週刊金曜日 編集後記

1280号

▼NHKのバリアフリー・バラエティ番組「バリバラ」の4月23日放送回「桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~ 第1部」の再放送が差し替えになった。23日の放送は「ネットヘイト」をテーマに、川崎でヘイトスピーチにさらされながらもヘイト対策を訴えた崔江以子さんや、安倍政権に近しい元TBS記者の山口敬之氏による性暴力を訴えた伊藤詩織さんが出演。ネットのヘイトスピーチを赤裸々に語る内容だった。最初の10分ほどを見逃したが、NHKでここまでやれるのか! と出演者と番組スタッフの頑張りに勇気づけられた。しかし再放送の録画は、違う放送回に。結局、期間限定の公式の動画配信で全部視聴した。
 放送差し替えの報道に怒りの声が相次いだためか、第2部は再放送も無事放送となった。しかし、障害者への偏見差別、ヘイトスピーチや性暴力の被害を取り上げる番組に、再放送を差し替えざるを得ない有形無形の圧力があったこと、そしてそれが政権の意向と重なりあうことは想像に難くない。とりあえず番組を毎回視聴することで、出演者とスタッフにエールを送ることとした。(原田成人)

▼自粛要請の中、多くの飲食店でテイクアウト(お持ち帰り)営業が始まっている。
 私も先日、近所の洋食屋さんで「煮込みハンバーグ定食」(900円)を買って食べてみた。キノコとハンバーグをデミグラスソースで煮込んである。地元の人気店で味にまちがいはない。これで900円はお得である。
 別の食堂は、利用しなかったが酒類を量り売りしていた。これはグッドアイデアですね。マイ容器を持参すればゴミも減らせるし。
 行政からの補償が貧弱な中、慣れない上に店内飲食ほどには売り上げも伸びない(と思われる)テイクアウト営業に転換するのは大変だったにちがいない。メニューの開発や値段決め、容器など資材の準備、さらには感染防止対策も......。
 その点を踏まえ、店内飲食の再開を望みつつ、こうした取り組みが今後も定着していけばと思うのだ。例えばテレワークが一気に普及して、満員電車の通勤地獄から解放された人も多いはず。プラスの変化がコロナ以後につながればいいですね。(斉藤円華)

▼「一人一律10万円給付」を謳う特別定額給付金の申請が始まった。といっても、現在できる申請方法は、「マイナンバーカード」保持者によるオンライン申請のみだ。カードの交付率は16%(4月1日時点)。これほど普及していないものを現段階で唯一の申請方法とするのは、「2022年度中にほぼ全ての住民にカードを交付」という政府目標に近づくための目論見にしか感じられない。実際、各役所にはカード申請者が殺到している。
 だが、カードはすぐ交付されるわけではない。一部市区町村のウェブサイトには交付は1~2カ月かかると記されている。交付に時間がかかることがもっと告知されていれば、申請書が郵送されてくるのを待つ人もいたのではないか。
 ただ、郵送も時間を要する。東京23区のサイトを確認したところ、5月中旬から申請書を郵送するのは5区のみ。ほかは下旬から6月上旬だった。これだと給付は早くて5月下旬、遅いと7月以降になるだろう。青森県西目屋村のようにすでに手渡し支給を始めるような、切羽詰まった生活状況を考慮するところは少ない。一体何のための給付金なのか。(渡部睦美)

▼スーパーに行くと、ホットケーキミックスやお好み焼きミックス、パスタ、小麦粉の棚が常にからっぽです。小麦粉にいたっては薄力粉はもとより強力粉もないし、ドライイーストも品薄なので、みなさんパン焼いたりピザ作ったりしているのかなと想像します。お子さんがいる家庭は大変ですよね。棚のからっぽ具合から、お母さん・お父さんの奮闘が推測できます。お疲れさまです。
 日本とは比べものにならないくらいの厳しい外出制限が続いた中国。北京に住む友人は4月上旬、「1月25日から今日まで(注:2カ月強)ダンナとしか会っていない」と連絡をくれ、焦燥している感じでした。その後、「5月11日から仕事を再開する」とのこと。よかったよかったと思いつつ聞いてみると、休業中の経費に対する補償はゼロとのこと。小売店や商店などは1~2カ月の家賃免除の措置があるそうですが、友人は日本でいえば個人事業主で外国人で......という立場なので、各種補償の対象外みたいです。「借金やローンがないだけ大丈夫。また稼ぐ!」とがんばる友人に、心の底から会いたいです。 (渡辺妙子)