1576号
2026年07月10日
▼今号の特集は、詩人・茨木のり子です。私も一部、編集を担当しました。1926年6月12日生まれの茨木は今年、生誕100年、没後20年です。
私の好きな詩の一節は「倚りかかるとすれば それは 椅子の背もたれだけ」「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」です。不確かな情報や安易な同調圧力に流されがちな現代だからこそ、彼女の言葉と出合い直す意義は大きいのではと思います。
「茨木のり子の家を残したい会」の柳田由紀子さんへの取材にも立ち会いました。柳田さんは、お連れ合いから「すごいのが載ってる」と見せられた雑誌で茨木作品に初めて接したと言います。「こんな人が同時代にいるんだ」という衝撃を受けたそうです。天皇制批判や植民地支配への懺悔など、茨木は政治性を帯びた主張も恐れずにしました。それは、彼女が時代を真正面から受け止めていたからでしょう。
特集では、亡くなるまで暮らした家の内部を撮影した貴重な写真や、おいの宮崎治さんのインタビューなど、茨木の素顔に迫った記事も掲載しています。本誌読者に募ったエッセイでは、茨木から届いた直筆の手紙にまつわる話も。ぜひ、お読みください。(渡部翔太)
▼国連の女性差別撤廃委員会が2024年の審査で、男性に限定された皇位継承を女性差別として皇室典範の改正を勧告し、それに日本政府が「皇室典範は審査の対象にない」「差別にあたらない」と反発したことは記憶に新しい。皇室典範は一法律にすぎないので審査対象になるし、実際に制度は男女不平等なので、委員会の指摘はもっともなことではある。
ただ、天皇制に賛成しないので、皇室に男性が少なくなって皇位継承できず自然に制度がなくなるのならいいのではと、あえて天皇制に男女平等を実現しないという考えもある。私もこちら派だ。皇室という制度そのものが女性の自己実現や性に関する自己決定権を侵害していると考えるためである。
雅子さんは、皇室に入らなければ外交官として活躍し女性初の外務事務次官になった可能性もあるのに、「世継ぎを産む道具」扱いされ、人格を尊重されなかった。制度がある限り、皇位継承者が男性ならその配偶者が、女性なら本人が、跡継ぎを産まなければならない重圧にさらされる。同性愛や無性愛という性的指向も認められないだろう。こんな非人間的な制度から解放してあげたい。
憲法改正議論をするのなら、第1章「天皇」こそ存分にやってもらいたいと思う。(宮本有紀)
▼先日、所用があって新潟県へ行った。最近は犬連れで泊まれる宿が増えてきたとは思うが、大型犬もOKという宿は少数だ。このときも、目的地手前のスキー場近くに、なんとか宿を見つけた。山に囲まれて自然ゆたかでよいところだが、やはりクマが気になる。
オーナーによると、昨年は宿近くの柿の木にクマが居座ったことがあったとか。しかし、宿の入り口でオーナーの大型犬たちがウロウロしていたときは、クマは近づいてこなかったという。そういえば、クマを追い払う訓練を受けた「ベアドッグ」がいるぐらいだ。
そして、なんとこの地域では、クマ対策に犬の毛や糞を畑のまわりにまいていた。犬のにおいをクマが嫌がるので作物が守られる。さらに宿では、大量のオニグルミをまく。人にはかたいクルミでもクマは噛んで割り、中身を器用に食べ、満足して山に帰って行くからだ。保護犬の活動もしているオーナーは、どんな動物でも殺処分されるのはしのびないと話す。
北海道ではサケの遡上が減り、食べるものが少なくなったクマが人里に下りてきている。これは、クマが悪いのか? 私には地球環境の変化に警鐘を鳴らしている存在、と思えてならないのだが。(吉田亮子)
