1580号
2026年08月07日
▼先週の7月31日号「森林保全団体『モア・トゥリーズ』水谷伸吉事務局長に聞く 坂本龍一の遺志を継ぎ 森と都市つなぐ」で、紙幅の都合上、漏れてしまった話を紹介します。
2023年3月28日に逝去した坂本さんは晩年、東京・明治神宮外苑の樹木伐採を見直すべきと主張。同年2月24日には小池百合子東京都知事宛てに「あなたのリーダーシップに期待します」と綴った手紙を送付しました。当時を水谷さんはこう振り返りました。
「条例違反がなければ事業者に対し手を打てない状況下で、教授(坂本さん)が進めようとしていたのは『対話』でした。何が何でも伐採を許さないのではなく、落としどころを一緒に見つけプランニングしていく発想です」
1960年代、高校生で全共闘に参加した坂本さんは、その時の挫折を経て既存の反対運動にとどまらない「新たな社会運動」を模索。環境問題や音楽を通じて人と人、都市と地域を結ぶ試みは、モア・トゥリーズや東北ユースオーケストラなどの形で結実します。
社会への諦念が広がるなか、対話で持続可能な社会を切り開こうとした坂本さんの足跡は、私の道標となっています。(鎌田浩昭)
▼保育園に入園すると、もれなく「保育園の洗礼」(集団生活が始まり、次々と新しい菌やウイルスを貰って熱を出すこと)というイベントが始まると聞いていた。
わが子は1年目を乗り切り、すっかり油断していたのだが、2年目の今夏、ついにその時が訪れた。「ヒトメタニューモウイルス」(熱・鼻水・しつこい咳など、風邪に似た症状が出るウイルス。こじらせると気管支炎や肺炎を起こす)に罹患し、まさかの入院生活を経験することになったのだ。
理屈では「そうして免疫をつけて強くなる」と分かっていても、小さな体に点滴が繋がれ、苦しそうに息をする姿を見るのは、親としてやはり胸が締め付けられる。しかし、病院の医師や看護師さんの手厚いケア、職場の柔軟なテレワーク制度、そして「お大事にね」と仕事をフォローしてくれる同僚の優しさに触れるたび、私たちは決して孤立して育てているわけではないのだとも気付かされる。
すっかり元気になり、退院したわが子が大好きな歌を歌ったり、音楽に合わせて家の中を跳び回ったりしている。ベッドの上でじっと耐えていた姿が嘘のようだ。その騒がしい日常が、今は何より愛おしく、ありがたい。(桑島未樹)
▼東日本大震災の時、すぐに業務を切り上げましたが、住まいのマンションに帰り着いたのは20時でした。「○○がいないの」。妻によると、当時、5匹いたネコのうち、三女ネコが行方不明とか。部屋は本棚等が倒れ、足の踏み場もないほど。名前を呼びながら捜し回り、押し入れ奥で震える彼女を見つけたのは30分後のことでした。
マンションは、地震で少し傾き、棟に亀裂が入っていました。管理組合の理事会主導で応急処置を施した後、改築・修繕をすすめようということになりました。その後、新規建て替え案も出てきました。ただネックは、改築・修繕案の場合、管理組合の積み立て貯金では足りず、各戸に大きな費用負担がかかること。建て替え案は、等価交換で負担はなくなりますが、専有スペースが2分の1ほどになり、新築工事の期間は、他所へ移らなければならないことなどが懸念されました。結局、住民には高齢者も多く、「今のままでいいから」という意見に押され両案とも消滅しました。
5匹のネコたちは、いまはみんな旅立ちました。倒れた本棚を元の位置に戻し、各棚に5匹を乗せて撮った写真が、東日本大震災の思い出として残っています。「言葉の広場」9月のテーマは「震災」です。(秋山晴康)
