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崔善愛さん神戸演奏会 ルーツの地で父を語る

 2月23日(金=休)朝、成田空港を発ち、関西空港へ。午後から神戸市の「神戸学生青年センター」(飛田雄一理事長)本館で、本誌読者会の「昼下がりの読者会・こうべ(略称・神戸読者会)」(片岡英夫世話人)と同センターが共催する「崔善愛ピアノ&トーク"ショパン 花束に隠された大砲"」があるので、その追っかけである。昨年10月の北海道ツアー(札幌、小樽、室蘭、釧路)に続く、本誌創刊30周年記念イベントだ。

 私は片岡さんに、5番目の開催地を引き受けてくれるようにお願いしていた。片岡さんは、同センター別館を読者会会場として使っている。理事長の飛田さんに相談して、共催を快諾してもらった。1950年生まれの飛田さんは神戸大学生時代から、在日コリアンの歴史や人権問題などに取り組んできた。崔さんとは以前から顔見知りだったが、同センターで崔さんが演奏するのは初めてだ。

 新幹線で神戸入りした文聖姫編集長と合流し、開場前に本誌の定期購読やサポーターズ呼びかけのチラシを配った。65人が集まり、本誌の読者も多かった。開演前のあいさつで片岡さんは「飛田さんは私のキリスト教系の幼稚園(石井幼稚園)の先輩です」と話し、会場が笑い声に包まれた。

 崔さんのショパンの曲の演奏とトークは、いつものように心に響いた。そして今回は神戸ならではの興味深い話も聞けた。

 会場の一つ上の階の3階のロビーでは、常設の古本市が開かれている。同センターは寄贈された多数の書籍を販売し、その売り上げを「六甲奨学基金」として留学生への奨学金支給などに充てている。崔さんは演奏前に、古本市に行って、本を探したという。

「素晴らしい本がいっぱいありました。箱いっぱい買っちゃって、送ることになっています」。そこで、同センタースタッフの大和泰彦さんが「私は(北朝鮮の)宣川を通ったことがあります」と話したという。「大和さんは私の父が、そこの出身だということを知っていたのです。大和さんはその駅の写真もくださいました」と言い、演奏会場で宣川駅の写真を見せた。

南北両方で愛唱される曲

 そして、崔さんは父親の故・崔昌華牧師(1930~95年)の人生に言及した。戦後、キリスト教徒という理由で投獄され、拷問を受けたこと、南に行き、ソウルや済州島を経て、54年に渡日したことなどを語った。「その後、父がたどり着いたのが、神戸でした。神戸改革派神学校で牧師になる勉強をして、その後、宝塚に小さな伝道所を開きました。そこで兄や私が生まれました。私はここがルーツなのかなと思います」。崔牧師は指紋押捺拒否運動など在日の人権問題に取り組んだ。

 そして、自分が一番好きな曲だとして、ショパンの「ロマンス」を弾いた後、「父が一番好きだった曲です」と言って、童謡「故郷の春」を弾き始めた。この曲は日本植民地時代につくられたもので、現在も南北朝鮮の両方で愛唱されている。ゆったりとした美しいメロディーで、とてもいい曲だ。

 演奏会終了後、私も同センターの古本市に行き、7冊買い求めた。時間があればもっと買いたかった。飛田さんの事務室には、同センターが出版してきたさまざまな資料集が保存・販売されていた。そこに92年発行の『朝鮮人従軍慰安婦・女子挺身隊資料集』があった。文献リストのほかに、当時の記事や新聞投書などが収録されている。今となっては貴重なものだ。私が91年8月11日付で『朝日新聞』大阪本社版の社会面に書き、二十数年後に激しいバッシングを受けることになった金学順さんの証言記事も収録されている。裁判資料として持ってはいるが、懐かしくなって、また買い求めた。