1539号
2025年10月03日
▼能登になかなか行けずにいる。昨年の地震・豪雨後はもとより、過去に訪ねたのが今から33年前の一度だけというありさまだ。
その1992年にはまだ輪島や珠洲まで鉄道が通っていた。金沢からディーゼルカーの急行に乗り2時間余で着いた輪島市内で「案外近かったな」などと思いながら活気のある朝市の街を歩いたのを思い出す。むしろ帰路に金沢駅を朝8時前に出た在来線特急で6時間以上をかけて昼過ぎに上野駅に着いた時「やっぱ遠いー」などと呻いていたことも。
今、東京から金沢までは新幹線で約2時間半。輪島市には空港も開業して久しい。だがその半面、奥能登への鉄路は約20年前に廃止され、とりわけ被災後は、そこに行くまでの時間的距離を思うだけで溜息が出るほどになっている。
東京と大都市間の交通のパイプは太くなる一方、地元の公共交通は縮小の一途をたどり、そこからまるで毛細血管が絶たれて細胞が壊死していくかのように衰えゆく地域で自然災害が相次ぐ昨今だ。そんな中で何もできない我が身を恥じながらも、せめて何かを――と今号特集を担当した次第です。寄稿していただいた筆者各位、取材にご協力いただいたみなさんに改めて感謝。(岩本太郎)
▼「あんぱん」ロスである。子どもをはじめ絶大な人気を誇る"アンパンマン"の生みの親、詩人で漫画家のやなせたかしさんと妻、暢さんの半生を描いたドラマ。9月26日に最終回を迎えた。
見始めた動機は単純。やなせさんがモデルの柳井嵩を演じた北村匠海さんのファンだからだ。自慢じゃないが、彼が主演する映画「東京リベンジャーズ」シリーズをNetflixで3回は見ている。さて、ドラマである。最初はそうでもなかったが、途中からグイグイ引き込まれた。特に数週間にわたって描かれた戦争の場面には圧倒させられた。脚本家や演出家、そして俳優らスタッフの覚悟のようなものを感じた。午前8時に「あんぱん」を観た後、「あさイチ」の朝ドラ受けを観てから家を出るのが日課になった。
実はこのドラマを見るまでは、"アンパンマン"に関心はなかったし、正直やなせたかしさんのこともよく知らなかった。だけど、作品に込められた作者の思いを知るにつけ、関心が深まった。やなせさんが伝えたかったことが何なのかが気になった。機会があれば、アニメも観てみたいし、絵本も読んでみたい。 ちなみにドラマのセリフで一番好きなのは、「絶望の隣は希望」である。(文聖姫)
▼「言葉の広場」9月のテーマ「ふるさと自慢」で、私の地元の作家・鷹野つぎと浜納豆について触れましたが、コロナ禍以降、ずっと帰郷を遠慮していました。甥の結婚式も「来なくていいから」と言われ、代わりにビデオメッセージを送りました。能登半島地震から1年がたった元旦、母の訃報が届きました。新型コロナならぬインフルエンザ真っ盛りの中、通夜と告別式をあわただしく済ませました。久しぶりに帰ったふるさとは、甥夫妻に子どもができるなど、浦島太郎になった気分でした。
4月に入って、俳優の山口崇さんが亡くなり、葬儀に参列しました。棺の中の山口さんは、とても奇麗なお顔で、「秋山さん」と呼びかけるいつもの声が聞こえてくるようでした。
5月には、本誌特集等にも協力してくれた介護雑誌の元編集長が山で行方不明になりました。彼女の夫の実家の田植えによばれたり、花見どきには近場の公園をのぞいたり、神奈川・湘南の地引き網パーティに参加したりと家族ぐるみの交流をしてきただけに、大きな衝撃を受けました。11月のテーマ「今年の漢字」でいうと、私の場合は「哀」とか「悼」になるでしょうか。10月のテーマは「読書」。合わせてご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)
