週刊金曜日 編集後記

1333号

▼どこに行っても人だらけ、電車も普通に混んでいて、緊急事態宣言が出ているとは信じられない東京の光景でございます(じゃあ、お前はなんで出歩いているんだよ、というつっこみはおいといて)。
 デパートに行くと、一応、入り口と出口は分かれていますが、中に入ると人々は普通に入り乱れて歩いており、入り口と出口に分ける意味ってあるのかなあと思います。スーパーやその他各種のお店だって、レジのところには足跡マークが貼ってあって「前の人と間を空けてね」となっていますが、店内は自由に行き来できるので、入り口と出口を分けるとか、レジで間隔を空けるとかって、半ば儀式化しているような気がします。
 店内も一方通行にしなくちゃ意味ないんじゃないの? と考えて思い出すのは「フライングタイガー」ですが、しかし、これはこれで買い物しにくい(最近行っていないのでわからないのですが、今も一方通行ですか?)。そして町場のこんな雰囲気と、「オリンピック開催だ」と叫ぶ方々。コロナの実感がないです。日本に来たい選手っているんですかねえ?(渡辺妙子)

▼沖縄・辺野古の西側にあたる本部の塩川では5月26日からベルトコンベヤー2基が入り、辺野古へ行く船にダンプカーが直接土砂を落とし始めた(13頁写真)。今までは、港で台船に積んだ土砂を沖で船に積み替えていたので、辺野古の埋め立てが加速する恐れがある。緊急事態宣言下、地元、本部町の原田みき子さんはこう話す。
「コロナ禍で自主的な抗議活動しかできないため、塩川には数人しかいません。そこで、ダンプカーに頭を下げ、違法工事に協力しないようにお願いをしています。住民へは1日160台と説明していたダンプカーが実際は800台も行き来していたり、使用禁止されている赤土土砂を運んだり、違法なことがまかり通っています」
 もう一つ、埋め立てを加速させる恐れがあるのが、ジュゴンが絶滅したという論文を英科学誌に投稿した防衛省有識者会議委員のニュース。辺野古の環境対策を助言する立場? ジュゴンを含め、今回写真をお願いした山城博明さんの「沖縄の基地を巡る写真展」が岐阜県の大野町総合町民センターで23日まで開催中。(吉田亮子)

▼慌ただしい会議の朝、以前勤務していた「日本実業出版社」の同僚から、かつての上司が亡くなったとのメールが届き言葉を失った。ながらくお目にかかる機会に恵まれなかったが、「出版営業」というニッチな仕事において、唯一無二の師匠であった。
 三十数年前、雑誌の飛び込み営業をしていた私を書籍出版の部署に推挙してくれたのが、八谷智範さんだった。この異動がなかったら、そのまま継続して出版業に携わることもなかっただろうし、いまここにいることもないだろう。そのことだけでも感謝している。
 生前、八谷さんは「日本実業出版社」を退社後、1989年に出版社「すばる舎」を創業した。この会社は徐々に売り上げを伸ばしながら、最近ではビジネス書のベストセラーも刊行している。いまや店頭での品揃えに欠かせない出版社のひとつだ。同社の公式サイトによると、後日「お別れの会」を執り行なうとしているが、当面実施は難しいだろう。コロナ禍でのお別れは、気持ちの整理に戸惑うばかりだ。やはり直接感謝の言葉を伝えたかった。(町田明穂)

▼進行性の卵巣がんで、転移もしている。しかし、南アジア出身の40代女性は、現在仮放免(入管の収容を一時的に解かれた状態)。経済状況はというと、「仮放免者ですから収入はありません。食糧支援を私たちが行なっていて、それ以外は、近所の人が庭掃除をしてくれたお礼だと、時折小銭をもってきてくれるだけ」(NPO北関東医療相談会などによる会見より)。
 事実上廃案となった「入管法改正案」の国会審議で、入管収容施設内での死亡事件にスポットが当てられたが、施設を出た後も問題は山積する。特に仮放免者は、国民健康保険に入れず、就労も認められず、人権が著しく抑圧されている。コロナ禍で仮放免が増え、路頭に迷ったり、医療費が高額となり苦しむ人がいる。同NPOは、外国人への無料健康診断会や支援活動などをしてきた。冒頭の女性は、手術と抗がん剤治療で500万円以上必要という。支援は以下へ。ゆうちょ銀行「アミーゴ・北関東医療相談会」00150-9-374623。通信欄「仮放免者への寄付」。(渡部睦美)