週刊金曜日 編集後記

1572号

▼メディアウオッチ欄で田幸和歌子氏がとりあげているドラマ『銀河の一票』を私も注目している。

 東京都知事候補を探す星野茉莉が、候補にしたい人物に「いるよ、私なんかよりもっと人の上に立てる人」と言われた時、「上、じゃなくて前、です。同じ地面に足を着けて同じ景色の中で同じ気温を感じながら同じ道を歩くんです。先頭を明るい方へ」と言う。そして続ける。「ガラスのかけらが落ちてたら、誰かが踏んで怪我をする前に拾います。川があったら橋をかけて、雪が積もってたら道を作ります。(略)世界がぜんたい幸せになる方法を見極めて実行する。誰もとりこぼさない。それが私の理想の都知事像です」と。

「都知事像」は「政治家像」と置き換えられるだろう。政治家とは人の上に立つ「えらい人」なのではなく、人々に危険が降りかからないよう安寧にすごせるよう先頭に立って働く人なのだというメッセージ。本来、これは当然のことなのに、それを忘れた政治家が多すぎるから「理想」「きれい事」と呼ばれるのではないか。

 自分に献金してくれる一部のために働く人ではなく「全体」のため、特に困りごとを抱える人々のために働く人をこそ、議会に送らなければ。票を投じる私たち自身も問われている。(宮本有紀)

▼20回目を迎えた「コンサート・自由な風の歌」が5月15日、東京・杉並で行なわれた。これは東京都の学校で「君が代」の強制に苦しむ教員たちを励まそうと2005年に始まったもので、6回目までは作曲家の林光さんが、以降はピアニストで本誌編集委員の崔善愛さんが音楽監督を務める。

「わたしはうたう 民の声を」とタイトルがつけられた今年は、埼玉県桶川市郊外のいなほ保育園・けやき学園の子どもたちによるパフォーマンスもあり、盛りだくさん。元教員らが中心の「自由な風の歌20合唱団」の歌は言葉の一つひとつが胸に響き、もっと聞いていたかったほど。本誌で崔さんがインタビューした佐藤拓さんが昨年に続いて指揮を担当、団員がいきいきと楽しそうだった。1部ではピアノ、バイオリン、チェロの演奏。こちらも崔さんがインタビューした北原志穂さんがフラメンコを踊り、華やかだった。

 当日は、本誌掲載の「風速計」(19年~)などをまとめた崔さんの著書『私の「風速計」』(いのちのことば社)が会場に届けられた。ページをめくると、日々のニュースから自身の指紋押捺拒否、父親や長生炭鉱のことなどが鋭い言葉で迫ってくる。多くの人に読んでほしい。(吉田亮子)

▼5月30日に東京・国分寺市で開催されたビデオジャーナリストの湯本雅典さんの作品上映会に参加しました。

 上映されたのは、沖縄・石垣島に陸上自衛隊の石垣駐屯地が設置される過程を追った『ドキュメント石垣島』(2023年)と、陸上自衛隊配備の賛否を問う住民投票の実施を求めて立ち上がった若者たちを追った『拝啓住民投票様 石垣島のまんなかで起きたこと』(25年)の2本です。

 両作ともに、石垣島で農業や酪農を営んで地域に根を張った人々が多く取り上げられていたのが印象的でした。「(島が戦場になっても)避難できない。避難したら牛たちが飢え死にしてしまう」という酪農家の男性が出てきます。島の軍事基地化は、現地の人々に安心ではなく不安を与えていることがよくわかりました。

『拝啓住民投票様』では、市民団体が条例の要件を満たす数の署名を集めて住民投票を求めましたが、市議会が否決。市長も実施を拒みました。その経過が記録されています。

 中心になったのは、当時20代後半の島の若者たちでした。現在は30代半ばくらい。私と同世代の人たちが立ち上がっていたことを心強く感じました。(渡部翔太)