週刊金曜日 編集後記

1544号

▼「水素で未来を拓く」と題した講演会が10月25日に和歌山市で開催されたので、行ってきました。「週刊金曜日わかやま読者会」が共催団体に名を連ねていたからです。読者会のメンバーである島循環器・内科の島廣樹院長が中心となって、準備を進めてこられました。私にも「ぜひ来てほしい」との要請がありました。

 講師は、京都大学大学院の阿部竜教授です。太陽光を用いて、水から水素を直接製造する人工光合成が専門で、この日の講演会では、そんな話をしてくださいました。とはいえ、"完全"文系の私にはちょっと、いや、だいぶ難しかったです。会場には現役高校生13人も訪れていました。阿部教授が解説する難解な公式も、うなずきながら、熱心に聞き入り、教授の質問にも積極的に回答していました。

 今号は「創刊記念号」です。創刊から32年を迎えた『週刊金曜日』の特徴といえるのが、読者会の存在です。全国に30カ所以上あり、それぞれ独自の活動を展開しています。その内容は「読者会から」欄でもご覧いただけます。私はこの「読者会から」欄を読むのが一番の楽しみです。これからも全国の読者会のみなさまとお目にかかれるのを楽しみにしています。(文聖姫)

▼「話せばわかる」。五・一五事件で凶弾に倒れた犬養毅首相(当時)の最期の言葉を思い出す。「話を聞こう」と言ったともされる。事実に基づいた議論と、粘り強い対話こそが人がわかり合う最良の手段であり、価値観がぶつかったときに感情に流され、相手を悪とするだけでは社会は良くならない。

 では、選挙演説中に殺された安倍晋三元首相の場合はどうだろう。長期政権のもと、不都合な事実は隠され、国会では議論を軽んじる答弁が常態化した。石破茂政権で一時、血の通った議論が戻ったものの、安倍政権の復活を思わせる高市早苗新政権が、悪習を継続・拡張するのではないか。暴力が容認されないことは論をまたない。

 いま社会には「ポリコレは成長の足枷」「会議は非効率」と嘲笑され、その場の空気を優先する風潮が広まっている。げらげらと笑う人の足元で踏みつけられる人がいる。そんな社会に舵を切ってよいのか。議論の衰退が社会にもたらす影響を私たちはどれだけ真剣に考えているだろうか。

 議論を大切にし、お互いを認め受け入れる社会は、多くの人が力を発揮し、不測の事態にも柔軟に対応できる。100年後を見据え、私たちにはいま、立ち止まり、考える時間が必要だ。(上野和樹)

▼通勤で通りかかる東京メトロの某駅。駅のあちこちに、「8番出口」の手提げ袋を持った人々がたむろしている(ゲームは11月3日に終了しているので、「たむろしていた」のほうが正解か?)。そう、この駅には、「8番出口」のチェックポイントがあるのだよ(あったのだよ?)。

 東京メトロが映画『8番出口』とコラボして展開していたリアル脱出ゲーム「8番出口」。リアルゲームでどんな謎解きをするのかは知らないのだけど、もともとのゲームは「8番出口」を探すというストーリーであることだけは知っている。それのリアル版? なんかおもしろそう。そもそも「8番出口」というネーミングがいいじゃないですか。

 門前の小僧習わぬ経を読む、ゲームには参加していないくせに、人々が群がるのを目にするうち、どこにチェックポイントがあるのかわかってしまった。だからときどき、迷っているカップルを見かけると、「チェックポイントはあっちですよ」と教えたくなってしまうが、いらぬおせっかいというもの。ぐっとがまんする。

 やってみようかなーと思い公式サイトをのぞいたところ、ゲームに必要なキットは、店頭販売分はすでに完売だったのでした。
(渡辺妙子)