742号
2009年03月13日
▼大ピンチの麻生政権を助ける仕掛けとして、恥ずかしくなるほど分かりやすい構図だ。「国策捜査ではなく証拠があったからだ」と検察幹部が語ったというが、鵜呑みにする人がいるだろうか。
総選挙前のこの時期、政党支持率で政権党を上回っていた野党第一党の党首、しかも前月まで「首相にふさわしい人」のトップだった小沢一郎・民主党代表の秘書が政治資金規正法違反(西松建設からの違法献金)容疑で逮捕された(三月三日)。「麻生政権はあと一、二カ月で持たなくなる」と自民党幹事長経験者が漏らした矢先のことだ。案の定、各紙の世論調査で自民の政党支持率が民主に並び、「小沢辞めるべき」が過半数に。
小沢代表を擁護するつもりはない。二〇〇七年に“改正” された政治資金規正法には、このような迂回献金の抜け道が残されている。本来、政治をカネで買う企業献金は一切禁止すべきなのだ。
ともあれ、弊社刊『国策捜査』が売れ行きを伸ばしている。よりによって、検察側の大仕掛けなPRによって……。(片岡伸行)
▼週末に散歩する。家の周りを歩くことも多いが、時にはバスや電車で移動してから歩くこともある。歩き始めはぼーっとしていて、手足の動きがバラバラ、出来の悪いロボットみたいだ。三、四十分もすると、ウォーキング・ハイというんだろうか、身体が温まって心地よくなってくる。そういう状態になると、速度が付いてきて、周りの景色が目に入るようになる。選挙準備のポスター、公園の少年野球、「貸します」と大書したサラ金のブリキ看板、母と子の自転車、ネコの集会、こないだなどは、誰にやられたのか、尾羽のない雀が、飛べずに地面を歩いていた。
小社刊『伊藤真・長倉洋海の日本国憲法』の著者・伊藤さんがいま全国各地で精力的に講演を続けている。講演会の関係者に連絡を取り、同書や『週刊金曜日』の販売をお願いする。大層売れるときもあれば、厳しいときもある。
散歩の時にこれらを携帯して、道行く人に「いい本ですよ、読んでみませんか」と言ったらどうだろうか。まだやれていないが。(片山務)
▼「素朴な疑問」の寄藤文平さんの事務所に伺ったとき、何百年も前の人がジャングルの野生動物を描いた貴重な本を見せていただいたことがある。写真もない時代の、息を呑むような精緻さと躍動感。
「現代人のデッサン能力って、もしかしてこの頃に比べて……」
「落ちてますね。間違いなく」
『検索バカ』が話題だが、調べもので図書館通い、なんてありえない時代になった。何でもすぐに与えられる。いいことなのかどうか。
学生の頃、好きなミュージシャンの「動く姿」に飢えていた。『MTV』などで、きょうはお目当ての映像が見られるか、とひたすら待った。「スリラー」の完全版放映、なんて聞けばその日は朝から頭がそれで一杯だったんである。
やっと見られたときの充足感は大きかった。文字通り、自分の血となり肉となってる気がする。それに比べて、いまはYouTubeで見放題なのに、いまひとつ体に入ってこない気がするのはなぜだろ。
などと思いつつ、昨晩もコルトレーンつながりでYouTube三昧。気づいたら朝。眠。(小長光哲郎)
▼本誌去年一一月一四日号の「貧困なる精神」頁で「救急病院のベッドから貧困なるご報告」と題して、自己過失による車の事故で相棒ともども重傷を負って救急病院に入院した件を書きました。以後何回分かは病院で書きましたが、おかげで比較的順調に回復したため、一二月七日には退院し、胸骨等の骨折も治癒して、現在ほぼ完治といえる状態です。読者の一部から手紙等でご心配をいただきましたので、この場を借りてお礼とともにお知らせします。本当にありがとうございました。
また同号で相棒の重傷について「何よりも『命』を優先せねばならぬ状況」と書きましたが、一時は危篤状態だったのが医者も驚く早さで危機を脱し、今年一月二〇日には退院・帰宅することができました。しかしながら負傷の程度が何か所にも及んで複雑でしたから、決して「完治」というわけにはゆかず、しばらくは後遺症に対処しなければなりますまい。
ともあれ車は七〇歳代になったらやめるべきでした。今や私も「後期高齢者」だそうですが、もともと車自体の存在が基本的問題なのでしょうね。(本多勝一)