週刊金曜日 編集後記

1534号

▼こう暑くてはどこにいても冷房をフル稼働するしかない。心身ともに煮詰まった私は休みを使って東京を脱出、南の島に飛んだ。

 台風の来襲もなく、晴天続きの1週間。炎天下、自転車を借りて走りまわった。止まると森の向こうから波の音が聞こえる。風が吹き抜け、ざざっと葉ずれの音がして、どこかで鳥が鳴く。来訪者が少なく、島は静かだった。

 中継地で泊まったゲストハウスで知り合った人から、旅の指南を受けていた。島に渡る前に食料をここで買い込んでおくこと、ペットボトルは口をつけずに飲むこと......。彼は休みのたびにここを訪れているという。今回は十数泊の予定。魚を捕ってみんなでバーベキューをするのが楽しみだが、物価がこう高くてはみんなで集まれないと嘆く。出身地をさりげなく聞くと「(福島の)戻れないところ」という。以前は原発で働き、いまは関東で仕事をしている。ここが第2の故郷という。豊かな自然があり、こころを開いて話ができる人たちがいるのだろう。戻れない故郷を思う人たちが、いまもどれだけいることか。私は静かに頷くだけだった。(小林和子)

▼8月9日から16日まで、夏休みを利用して北海道・小樽に行きました。私が滞在していた間、朝晩は掛布団が必要なくらい涼しくて、久しぶりにぐっすり眠れました。猛暑の東京に戻ってきたら、熱帯夜の毎日です。

 さて、小樽には決して遊びに行っただけではありません。12日には小樽や札幌、そして神戸からはるばるいらした『週刊金曜日』読者らとともに、小樽出身の小林正樹監督が制作した映画『東京裁判』(1983年)を鑑賞し、語り合いました。4時間37分の長編。ドキュメンタリー映画ですから、裁判の過程が延々と続きます。また、東京裁判で罪に問われた歴史的事件についても詳しく描かれます。決してドラマチックな映画ではないので、参加者のみなさんも、私も、途中睡魔が襲ってくることが何度かありました。しかし、敗戦80年の節目に鑑賞できてよかったと思いました。私自身、とても勉強になりました。

 翌13日には札幌の大通公園に設置された「日本最大級のビアガーデン」に行き、疲れた脳を癒やし、喉を潤しました。(文聖姫)

▼本誌8月1日号で取り上げたアニメ映画『火垂るの墓』が同15日にテレビ放映された。神戸空襲で焼け出された主人公の清太と妹の節子が衰弱し、死に至る悲劇だが、視聴率は7年前の前回放送から0・5ポイント増の7・2%だった。SNS上では関連ワードがトレンド入りし、議論を巻き起こした。

 映画が公開された1988年はバブル経済の絶頂期。野坂昭如が実体験をもとに書いた同名小説を、あえて飽食の時代に映画化して世に問うた高畑勲監督の慧眼には脱帽する。映画では、原作にはない清太と節子の幽霊が現れ、戦中と現代を橋渡しする。高畑監督の創作部分であり、現代の夜景を映し出すラストシーンはその代表例だ。

 現代が映り込む場面は冒頭にもある。三ノ宮駅構内の柱にもたれかかり息絶えた清太の姿が映る際、現代のスタンド灰皿がほんの数秒映り込む。評論家の岡田斗司夫さんの解説動画によると、ロケハンで撮影された87年のスタンド灰皿の画だという。繰り返し挿入される「現在」は、「過去」として忘却されないための制作者の意図なのかもしれない。(平畑玄洋)