週刊金曜日 編集後記

1551号

▼見逃せない政治家の発言がまた出てきた。これは危うい。

〈高市政権で安全保障政策を担当する官邸筋は18日、「私は核を持つべきだと思っている」と官邸で記者団に述べ、日本の核兵器保有が必要だとの認識を示した。発言はオフレコを前提にした記者団の非公式取材を受けた際に出た。同時に、現実的ではないとの見方にも言及した〉(共同通信)

「政府筋」「官邸筋」という表現の場合、内閣官房副長官(政務)を指すことが通例だ。ただ今回は、尾上定正首相補佐官とも推測されている。オフレコ時でも、相手に通知した上で実名を出すべきだ。

 官邸筋の真意はわからないが、高市早苗首相の非核三原則見直し発言と呼応して、「観測気球」を上げたのかもしれない。だが、12月19日号で櫛渕万里衆議院議員が述べているように、核抑止力の有効性には批判がある。高市首相の諸政策に対して、中国外務省は「日本の軍国主義の復活という危険な動き」と主張しており、各国にその見方が広まりかねない。

 核武装論者と原発推進論者は親和性が高いが、核武装すると、日米原子力協定でウラン燃料は返還され、原発は止まる。政治家は、言葉を無駄に弄ばず、平和構築に汗をかくべきだ。(伊田浩之)

▼文楽が好きでちょいちょい見に行くのですが、先日はびっくりしてしまいました。休日とはいえ、なんと、満席だったのです。文楽の公演なんて、割引チケットが出るくらいガラガラだったのに......。映画『国宝』を機に日本の古典芸能に興味を持つ人が増えていると聞きましたが、文楽もその影響なのでしょうか。

 初めて文楽を見たときは、摩訶不思議な芸能だなあと、ただただびっくりするばかりでした。でも回を重ねて見るうちに、視界に入る人形遣いの姿もだんだん気にならなくなり、人形の細やかな動き、臨場感たっぷりの太夫の語りと三味線に、とっぷり惹かれました。特に太夫と三味線は、見たところ普通のおじさまたち(すみません!)なのに、舞台が始まると豹変するのがたまりません。すごいなあ、ここまでの域に達するのに何十年かかるのだろうかと、毎度感動します。

 大阪には文楽専用劇場、国立文楽劇場があってうらやましいかぎり。東京の国立劇場は建て替えを理由に閉館していますが、いつになったらオープンするのでしょうか。国立劇場の閉館で、歌舞伎を見る機会がかなり減ってしまいました。(渡辺妙子)

▼師走も半ばを過ぎたころに急遽3年半ぶりに地元の総合病院へ。風邪でもないのに右のこめかみに片頭痛が出たことから「よもや」と思い、校了明けに半休をとって受診したのだ。初診料に加えCTスキャンの検査も受けたことから懐は痛んだものの、結果は一応「問題なし」で一安心。

 しかし久々にやってきた病院は以前にも増して"大繁盛"。受診者の年齢層はさらにまた上がったようだ。待合室で近所の知り合いとばったり出会い「おたくの雑誌はどうかね?」「いや大変なんすよもう」とか碁会所のおっさんたちみたいに呑気な会話をやってると私(現在61歳)も今やそっちの世代なんだなと改めて実感する。

 対照的に院内で働く医師や看護師らは若い。私を診察してくれた男性医師は見たところ私の三回りくらい下の世代ではなかったか。友人で数年前の手術後もリハビリ中のライターが「病院で働いてるのがみんな若い子ばっかりなの」と先日言っていたのを思い出す。われわれ出版業界人が若い世代に出会える場は、患者として病院に行った時ぐらいなのかと年の瀬に複雑な思いに浸った次第ですが、ともあれ来年も何卒宜しくお願い申し上げます。(岩本太郎)