知ってほしい いまも取り遺されている朝鮮人遺骨のこと2
崔善愛編集委員の
責任編集
遺骨<2>長生炭鉱
瀬戸内海西部の周防灘に突き出た、半島のような山口県宇部市床波海岸──。地元の人々がピーヤと呼ぶ、2本の大きな円筒形の排気塔が海面上に突き出ているのが見える。アジア太平洋戦争中の1942年2月3日午前9時頃、この沖合に広がる海底炭田「長生炭鉱」で大規模水没事故があり、183人が生きながらにして海底に閉じ込められた現場だ。しかし地元の人さえ意外に知らず、まして犠牲者の7割以上が朝鮮人だったことは......。この隠された国策での犠牲の事実を掘り起こして記録し、朝鮮・韓国の団体とともに追悼してきた市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」が遺骨発掘調査に乗り出し、まずは海岸部の本坑坑口を掘り当て、10月29日から潜水調査を始めた。今も全国の強制労働の現場に散らばる朝鮮人労働者らの遺骨を家族のもとに返す取り組みの中でも、大きな成果である。
- 市民の力で坑口をあけた!
山口県宇部海底炭鉱で戦時中に水没事故
朝鮮人136人、日本人47人が犠牲
- 「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」井上洋子・共同代表に聞く
「謝罪とは遺骨を返すこと」今回の坑口発見の立役者の一人で「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の創設メンバー、井上洋子・共同代表(74歳)に、れまでの経緯や今後の課題について、本誌の崔善愛・編集委員が話を聞いた。
- 強制連行・強制労働の証拠はこの海底にある
「朝鮮炭鉱」と呼ばれた意味長生炭鉱では採炭、掘進、仕繰といわれる坑道の拡大・修復などの作業現場の半分近くが、朝鮮人だけに担わされていた。朝鮮人を最も危険な場所で長時間、強制労働させることで会社は戦時下に急成長し、宇部炭田を代表する中核炭鉱となる。それが1942年2月の「水非常」(水没事故)で事実上壊滅したあと歴史がどのように発掘されたのか、人と記録から辿りたい。
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