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もてあそばれる「真実」

佐村河内事件と音楽界

内容紹介

【内容紹介】
「全聾の現代のベートーヴェン」として人気の絶頂を目掛けて登り続けていた佐村河内守の作品を、実は約18年にわたって新垣隆が書いていたということが明るみに出た「佐村河内事件」。この前代未聞の事件が発覚したのは2014年2月のことである。
 だが、報道や出版など各メディアの対応は、掛け声だけの検証や紋切り型の反省、謝罪になっているのではないか。種類も数もとても豊富に見えるメディアが、実は真相を報道せず、団結して自らの利益になる情報のみを執拗に繰り返すだけの機関になりつつある恐れを感じる。何かがおかしくなっている。私たちの中にあるはずの大事なものが崩壊しつつあるのではないか。新垣隆ら事件の当事者、また作曲家や評論家など、この事件と関わった音楽の専門家の発言を中心に検証を行なった。

【目次】
はじめに
第一章 佐村河内事件の発覚まで

最初の違和感
『"全聾の天才作曲家"佐村河内守は本物か』の執筆
掲載誌を求めて
『新潮45』に掲載
論説の反響はわずか
事件の発覚とその後
第二章 新たな違和感
新垣隆のための署名運動
性急な新垣の音楽活動再開
音楽史におけるゴーストライター
音楽とイメージ
音楽自体を評価することの難しさ
第三章 評論家、作曲家の反応
専門家の責任
「戦後の最高の鎮魂曲」
「純粋にいい曲だから惹かれた」
「日本人が書いた最高の交響曲のひとつ」
パスティッシュ
「一音符たりとも無駄な音がない」
作品イコール人生?
感動を生み出す「装置」
演奏家たち
なぜ向き合わないのか?
第四章 佐村河内劇場から新垣劇場へ
神山典士の仕事
新垣隆の「天才化」
ゴーストライターは悪くない?
「売れるが勝ち」
第五章 もてあそばれる「真実」
『音楽という〈真実〉』
新垣による佐村河内のコントロール
一番の罪
偽の交響曲と偽の作曲家
ふしぎなオルガン_あとがきに代えて

【筆者略歴】
野口 剛夫(のぐち・たけお)
1964年、東京生まれ。中央大学大学院(哲学)、桐朋学園大学研究科(音楽学)を修了。作曲を別宮貞雄に師事。月刊『音楽の世界』編集長、昭和音楽大学講師を経て、現在、東京フルトヴェングラー研究会代表。指揮、作曲を行なう傍ら、『フルトヴェングラーの遺言』(春秋社)、『私の音と言葉』(アルファベータブックス)など著訳書多数。
2014年、『新潮45』(2013年11月号)掲載の論説「"全聾の天才作曲家"佐村河内守は本物か」により、第20回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞。

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