週刊金曜日 編集後記

1287号

▼本誌きんようぶんか欄「TVドキュメンタリー」コーナーが今号で2年目に突入する。
 執筆者のワタナベ=アキラ氏は毎週欠かさずに原稿を執筆。と、さらっと書いたが、楽な作業ではないはずだ。放送予定の番組を調べて各局の担当者にコンタクトし、番組企画書や広報資料なども入手した上で進行していく。地道な努力の蓄積があればこそで、編集担当者として頭が下がる。
 そして私も同コーナーを担当して以降、ドキュメンタリー番組にヨリ関心が向くようになった。
 今年2月9日の「NNNドキュメント」は、国立天文台・野辺山宇宙電波観測所(長野県南牧村)が財政難で閉鎖の危機にある問題を「カネのない宇宙人」と題して放送。番組を見たが、テレビ信州が1年かけて取材した作品で、地道に取材して問題を掘り起こす地方局の底力を実感した。
 さて次号(7月10日号)からは同じくきんようぶんか欄で、新たに「TV批評」がスタート。すでに放送された中から注目の番組を取り上げるもので、水島宏明氏(上智大教授・ジャーナリスト)が執筆。1年ぶりに復活する「本箱」コーナーとあわせて月1回(原則第3週)の掲載だ。(斉藤円華)

▼もう「面識がない」は通用しない。『しんぶん赤旗』(6月24日付)によると、参院選をめぐる公職選挙法違反容疑で逮捕された前法相の河井克行容疑者と安倍晋三首相が昨年、首相官邸で複数回面会し、その前後に自民党本部から河井側に巨額の資金提供が繰り返された事実が浮上したという。
 そして『中国新聞』(6月25日付)は、河井案里容疑者の後援会長を務めた町議の証言として、30万円の現金を「安倍さんから」と河井克行容疑者に言われて、受け取ったことを報じた。
 このふたつの事案から安倍首相には、「買収目的交付罪」の疑いがかかっている。また、首相主催の「桜を見る会」においては、「政治資金規正法」違反や、税金を自身の後援会活動費に利用した「背任罪」などの疑いもかかっている。
 1976年のロッキード事件では当時の首相、田中角栄氏が収賄容疑などで逮捕され有罪となった。〈事件は自民党の長期政権の結果生じた(略)構造汚職であり、田中角栄に象徴される自民党政治の金権体質を表すものであった〉(『旺文社日本史事典』)とされるが、安倍政権という「金権体質の長期政権」が断罪される日もそう遠くはないだろう。(尹史承)

▼米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると、新型コロナウイルス感染症による死者が6月28日、世界全体で50万人を超えました。世界各地で被害が拡大しており、沈静化の気配は見えないままとなっているそうです(共同)。
 カナダ生まれのジャーナリスト、ナオミ・クライン氏は著書『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体を暴く(上、下)』(岩波書店)で、自然災害などによる大きな惨事や危機が政治的に利用、あるいは悪用されることに警鐘を鳴らしています。
 私たちが新型コロナウイルス時代を生きていくにあたって、なにをどのように考えるべきなのか、どのような社会を目指すべきなのか。このことを落ち着いてしっかり考えないとコロナショックを悪用されてしまいます。
 そこで『週刊金曜日』7月17・24日合併号では「新型コロナ時代を生きる」と題して大型特集を組みます。合併号は、4・5月の大型連休や8月の旧盆、年末年始以外では初めてとなります。
 現在、さまざまな皆さまにお願いした原稿が届きつつあり、うなずいたり、目から鱗を落としたりしながら編集作業をしています。御期待ください。(伊田浩之)

▼0・4%――。非常に望みが薄いと感じる数字だ。これは日本の昨年と2018年の難民認定率。昨年は1万375人、難民認定を求める人がいたが、難民と認定されたのは44人だけだった。18年は1万493人が認定を求めたが、やはり42人しか認定されなかった(すべて法務省データより)。このため、難民認定の申請を繰り返さざるを得ない外国人は日本にたくさんいる。日本が「難民鎖国」と呼ばれる所以だ。
 そんな日本で、刑事罰を盛り込んだ入管法改正が秋の臨時国会で進められる可能性がある。出身国へ戻ることなどを命じる「退去強制令書」に従わない人などが刑事罰の対象となり、日本で生まれた子どもたちも例外ではない。親に在留資格がないことなどで、その子どもも仮放免という、社会保障も就労権も移動の自由もない状況に置かれるケースがあるのだが、現在、仮放免の未成年者は300人ほどいるという。みな、日本以外の国に出ることすらできず暮らしてきた。「出身国」はそんな子どもたちにとって、見知らぬ国でしかない。そんな人たちさえも刑事罰の対象にされるこの動きを、見過ごしてほしくない。(渡部睦美)