週刊金曜日 編集後記

1314号

▼1月22日、核兵器禁止条約が発効した。「核抑止力」を「必要悪」とする核保有国などの論理に対し、「核は絶対悪」ときっぱり言い切る条約の姿勢は実に清々しい。
 発効日、長崎の集会で被爆者の城臺美彌子さんが、「国民を守るのは先制攻撃の能力を取得することではありません。アベの残した古くさい時代遅れの道を歩むのは潔くやめて、スガスガしい平和への新しい道を歩んではどうですか。さあ、日本も核兵器禁止条約に賛同し、批准の方向へ今すぐ舵をきりましょう」と発言されたそうだ。城臺さんは、2014年の長崎平和祈念式典で「平和への誓い」を読み上げるとき、原稿になかった「集団的自衛権の行使容認は日本国憲法を踏みにじった暴挙です」という言葉を政権につきつけた方。今回の発言も格好いい。
 本来なら条約成立のため率先して尽力すべきだったのに反対した日本政府。この政権を変える方向へ舵をきる年にしたい。(宮本有紀)

▼1月7日、菅義偉首相は二度目の緊急事態宣言を伝える会見で、記者からの「(宣言の)延長を想定しているのか」の問いに、「仮定のことについては答えは控えさせていただきたい」と回答した。その翌日に出演した「報道ステーション」(テレビ朝日)でも、「仮定のことは考えないです」と語った。そして年末年始の感染拡大については「想像はしてませんでした」と開き直り、政権の危機管理能力の欠如を露呈した。
 3月11日で東日本大震災から10年になる。この未曾有の災害に対して当時、「想定外」という言葉が至る所で飛び交った。東京電力などはそれを強調し、責任逃れに努めたが、その言葉が原発事故の免罪符になるわけではない。「想定なき」杜撰な危機管理が被害を拡大させ、犠牲者を出した。
 新型コロナウイルスの感染拡大も同様である。菅政権はあの教訓から何も学んでいない。(尹史承)

▼ある日、体重計に乗った瞬間、思わず目を疑いました。画面に「足腰年齢60歳」の非情な文字が記されていたからです。実年齢より上です。コロナ禍で土、日は不要不急の外出を控えているせいか、急激に足腰に衰えがきたようです。これではいけないと、1日1万歩を目指すことにしました。最近はスマートフォンのアプリに便利なものがあります。歩数計もその一つ。目標達成数値が1万歩と3000歩の2種類をダウンロード。土、日はなるべく遠くのスーパーまで買い物に行ったり、近くの公園を散歩したり。会社でも昼休みの時間などを利用して散歩をします。職場は3階、自宅は4階にありますが、階段で上り下りをします。1日の終わりにアプリを確認して、「目標達成!」の文字が出るとモチベーションが上がります。1週間後、体重計に乗ると足腰年齢は「55歳」になっていました。「ホッ」。(文聖姫)

▼遅ればせながら、米国映画『RBG 最強の85才』(2018年)を観た。ルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)米連邦最高裁判事の半生を追った作品。女性やマイノリティの差別撤廃に向け、しなやかでしたたかな姿勢が鮮やかで、Tシャツやグッズまで作られるほどの人気も納得。惜しくも昨年9月に亡くなり、トランプ大統領(当時)が後任に保守派判事を強権で送り込んだのは残念。
 ちなみに、RBG最高裁判事就任当時の上院司法委員会委員長は、現米国大統領のジョー・バイデン。分断と混乱をもたらしたトランプは退任したが、新型コロナ軽視による米国40万人超の死者は帰らない。まさに「人災」だ。一方、医療体制崩壊のこの国のコロナ対応も「人災」。だが、二階自民党幹事長は「ケチをつけるものじゃない」(NHK)と凄む始末。RBGに倣って「踏みつけているその足をどけて」くれ!(山村清二)