1568号
2026年05月15日
▼東京・有明の憲法集会会場の熱気はすごかった。主催者発表は5万人参加で、昨年より大幅増。パネルや旗など何らかの意思表示をしている人が門の近くからメインステージ近くまで続き、若い人が増えた印象がある。個性的な表現もたくさん見られた。「原稿(編集部注 創作活動の意味)やりたいけど憲法改悪も戦争も嫌なのでデモなどの社会活動に仕方なく参加しているオタク」と書いた小さなパネルを自分の膝に立てかけて芝に座り、一人ゲームをしていた人。パネルがなければ集会に参加しているとは思えない雰囲気だが、それも格好いい。「NO WAR」と書かれた小さいバッグを置いて座っている人もいて、それがなければピクニックにきているようだった。
薔薇の花を散らした地に「祖国の名もなき英雄になりたいシトワイエンヌ」という幟を作った人はベルばら好き?「政治の話じゃない。僕らの話だ」と書いた布をはためかせていた若者はMrs. GREEN APPLEのファン? この自由な感じが「個人の尊重」を謳う日本国憲法の集会らしくて素敵だ。
衆議院では改憲派が圧倒するが、改憲反対の声が大きくなれば無視はできない。日本の市民の底力を感じた日だった。(宮本有紀)
▼今、デモが熱い。ペンライトやシャボン玉が舞い、ポップな音楽や芸術作品が彩る空間は、テーマパークのパレードさながらだ。現代の感覚に合わせた「楽しくておしゃれで元気の出る」抗議の形が創り上げられている。そこには、人びとの心に届けるための工夫と熟慮の跡がうかがえる。
翻って、新自由主義がもたらす社会のゆがみは深刻だ。連休中、友人に学費値上げの理不尽さを問うた。貧富の格差で無数の才能を食いつぶす社会に未来はないと思わないか、と。しかし、返ってきたのは「俺と子どもが良ければ、他はどうでもいい」という言葉だった。弱肉強食の自己責任論が、ここまで他者への想像力を奪ってしまったのかと絶句し、込み上げた言葉を飲み込んだと同時に、届く言葉を紡ぐ努力が必要だと痛感した。なぜそう思うのか、と相手の言に耳を傾け、向かい合って話し合えば、価値観は違えども、心は必ず通い合うはずだ。
憲法記念日、有明の東京臨海広域防災公園の芝生に体を預け、ぼんやり空を眺めると、いくつもの凧が泳いでいた。普段届かない場所にこそ声を届けたい。週末の快晴を願い、大きな六角凧に「9条LOVE」を縫い付ける。(上野和樹)
▼シンガー・ソングライター友部正人さん(75歳)を追ったドキュメンタリー映画『遠来 ~トモべのコトバ~』(90分)を観ました。
撮影は約10年前。ヒューマンドキュメンタリーの映画作品が多い伊勢真一監督(77歳)と友部さんは長年の友人。米ニューヨークで当時暮らしていた友部夫妻の生活や、セントラル・パークでの弾き語り、街角での詩の朗読、ニューヨークシティマラソンを走る姿などを記録しています。伊勢監督は、がんになったことなどをきっかけに編集作業を始めたそうです。
友部さんの名曲「一本道」は1972年発売ですから、54年前の曲ですが、今も鋭い訴求力を持って迫ってきます。ほかにも、福島第一原発事故から刺激を受けた曲「日本に地震があったのに」も印象深い。交流があったフォーク歌手の故・高田渡さんを巡る知られざるエピソードも語られます。
上映後のトークで伊勢監督は「部分を切り取ることが普遍性を持つ」と話しています。世界中が分断されようとする今こそ、観ていただきたい映画です。東京・新宿での公開は終わりましたが、全国で順次公開される予定。詳細はいせフィルムの公式サイトをご覧ください。(伊田浩之)
