週刊金曜日 編集後記

1182号

▼財務次官セクハラ報道に端を発する一連の反応(人権問題を政局化する一部政治家や報道、被害者は名乗り出よ要請の財務省、「自社で報道できない」テレビ朝日、4月19日付産経ニュース「取材データ提供問題化」のような問題すりかえなど)には立腹を通り越して脱力。記者を男にすりゃいい、という発想の人につける薬はどこにあるのか。「いやいや、事務次官を女にすりゃいいんだよ」と言いたくなる。特集で辛淑玉さんが「この国で一番もったいないのは憲法」と指摘している通り、憲法で人権を謳っていても宝の持ち腐れ。
 数学はできるが人との距離は測れない官僚、漢字も空気も読めない政治家、人権を報じるが尊重はしないメディア......が腐らせているこの国がなんとか生きているのはなぜか。今週号に登場するような、世を憂うが絶望せず、事態を好転させるべく知恵を絞り、労を厭わずに動く市民が支えているからに他ならない。(宮本有紀)

▼この一年、義母が入退院を繰り返している。今もまた短期入院中である。もうお年なのであちこち具合の悪いところが出てくるのだが、医師や看護師、ケアマネジャーやヘルパーさんなど、たくさんの人たちに助けられながら、今でも一人暮らしを続けている。本当にありがたい。(広い意味で)「憲法」に守られていると思う。基本的に元気でお洒落な人だし、90歳を越えて耳が遠くなっても、本を読む意欲は持ち続けているので、着替えなどを持っていくときには、ベランダに咲いた花とともに、僕が持っている本を差し入れることもある。
 昨日は、齋藤陽道さんの写真・エッセイ集『それでも それでもそれでも』(ナナロク社)を持っていった。「世界はこんなふうにとてつもなく優しい」という、光にも似たチカラを感じる写真と文章の数々。入院中の義母のココロに届くといいな。(本田政昭)

▼本誌がお手元に届く頃には南北首脳会談の結果が出ているでしょうか。核・ICBM問題のみならず、朝鮮戦争の終結・平和に向けた何らかの合意はなされたのか。本誌4月13日号で掲載したインタビューで李在禎元韓国統一部長官が示唆したように今後は、3カ国、4カ国での会談も開催されるのか。朝鮮戦争は「休戦」してからすでに65年。「一つの民族」とはいっても、半世紀以上、異なる社会で暮らしてきた人々が再び一つになることはそう簡単ではない――そう思いつつも、平和的な解決を願わずにはいられません。
 この度、『週刊金曜日』を退職することになりました。これからは南北に通底する朝鮮の「伝統」の命脈が見つけられたら、と新たな野望(?)とともに韓国で学んでいく予定です。本誌を通じてお世話になった皆様、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました!(弓削田理絵)

▼「春バテ」という言葉をお天気ニュースで読んだ。寒暖差や気圧変化、それと日の出時間による時差が原因、とあった。なんだ年度替わりの環境変化によるストレスも原因かと思ったのに。生活に特に変化がなくても、通勤電車のダイヤ改正や春特有の車内の混み具合や新卒社員への驚き(携帯電話しか知らないから一般的な電話機の受話器の取り方がわからない、など)とか、色々聞きますが。
 特にまた世の中的に憂鬱なニュースだらけの今春、私には身近な世界の憂鬱も山のようにある。保育園時代のクラスメート親子にばったり会い、早速愚痴を聞く。小学生男子あるあるの話だし大丈夫、と励ましながら、うちよりいいじゃない、誰か私も励ましてと思う。現実逃避をまたドラマに。今期は朝ドラ。人生で一番楽しかった(気がするだけかもだが)頃......に近い時代の話で。その程度の逃避、別にいいですよね。(佐藤恵)