1556号
2026年02月13日
▼いろんなことが異例ずくめだった今回の解散総選挙。有権者が争点を認識できぬまま行なわれる選挙はこれまでもあったが、今回はひどかった。そもそも「白紙委任」を求めて首相がうった選挙ということに帰するのだろう。政権がもくろむ法案のラインアップを考えるとあまりにも軽いのりだった。
候補者からは緊張感というより焦燥感が漂った。「やってはいけない」選挙として、後世語り継がれることになるのかもしれない。
私のところに選挙のお知らせが届いたのは2月5日だった。期日前投票が始まったのが1月28日だからずいぶんと遅い。いや、投票日までに届いたことに感謝すべきなのかもしれない。
山梨の高齢者施設にいる母宛てにはもっと早くに通知が届いた。だが、今回は投票できなかった。これまでは東京にいるきょうだいが電話で選挙公報を解説して誰に投票するかを本人が決め、その名前をきょうだいがメモして母に郵送し、そのメモを投票所に母が持参して投票した。だが、このスケジュールではそこまでできない。
高齢者福祉を危うくする法案も準備されているというのに、選挙権を行使できないのは不条理だ。やはり「やってはいけない」選挙だ。(小林和子)
▼防衛省は2月17日、小型攻撃用ドローン入札を実施する。候補機4機種のうち2機種はイスラエル製だ。「ジェノサイドに抗する防衛大学校卒業生の会」代表の平山貴盛さん(29歳)はこのイスラエル製ドローンの取得計画に反対し、1月26日、ハンガーストライキに踏み切った。イスラエル製は高性能とされるが、「パレスチナ人を虐殺することで性能が向上した兵器だ」と平山さんは非難する。
「安全保障は高性能な兵器だけで成り立つものではない。外交努力やソフトパワー、民主主義国家として法と秩序を守るというナラティブ(言説)の擁護も必要だ」。平山さんは力説する。イスラエル製兵器の導入は、国際社会でパレスチナでのジェノサイドを容認するというメッセージと受け取られかねない。
855億円の費用を計上し、自治体職員や雪国の有権者に多大な負担をかけて強行された戦後最短の衆院選は終わった。かねて「安保政策や外交は票にならない」と言われてきたが、今後は防衛費などの予算審議が本格化する。その前に2月17日という分水嶺を見過ごしてはならないだろう。
ハンストは11日目の2月5日、体調急変で中止された。容体が心配だ。その声が防衛相に伝わることを切に願う。(平畑玄洋)
▼1979年から3年間放送された人形劇「プリンプリン物語」の一部を、一昨年から昨年にかけてNHKのEテレで再放送していた。赤ちゃんの時に海に流された少女プリンプリンが祖国を探す旅に出てさまざまな体験をする内容だが、放映当時の独裁国家チリがモデルで「塵芥」からつけられたというアクタ共和国編は特に風刺がきいていて興味深いものだった。
クーデターで支配者となったルチ将軍の独裁ぶりがひどく、命令絶対・密告歓迎という監視社会だ。何より「選挙制度」がすごい。ルチ将軍を支持する者は投票にいかない。自動的に将軍への信任になるからだ。ゆえに投票用紙も投票箱もない。将軍以外の人に投票したい者は自分で投票箱を作って投票していいが、そういう行為をしたら死刑、なのである。だから投票率100%で支持率100%。とんでもないが、世界を見渡せば、荒唐無稽と笑える状況にはない。日本だって首相が選挙で求めるのは自分への「白紙委任」だろう。
本欄締切は編集長後記を除き5日なので選挙結果は不明。自民大勝の予想に滅入るが、各地で「白紙委任しない」と声をあげ続ける市民の活動に勇気づけられる。
独裁政治はいずれ必ず崩壊する。ルチ将軍は倒され、宇宙に飛んでいった。(宮本有紀)
