週刊金曜日 編集後記

1459号

▼女性支援団体のコラボ側が、暇空茜こと水原清晃氏を相手取って損害賠償などを求めた訴訟を傍聴した。代表の仁藤夢乃氏は法廷で、コラボの活動を「生活保護ビジネス」だとする被告・水原氏の主張に一つひとつ反論していった。被告に「反論したい」と思っていた人は傍聴席にもいた。

 コラボのシェルターを利用したことのある女性だ。「デマがツイッター(現X)に上がったり、コラボへの悪口がユーチューブで流れたりしたので本当は全部に返信したかったし、コメントにも(反論を)書きたかった」。仁藤氏はこの女性を守るために、反論の投稿を止めていたという。「コラボに助けられた」などと投稿した別の少女がかつて、水原氏のデマを信じた人らに個人情報をさらされるなどの攻撃を受けたからだ。

 SNS上では今も仁藤氏らへの誹謗中傷が絶えない。その影響で支援者の住所が特定され、電話などでの嫌がらせを受けている。やむなく支援を打ち切った人もいるという。被害はあまりにも大きい。社会全体で活動を支える必要があると感じる。(平畑玄洋)

▼今年は小麦が収穫できず、「砂川地粉うどん」が作れなかったけれど、という手紙が添えられ、段ボール箱一杯の畑の恵みが編集部に届いたのは昨年秋のこと。駐留米軍の立川基地拡張予定地の一部であった故・宮岡政雄さんの土地を受け継いだ、娘の福島京子さんが育てた野菜だ。「土地に杭は打たれても、心に杭は打たれない」──宮岡さんも加わったかつての砂川闘争の精神を学ぶ集会に参加して以来、福島さんとはやり取りさせていただいている。幼少期、福島さんには銃をもったMPが目の前を通るのは見慣れた光景だったときく。今は「砂川平和ひろば」を運営したり子ども食堂を開いたりして、足元から平和を支える。

 立川基地は結局拡張はなされず横田基地に統合され、1977年、日本政府に全面返還された。しかし、跡地には陸上自衛隊がやってきた。そして、その姿を国営昭和記念公園がソフトに覆い隠す。

 砂川事件国賠訴訟について、今週号でジャーナリストの吉田敏浩さんが報告してくれている。(小林和子)

▼知人の俳優が所有していた「〇〇荘」の2階が空いたと知り、1月下旬に急遽引っ越しました。最寄りの駅前でクリニックを開業している高校時代の同期に「いろいろ教えて」と連絡したら、「新型コロナの間に、お店も随分と新陳代謝があったよ」とのこと。

 引っ越し後の荷物整理もできないまま、和光大学で開かれた小林茂さんの特任教授退任記念特別上映会にお邪魔しました。小林さんは私の大学時代からの知人で、映画『わたしの季節』『チョコラ!』『風の波紋』の3本を続けて観ました。学生から「どうして撮影するのか?」と問われた小林さんは、「わからないからカメラを回す。回すことで変容していく自分の姿を見いだしたい」と真摯に答えているのが印象的でした。

 さて、段ボール箱から本を出しているとき、足元からズズズンという震動がきました。「これは大きい」と東日本大震災の揺れを思い起こしましたが、荷物類は無事でした。3月の「言葉の広場」のテーマは「地震」です。ご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)

▼能登半島地震の発生からひと月が経ちました。日を追うごとに明らかになる被害の大きさに声を失い言葉が見つかりません。また郵便事情が悪くなっていると思われる定期購読者のみなさまに、本誌送付に関するお伺いの手紙を送付しました。大変な状況のなか対応いただき、ありがとうございました。一日でも早く日常を取り戻せるようお祈り申し上げます。

 今号は昨年4月7日号以来の「香害」特集。前回はSNSで話題となり、ネット書店のAmazonで一時完売。「化学物質過敏症」に苦しむ方々にとって、切迫した問題であることを改めて認識しました。今回は品切れを発生させないよう在庫状況に注意してまいります。

 さて私事ではございますが、このたび還暦を迎え役職定年と相成りました。15年もの長きにわたり務めた業務部長をあとにしますが、実は後任が決まっておりません。採用努力はしているのですが、ご縁に恵まれないまま、その日を迎えてしまいました。当面、業務部の責任者は担当役員でもある編集長の文が務めます。(町田明穂)