足まるまるとおむつ替へ
絨毯を歩き慣れてるピンヒール
絨毯の知り尽くしたる夫婦不和
絨毯に妻の足跡まだ残る
絨毯の上の夫の上に孫
絨毯や猫の真似して伸びてみる
摺り足に絨緞動く憂ひかな
絨毯や空飛ぶ夢も過去のこと
理系女が絨毯売りになつてをり
絨毯の猫の尻尾は鍵の様
絨毯の毛足薄らぎ歳重ね
絨毯の裏に一枚栞居て
子ら息を継ぐ絨毯の青さかな
絨毯やクレオパトラの艶挿話
絨毯の部屋に連なるあたたかさ
絨毯へ一時帰宅の足の裏
カーテンも絨毯も無地子の新居
絨緞や波斯の息吹き封じ込め
絨毯を宇宙に見立て大の字に
絨毯に座しロッカーの寡黙なる
絨毯に伸ばす手足の思ひ切り
絨毯に埃見えなき老舗宿
豹柄の絨毯を撫で宥めけり
絨毯の道から夜景見る窓辺
絨毯の端の捲れて夜の更ける
澄んだ瞳の美少女織るや紅絨毯
絨毯の陽の光吸い込んでをり
絨毯を日ざしすべりて日が暮れて
絨毯に格天井の冬館
絨毯の幾何学模様ゆびで追う
我が暮らし絨毯汚れ子の育ち
第五指と第五指絡むカーペット
絨毯にムスリムのひと平伏して
絨毯は青ヨコハマの老舗BAR
玉砂利から赤の絨毯西芳寺
人よりも段通長生き京町家
絨毯に囚われてゐる星ピアス
絨毯へ乗る十センチピンヒール
絨毯や三人の魔女哄笑す
絨毯の大きな染みを隠す椅子
百年の老舗に絨毯百年あり
絨毯を転げ出でたる入れ歯かな
絨毯の柄あたたかき雲の上
絨毯で巡る幕末二条城
子の視線絨毯の母の食べこぼし
絨毯に夢沈ませて若夫婦
絨毯にをみなのさがを織り込みし
絨毯の焦げに亡き父宿るかな
我が疲れ絨毯かすれ映し出す
絨毯や二足歩行の嬰が起つ
絨毯の役員室や辞表持ち