週刊金曜日 編集後記

1183号

▼南北朝鮮首脳会談当日、韓国を取材していた知人のカメラマンは、「終戦」の文言に「小4の息子が『これで兵役に行かなくてすむかな』と言ったんです」とある女性から言われたそうだ。胸を衝かれた。
 一方、支持率低迷でも憲法9条への自衛隊明記を、今年5月3日も強調した安倍晋三首相は、韓国とは逆に戦争への道を邁進する。
 安倍首相だけではない。首脳会談の結果に疑心暗鬼ばかりを唱える日本のメディアを見ていると、この国は朝鮮半島の平和を望んでいないかのようだ。恥ずかしい。
 首脳会談前に同様に韓国を訪ね、文在寅大統領のブレーンなどに会った日本のあるNPO団体の代表は、文大統領の南北対話路線は、多くの市民団体との対話を重ね、踏まえた上の政策だから、民衆の絶大な支持の上に立っていると熱く語ってくれた。今の日韓の落差を見ていると、文政権と安倍政権の差という以上に、日本と韓国の民主主義の差を感じる。いずれ特集でとりあげたい。(山村清二)

▼わが家の愛犬は捨て犬出身。なので正確なことはわからないのですが、獣医さんの見立てによるとシェルティとテリアの雑種ではないかとのこと。そのためちょっとおもしろい外見をしています。
 先日の散歩の途中、そばにいた子どもたちが寄ってきました。
「この犬、な~に?」
「雑種だよ」
「ざっしゅ~? って何?」
「う~んとね、シェルティとテリアが混ざっているの。ミックスしてるの。世界で一匹なんだよ」
「お店で買ったの?」
「ううん、捨て犬だったの」
「お店で買ってないのに世界で一匹なの?」
 ペットショップでは人為的に作られた"ミックス"犬が、「世界で一匹」と宣伝され売られています。子どもたちにとっての「世界で一匹」は、そうした犬なのかもしれません。ペットショップで買うだけが犬との出会いではないことを、子どもたちがわかってくれるといいのですが。(渡辺妙子)

▼沖縄県の戦後処理の一環とする「戦中戦後の混乱期における義務教育未修了者支援事業」というものを知っていますか? 以前この欄でお知らせしたNPOの珊瑚舎スコーレ夜間中学は、沖縄戦などで学ぶ機会を失った人のために2004年から無料で授業を行なってきましたが、その支援事業がこの3月で打ち切りとなってしまいました。満足に義務教育を受けることができなかった人たちがまだ5人も在籍している中での支援打ち切りはどう考えてもひどい!
 珊瑚舎では、沖縄県議会に支援事業の継続を陳情し、先月26日には文教厚生委員会で事業の継続を訴えました。全国に向けては継続支援を求める署名への協力を呼び掛けています(インターネット署名は珊瑚舎のHPからできます)。
 昨年2月には「教育機会確保法」が施行したばかり。地方公共団体は義務教育未修了者に、就学の機会提供などが義務付けられたなかでの県の支援事業打ち切りは、どうにも納得できない。(柳百合子)▼酒が飲めるか飲めないかは、アルコールを分解する酵素の働きで決まる。日本人は欧米人に比べ、半数以上が酵素の働きが弱く、あまり飲めない体質らしい。日本人の遺伝情報を解析したら、この体質は数千年かけて子孫に受け継がれ増加してきたそうだ。アルコールに弱いことがなぜ日本人に特有なのかはわからないという。生存するためには、日本人は飲まないにこしたことはないということか。
 某アイドルグループのメンバーの不祥事も泥酔していなければ、防げたかもしれない。自制心がなくなり、己の社会的地位も忘れてしまうのが、酒の怖さである。酔いが醒めた後で、事の重大さに気づいていては遅いのだ。セクハラで辞任した財務事務次官共々、酔っていたからという言い訳は通用しない。他人に被害を及ぼすくらいなら一人で酔いつぶれなさい。薫風の候、酩(MAY)酊し千鳥足で帰宅した挙句、転倒して痣だらけの私のように。(原口広矢)