1543号
2025年10月31日
▼10月31日封切の映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』を見ました。試写室には『男はつらいよ』をこよなく愛する渡辺俊雄さん(元NHKアナウンサーで、以前放映された「衛星映画劇場」の支配人)も。ごあいさつできてうれしかったです。
登山家・田部井淳子さんの実話を基にした作品で、主演は吉永小百合さん。監督は『どついたるねん』、辰吉丈一郎さんを追った『BOXER JOE』、福田和子さんを題材にした『顔』、金大中事件を扱った『KT』、幼児売買春や臓器売買を描く『闇の子供たち』など、一癖も二癖もある映画を世に出した阪本順治さん。本作は正統派の娯楽作。阪本さんらしさが出ているのか、関心がありました。
映画の前半は、女性初のエベレスト登頂を目指す様子に多くの時間を割いています。出資を募るべく企業を訪ねますが、そのたびに女性蔑視にさらされます。つらくても準備を止めない田部井さんたち。現在も続く女性差別と照らし合わせながら銀幕を見つめました。若き日の田部井さんを演じたのんさんは、忌野清志郎さんらに影響を受け音楽活動も行なっています。阪本監督は、歌詞に見られる反骨精神を知ったうえで配役したのかもしれません。(鎌田浩昭)
▼前回この欄に執筆した際(10月3日号)「能登になかなか行けずにいる」と書きましたが、実は私は海外もすでに18年間ごぶさた。激動する世界の情勢を気にかけつつも日々の生活に追われ、なかなかその機会がありません。
ただ「そろそろ海外に出たほうがいいのかな」と昨今思うのは、その前回(2007年)、前々回(1993年)は私が日本を出てほどなく首相が辞任し、そこから自民党政権の崩壊につながったということがありまして(笑)。特に93年は「55年体制」の崩壊ということで「ほんとかよ?」と旅先で驚いたものでした。帰国後も「冷夏で米不足」「中日ドラゴンズが優勝するかも」と聞いて「俺は別の日本に帰って来ちゃったのか?」といった感じでしたね。
すわ「政権交代か?」で沸いたこの秋でしたが、それも収まった今、はたしてそのジンクスはなお生きているのかどうか。あるいは国際関係の誌面企画でも提案して自ら海外取材に出てみようかなと思ったりもしますが「バカ言ってないでいつもの仕事をやれ」って怒られるかな。それにたとえ会社の仕事でも、今度はいったん海外に出たら最後、もう帰ってこないんじゃないかという気もするなあ(汗)。(岩本太郎)
▼山谷初男(はっぽん)さんが亡くなって10月31日で6年。今年は七回忌ということで、無名塾をはじめとする、はっぽんさんが出演した劇団の仲間たちを集めて偲ぶ会を開ければと考えています。2012年のドラマ「リーガル・ハイ」で弁護士役として出演したはっぽんさんに、主演の堺雅人さんのことを尋ねたら、「えっ、マチャアキ?」。堺雅人さんとは、09年の「官僚たちの夏」でも掛け合いをしていたのですが、「マチャアキの森の石松」(1975~76年)ほかで共演した堺正章さんのほうが印象深かったのでしょう。
NHKの大河ドラマ、今年は「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、来年は「豊臣兄弟!」だそうです。ただ、大河ドラマでは、「国盗り物語」(73年)を、もう一度見てみたいと思っています。というのも、斎藤道三が浪人だった頃から付き従う赤兵衛役ではっぽんさんが出演し、話題になった作品だからです。私の師匠とも言える俳優が、「はっぽん、道三の腹心として馬に乗ったはいいけど、鐙に足が届かない。それがユーモラスだったなあ」と語っていましたが、残念ながらその場面の記憶がないのです。「言葉の広場」12月のテーマは「ドラマ」、11月のテーマは「今年の漢字」です。ご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)
