週刊金曜日 編集後記

1341号

▼特集記事の取材のため、ラジオ局の関係者や出演者らと(リモートや電子メール、電話を含め)数多くお逢いしました。真摯にご対応いただいたみなさまから、ラジオが持つ力に対する自負心とラジオへの深い愛情を感じました。
 一人一人のリスナーを大切にし、リスナーとの双方向性を重視するお仕事から自然と身についた姿勢ではないかと思います。
 弊誌で長く連載いただいた故永六輔さんもラジオをとても大切にされたことで知られています。
 大型特集ではありますが、ご紹介できた番組はごく一部です。あなた好みの番組をぜひ探してみてください。きっと見つかります。もし、お薦め番組をもっと読みたいとのご希望があればメール(henshubu@kinyobi.co.jp)などでお寄せください。ご要望が多ければ前向きに検討いたします。
 新型コロナ禍の感染爆発などの記事を掲載するため、ラジオ特集は2回にわけることになりました。後半は、来週発売の8月27日号に掲載します。こちらもご期待いただければ幸いです。(伊田浩之)

▼ラジオといったら自慢じゃないけど私もパーソナリティをやったことがありまして、コミュニティFMで毎回コアなゲストをお招きしながら屈託のないおしゃべりを楽しませてもらったものでした♪普段の自分が表現手段としている活字媒体と同じ言葉が中心の世界とはいえ、やはり音声で、しかも自分の声でというのは勝手が違い失敗もしばしば。それでも即座にリスナーからの反応が返ってくるという、雑誌では得られぬ快感に「こっちに転職してもいいかな」とか思ったりもした次第、ですが。
 今回の特集で取材にお伺いした「LuckyFM茨城放送」の阿部重典社長は現職のアナウンサー。その見事な語り口に「やっぱり本職は違うな~」と、素人のまねごとに酔いしれたかつての自分の不遜な思い上がりを恥じたものでした。掲載は来週へとまわりましたが、そのリニューアルに目下放送業界でも俄然注目が集まっている水戸市の老舗民放ラジオ局さんのレポートも含めた次号「ラジオ特集」後編にも、引き続きぜひご期待ください!(岩本太郎)

▼8月6日、小田急線で刺傷事件を起こした容疑者の動機が「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思っていた」などと女性憎悪に満ちたものだったことは、女性たちを震撼させた。もともと駅や道路などで、男性に故意にぶつかられる経験を持つ女性が多いことは指摘されている。中には階段やホームで強くおされて転倒するケースもあり、女性にとって公共空間は安全な場とは言えない。
 女性というだけでいわれなき憎悪をぶつけられる理不尽に対し、女子大生が呼びかけた「フェミサイドのない日本を実現する会」が15日、「小田急線事件を契機に、フェミサイドの実態を解明し対策を講じてください!」というオンライン署名を立ち上げた。「性別を理由にした女性の殺害」を指す「フェミサイド」を使用することや実態調査などを求めている。
「私たちは、ただ普通に道路を歩いて、電車に乗って、家に帰りたいです。女であるだけで暴力にさらされることなく、ただ無事に家に帰り着きたいです」という訴えに、心から賛同する。(宮本有紀)

▼近代五輪やパラリンピックを支える思想が、性差別や障害者差別を孕み、ナショナリズムを煽ってきたと指摘されて久しい。が一方で、そんな批判を受け、五輪憲章は「オリンピックは選手間の競争であり、国家間の競争ではない」とし、表彰式での旗や歌も、マスコミが誤報している「国旗」「国歌」ではなく、「NOC(国内・地域委員会)の旗・歌」、つまり各選手団の旗や歌であると、1980年の憲章改正で明文化した。
 実はIOC内部では、「完全な国歌国旗廃止案」(トランペット・ファンファーレや五輪旗などで代替し、国旗意匠も不可)が50年代から真剣に議論されてきた前史がある。廃止案は一時、IOC総会で過半数の支持を得たが、五輪を「国威発揚」に使いたい国家勢力により、式典での「国旗」「国歌」形態が不完全に残り、日本国内の教育現場では虚偽による政治利用が進んだ。この種の歴史認識は、残念ながら本誌編集部内でも共有されているとは言えず、次号では高嶋伸欣・琉球大名誉教授に解説いただく予定だ。(本田雅和)