週刊金曜日 編集後記

1538号

▼国連の独立調査委員会は、16日、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの一連の攻撃がジェノサイド(大量虐殺)であることを認定し、ネタニヤフ首相らをその煽動者であると結論づけた。しかし、イスラエル軍は同日、ガザ市に地上部隊を侵攻させ、軍事行動を拡大させた。市街地での地上戦はさらなる市民の犠牲や避難民を生むことになるだろう。

 イスラエルはガザ攻撃を即刻停止すべきである。また各国は国連が定めたジェノサイド条約(防止義務)に則り虐殺を止めるための行動を起こさなければならない。

 22日から開催される国連総会で、英国、フランスなどがパレスチナの国家承認を表明し、承認国は150を超える見通しだという。「2国家解決」を進めてきた日本も当然追随すべきだが、米国が日本側に「要請」してきたため、承認は当面見送ることにしたらしい。

 日本に求められているのは、停戦につなげる外交努力であって、親イスラエルの米国に付き従うことや、多額の税金を投じてイスラエル製の攻撃用ドローンを購入し、ジェノサイドに加担することでは決してない。(尹史承)

▼今号で紹介した韓国の映画『非常戒厳前夜』は日本のメディアにも重要な問題を提起している。尹錫悦前大統領による言論弾圧を描いた作品だが、その発端は権力にも怯まないニュース打破の調査報道にあった。金鎔鎮監督は打破の代表として、検察による家宅捜索の矢面に立った人物でもある。尹氏の不正を暴く調査報道をしたため、尹氏の名誉を毀損した罪に問われてしまう。昨年6月、検察に出頭した金監督は、報道陣に向かって「ここに誰が立つべきだと思うか」と問うた。そして「(株価操作や収賄の疑いがある尹氏の妻)金建希氏ではないか」と続けた。当時の大統領夫妻と、政権寄りのメディアに対する痛烈な批判だ。

 金監督は来日中の9月3日、試写会場で、韓国検察の定例レク(レクチャー=小規模な記者会見)に触れて「検察に出入りする記者は検事たちに飼い慣らされている」とも指摘した。日本の主要メディアも同様の問題を抱えている。筆者も新聞記者時代には検察などのレクに出ていたが、時間と労力を要する調査報道はその対極にある。「ジャーナリズムは本来の役割を果たしているのか」。金監督の問いかけは重く響いた。(平畑玄洋)

▼「差別と闘う」「共生社会を目指す」。そんな当たり前のことができていなかったと、心底思い知らされた。視力や目の疲れなどを理由に「『週刊金曜日』を音で聴きたい」。かつての『音訳版』の再開やデジタル版の読み上げ機能追加を望む声を、これまで数多く受け取ってきた。社内で議論を重ねて業者と話し合ったが、週刊誌としての販売自体が難しい納品スケジュールを前に、打開の術が見出せず、問題を先送りしていた。

 そんな折、業務部に1通のメールが届き、私に現実を直視させた。「視覚障害者は情報に飢えています」。そこには当事者の切実な思いが綴られていた。私たちは目で読むことが難しい方々を結果として差別・排除していなかったか。差別される側の立場に立ち、真剣に向き合ってきたか。どこかで線を引いて妥協し、あらゆる手を尽くす努力を怠っていなかったか。目の前の不条理を放置し、差別に加担していた自分を深く恥じた。差別に目を向けないままでは、どんな言葉も空疎となる。『週刊金曜日』がどんな雑誌でありたいかを問い続け、不条理と闘い続けたい。(上野和樹)