週刊金曜日 編集後記

1458号

▼「ぼくたちは『良い行いをしなさい』と教えられる。だが(略)大人たちは良い行いをしているのだろうか?」「たとえば(略)選挙で票が欲しくて大金を配る人。(略)多くの人が貧困で苦しんでいるにも関わらず救わない政府官僚。(略)大阪では、IRカジノの賛否を問う署名が20万筆集められたにも関わらず退けられた。(略)悪い見本があり過ぎる」

 これは13歳の川中だいじさんが創刊した『日本中学生新聞』の記事の一部。その通りです、としか言えなくて恥ずかしくなる。

 川中さんは社会のあり方に疑問を抱き、責任者たる政治家に理由を聞きたいという思いから記者になった。「聞きたいことを聞いて、それを世の中に伝えるのは、まさに記者の仕事」という畠山理仁さんとの対談を聞きながら、取材を重ねて情報をつかみ報じる記者たちが民主主義を支えるのだと改めて思った。川中さんは大人になっても、権力側と事前にうち合わせして都合が悪い質問をしないような記者にはなるまい。(宮本有紀)

▼昨年5月19日号で写真企画「土地の記憶」を掲載した齊藤小弥太さんが第18回「名取洋之助写真賞奨励賞」を受賞したことは、昨年11月10日号の奥付で報告した。写真賞の中条望さん、奨励賞同時受賞の小山幸佑さんそれぞれの「土地と人」に根ざした3作品をぜひ見てほしい。東京での受賞作品展は終了したが、3月1日(金)~3月7日(木)富士フイルムフォトサロン大阪で、受賞作品展が開催される。10時~19時(最終日は14時)会期中無休。無料。

 写真展をもうひとつ。熊本市現代美術館ギャラリー3で「NOT PERMANENT BUT PERMANENT東儀一郎が見た昭和の坂本 ―永続することはない、しかし永久的な―」が2月25日まで開催中。10時~20時。火曜休。無料。

 昨年末、帰省したおり、熊本で写真展を見た。「2020年7月九州南部豪雨」で水損したネガフィルムの、レスキュー作業にあたった写真家・豊田有希さんを中心とした「REBORNプロジェクト」が、発掘し、修復した、昭和30年代の人や風景を撮影した写真が丁寧に展示されていた。本誌2月9日号で掲載の予定。(本田政昭)

▼「隣のクロイさんがコイケヤで買ってきてくれただよ」

 帰省した実家のテーブルに置かれた、当時生後間もなかった姪のためと思しき涎掛けを示しながら母が言った。たまにしか帰省してこない不肖の長男(私)は事情もわからず「ふーん」と頷くのみ。そういう店が近くにあんのかな、そういや昔のテレビCMに「湖池屋のジャガッツはこのギザギザがおいしい」ってのがあったよなあ......と呑気に思いをめぐらした私は、やがて衝撃の事実に気づいてしまう。彼女が言う、その店とは実はコイケヤでも湖池屋でもなくIKEAのことではないのか。

「ああ、そうかもしれないねえ」

 私の恐る恐るの指摘にも飄々と答えた母は――それから十数年後、認知症が進んだ今では実家近くの老人ホームにいる。とうに正月も過ぎた頃、相変わらずのこのこ訪ねてきた私と、近所の川土手を並んで散歩しながら「みんな元気であればいいんだよ」と、やっぱり相変わらず飄々として言う。誤字訂正文案に思いをめぐらせながら私は一路東京に戻る。(岩本太郎)

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 マンスリーか単発かを問わず、クレジット決済の方全員と郵便振替でメールアドレスをご登録いただいた方に、メールマガジン「サポーターズ通信」を月1回お送りしています。新年第1号のテーマは「能登半島地震の誌面はどう作られたか」でした。1月1日16時10分の発生直後から、編集部員が相互にアイデアを出し、ネットワークを駆使して原稿と写真を整える過程。そろった素材を編集者が誌面に集約していく流れを、文聖姫みずからリポートしました。

 本誌の発売日と同じ1月12日に配信したこともあり、「読みごたえがあった」と好評をいただきました。郵便振替のサポーターさんで配信を希望される方は、表題に「サポーターズ通信希望」と書いて、supporters@kinyobi.co.jp までお名前とメールアドレスをお送りください。郵送はしていませんので、ご容赦ください。(円谷英夫)