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第20回「週刊金曜日ルポルタージュ大賞」審査員特別賞入選作

マハラバの息吹―もうひとつの1960年代―

 藤井孝良

 コンクリートの岸辺に打ち上げられた魚。
 舞台の上の「彼ら」の肉体は演技としての動きを超えた生々しさがあった。どんな名役者であったとしても「彼ら」を超えることはおろか、その演技を真似することすらもおそらくできないだろう。なぜならば、「彼ら」は今こうして「」を付される存在だからだ。
 『平成18年身体障害児・者実態調査結果』等によれば、日本における障害者の延べ人数は、724万人。これは現在の埼玉県の人口を上回る。しかし舞台上の「彼ら」はこの724万人の中で、いや埼玉県民の誰よりも強烈な存在を私たちに印象づける。
 連休最後の日曜日、私はJR土浦駅前にある茨城県南生涯学習センターの大ホールにいた。脳性マヒ、ポリオなどの重度障害者9名によって構成される演劇集団、「劇団態変」の公演がある。「マハラバ伝説」と題されたその劇の存在を知ったのは2009年4月24日の『茨城新聞』朝刊の「伝説の”障害者解放区”描く」という見出しの小さな囲み記事だった。

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779号の注目記事

■新川明インタビュー
 「日本国」から自立する思想
 聞き手・佐高 信

大江健三郎が「畏怖の思いをおこさせる」(『沖縄ノート』、一九七〇年)という沖縄の思想家、新川明。
「日本」を拒絶しながら「沖縄の在り方」を今も模索する新川に、佐高信・本誌編集委員が訊いた。

■米国環境医学会の提言から
 多くの実験が明らかにするGM食品の危険性
 天笠 啓祐

6月26日号「暮らしのニュース」で、
米国環境医学会(AAEM)が遺伝子組み換え(GM)食品の
モラトリアムを求めた件を紹介したところ、
「詳細が知りたい」との声が寄せられました。
というわけで、ご紹介いたしましょう。

■佐藤優の飛耳長目46
 地検特捜部の政治化が検察全体に危機を招く恐れ

■青木 茂 建築家
 「ハコモノ」行政の殻を破るリファイン建築
 山岡 淳一郎

スクラップ&ビルドをくり返し、建築を景気浮揚の具にしてきた日本の「ハコモノ」行政。そんな国是に強烈な「対案」を突きつける建築家がいる。建築を「社会的資産」として捉え、リファイン建築を実践する青木茂。既得権の壁を破り、持続可能、再生可能な社会に立ち返る道筋を照らしている。

■映画『ザ・コーヴ』が問いかけるもの
 ルイ・シホヨス監督に聞く
 つなぶち ようじ

10月17日~25日に開催された東京国際映画祭で、1編のドキュメンタリー映画が話題となった。和歌山県太地町のイルカ漁を取り上げた『ザ・コーヴ』だ。:イルカ漁に対する抗議の映画”という視点でばかりで取り上げられるが、監督が訴えたかったことはいったい何だったのか。監督自身に聞いた。

■産廃処分場計画に揺れる夕張
 模索が続く風評被害を出さないための論議
 平田 剛士

北海道・夕張市で、市内初の産廃処分場計画に賛否両論が渦巻いている。約二〇キロ離れた近隣の農民たちが反対の声を上げると、それまで計画を容認していた市長が方針転換。一方地元には、自分たちの農業系ゴミは地元で処分したいと語る農民もいるのだが。

■きんようぶんか
 廣瀬純の生の最小回路(11)

ワン プラス ワン(映像関係)
ゴダール/ダネー/ゴラン
『ゴダールの全映画』
『不屈の精神』

ジャン=リュック・ゴダールがアンヌ=マリ・ミエヴィルと共同監督した『こことよそ(ヒア&ゼア)』(一九七六年)には主として二つの賭け金があった。ひとつは“映像どうしを関係づけること”であり、もうひとつは“映像を返すこと”である。

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778号の注目記事

■生存のもやい直し 第3回 ノラ
 女性たちでつながっていきたい!
 西村 仁美

女性ホームレスたちが女性たちのつながりを求め、
布製の生理ナプキン「ノラ」を製作、販売している。毎週木曜日に
公園で開かれるおしゃべり会には、布ナプキンを作る人たちも集う。
どんな人たちが集い、また、ナプキンを作っているのだろうか。

■三島由紀夫と高橋和巳
 ――すべて二人に学んだ
 鈴木邦男

■政府に検証委設置求める
 未来のためにイラク戦争総括を
 高遠菜穂子

■子どもたちが生き物と戯れた
 「トトロの田んぼ」が消えた
 和泉 まどか

東京・北多摩地域に唯一残る営農田に異変が。
歴史と文化と生態系の宝庫である田んぼの存続のために立ち向かったのは、
この地で保育所を営む一人の人物だった。だが、東村山市行政は――。

■生きている戦前の治安立法「暴処法」の恐怖
 五人が起訴された法政大学を支配する異常事態
 本誌取材班

治安維持法と並び戦前猛威をふるった暴処法が現在も生きており、法政大学の学生に適用された。
その内容を知れば知るほど、廃案に追い込まれた共謀罪以上の恐ろしさが伝わってくる。

■永田町の歩き方
 関義友

国会議員と対話し、
私たちの要望を伝えるためには、
永田町をどう歩けばいいか?
ちょっとしたコツがわかれば、
より効果的なアプローチが可能になる。
永田町初心者のために紹介する。

■このままじゃ先生が死んでしまう
 わが町の小児科医を守った住民パワー
 樫田 秀樹

医療崩壊と言われて久しいが、医師と住民とが力を合わせて
地域医療を支えている町が日本にいくつかある。
兵庫県立柏原病院では医師の激務の背景にあるコンビニ受診を
控えるために冊子を作ったところ、患者数が激減した。