1549号
2025年12月12日
▼アニメ映画『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が全国公開中です。主人公・田丸均の声を板垣李光人さんが演じたことでも話題を呼んでいます。今号では、本作の原作者で脚本にも参加している武田一義さんのインタビューを掲載しています。インタビュアーは、映画監督で本誌の映画評でもおなじみの佐々木誠さんです。「本作の映像表現の特徴」や「漫画と映画の表現の違い」など、映像クリエーターの立場から作品の魅力を掘り下げてもらいました。武田さんと佐々木さんは同じ1975年生まれ。インタビューは大いに盛り上がりました。
印象に残ったのは「戦争を知らない世代の者として戦争ドラマを描く」ことの葛藤を引き受ける、武田さんの創作者としての姿勢です。本作で描かれる三頭身のかわいいキャラクターは、人間が殺される戦場のイメージからあまりにかけ離れています。そのギャップが、実は戦争の"リアル"にたどり着く仕掛けになっていることを詳細に語っていただきました。
本作は、『火垂るの墓』(88年)、『風立ちぬ』(2013年)、『この世界の片隅に』(16年)などとともに戦争を描いたアニメ映画の金字塔になることでしょう。ぜひ劇場で見てほしいです。(渡部翔太)
▼「大きな嘘」や「繰り返される嘘」は、信じられやすいという。その言説の出典ともされる独裁者アドルフ・ヒトラーの著書『わが闘争』(平野一郎、将積茂訳)には確かに「嘘が大きければ信じてもらえる一定の要素がつねに存在する」という記述がある。あからさまな事実の歪曲はあまりにも不名誉なことで気恥ずかしく、そのような厚かましい嘘をつく者はいないだろうと民衆が高を括るからだという。残念ながらこの言説の正しさは歴史が証明している。
自死した元兵庫県議の名誉を毀損したとして逮捕、起訴された立花孝志氏はまさに、この「大きな嘘」を繰り返し発信した人物と言えるだろう。今号に掲載した選挙ウォッチャーちだい氏の記事を読むと、亡くなった元県議以外にも犠牲者がいたことが分かる。
さらに、ちだい氏の共著『陰謀論と排外主義 分断社会を読み解く7つの視点』を読むと、兵庫県以外の地方選挙でも虚偽やヘイトを繰り返し、票を集める候補者が立花氏の他に多数いたことが分かる。泡沫候補として看過していたことを反省せざるを得ない。その発言を鵜呑みにし、誹謗中傷に加担する支持者が多くいる以上、その動向には注意を払わなければいけない。そう痛感した。(平畑玄洋)
▼たたずんでいる猫は、みじんも愛嬌はないが、ふてぶてしさが極まったところに妙な安定感を漂わせる。人気漫画『俺、つしま』のメインキャラクターの「つしま」だ。その鼻先に、小さいけれど鮮やかな緑色をした葉っぱをつけたオリーブの苗木。添えられている文字は"with Palestine"。
友人から貰ったパレスチナ支援のマグネットに和んだ。が、現実にオリーブの若木を囲むのは、暴力と圧政で数え切れないオリーブの成木をなぎ倒し、その地を略奪し、そこに暮らす住民を殲滅せんと企む人間たちと、それを間接的に後押しする私を含む人間たちだ。
2023年12月、イスラエルによる空爆で殺害された詩人で、イスラーム大学で文学を教えていたリフアト・アルアライールの言葉をかみしめる。「イスラエルはなぜ大学を爆撃するのだろうか。......彼らが殺したいのは、開かれた心と、不正義と人種差別の下で生きることを拒否する決意自体なのだ」『ガザの光』(リフアト・アルアライールほか著、明石書店)
今月17~19日、東京・新大久保「スペースDo」で国境なき朗読者たちの公演(脚本・演出/岡真理https://readers-without-borders.org)がある。「停戦」はまやかし。破壊と殺戮の次なる支配に抗する意志がここにも。(小林和子)
