週刊金曜日 編集後記

1046号

▼「吉報、吉報!」  記録カメラマンの福田文昭さんの声が弾んでいる。秋田県大館市にある御成座で、柴咲コウさんが6月14日、電撃ライブを開いたというのだ。そう、本誌4月24日号で福田さんが渋めの写真とともに紹介した、往年の名作をフィルム上映するあの映画館だ。
 柴咲さんのニューアルバムのリリースに併せ、全国からライブ開催する会場を募ったところ、1700の応募があり御成座が選ばれた。支配人とともに館を切り盛りする切替桂さんの熱烈な手紙が、柴咲さんの心を掴んだようだ。観客は高校生100人と常連客50人。
 閉鎖された映画館にひょんなことから移り住んだ切替さん一家が、御成座を1年前に再開させた。だが、地方の"シャッター通り"にあるレトロ(懐古的)映画館とあって経営は厳しい。"応援団"になった福田さんによると、今後も知恵と人のつながりを活かした大型企画を考案中のようだ。映画の脚本を地で行くような急展開に、目が離せない。 (小林和子)

▼6月23日、ウィキリークスは、NSA(米国家安全保障局)が、シラク、サルコジ、オランドの大統領3代を含めたフランス当局トップをスパイしてきたと暴露した。フランス国内で『リベラシオン』などが24日に報じ、翌日、同紙社説は、フランスを見下す米国の態度を罰するため、エドワード・スノーデン氏の亡命を認める事が行動で示す事になると述べた。同日、司法大臣は、スノーデン氏とウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏のフランス居住が認められるだろうと語った。スノーデン氏は、2年間ロシアで一時的に居住し、アサンジ氏は、3年間ロンドンのエクアドル大使館に滞在している。ウィキリークスは、スノーデン氏とは別の人物が情報源だと言い、米国、欧州当局が情報源を捜索していると報じられている。
 21日が32歳の誕生日だったスノーデン氏。多くの人が「ハッピーバースデー、エド!」のメッセージを掲げた自撮り写真をアップした直後の事だった。 (樋口惠)

▼「くらしの泉」の1ページコラムは、笹原宏之先生の「漢字と社会」が先月で終わりました。毎回、興味深いトピックばかりで、原稿をいただくのが楽しみでしたが、中でも印象深かったのが、「数々の漢字の略字は手で書くことで生まれてきた」ということです。
 ネット時代になってさまざまな言葉や表記がネットから誕生、すさまじいスピードで定着しているのに反し、漢字については新たな文字が生まれることはもうないかもしれませんね。「略字が書ける」という方は、大事に大事に伝承してほしいものです。
 さて、今月からは、瀬下美和さんの「卵巣がんになりました」が始まります。本誌でも活躍するジャーナリストの瀬下さん、実は卵巣がんになり、しばし治療に専念していたのでした。がんの体験を通して見たこと、感じたこと、そしてジャーナリストならでは、がん(特に女性特有のがん)治療の最新情報などをお届けする予定です。お楽しみに。 (渡辺妙子)