731号
2008年12月12日
▼先週、愛知県に行ってきた。世界景気後退によって、“世界のトヨタ” の足下がどうなっているのか、空気をつかんでおくためである。詳しくは後日掲載予定だが、トヨタ系が「雇用の調整弁」を締めたシワ寄せは顕著に表れていた。
雇い止めされた派遣社員がまず頼る労働組合などは相談件数が急増し、電話は鳴りっぱなし。その事務所を東京や海外のメディアまでが取材に訪れるので、さらに忙しくパンク寸前(すみません!)。
また、「出稼ぎ派遣」は寮を追い出され、無料宿泊施設に向かうが定員オーバー。居所がなければ、健康保険の適用も受けられない。住居を与える必要が行政には生じていまいか。一方、派遣会社自体も潰れ始めており、離職表ももらえないそうだ。高度経済成長のツケが今出ている。(平井康嗣)
▼単行本の発売が遅れ気味です。一一月一四日号、定期購読者専用の申込書に掲載の『徳永直 太陽のない街』と『南京大虐殺と「百人斬り競争」の全貌』をご注文の方にお詫び申し上げます。発送までしばらくお待ち下さい。
専任の書籍担当者がいない金曜日。単行本の制作は本誌発行作業との同時進行です。加えて日程は常にタイトで、小さなトラブルは日常茶飯事。その結果、読者をはじめ、各取引先に迷惑を掛けています。重ねてごめんなさい。
こうしたなか、先週発売の『セブン-イレブンの正体』も全国書店で、一斉発売という訳にはいきませんでした。現在確認中のため、詳細は触れませんが、一部取次店が配本を躊躇している模様。店頭にない場合は、あえて書店取寄せ注文をご利用下さい。(町田明穂)
▼六日、憲法寄席創作集団による朗読劇『日の丸あげて』(原作/赤川次郎)を観た。原作は国旗・国歌法と盗聴法が成立した当時に発表された作品で、自分が住む団地全戸に「日の丸」を揚げたい男性が巻き起こす事件を描く。
観終わって、ぞ?っとしていたら、最近あるマンションの管理組合が国旗掲揚の方針を打ち出し、住民の賛成多数で可決された話を聞いて、さらに背筋がぞ?っ。強制は強まるばかり……、内心の自由はどこへ? 二六日は「君が代不起立」を貫く教員・根津公子さんらの集会が終日、都庁前で行なわれる。どうぞお忘れなく。
今週号では、いまや自然保護や利水からだけでなく、治水の面からも不要論が上がるダムを特集した。筆者は、かつて川を風呂替わりに海外を旅した経験を持つ、まさのあつこさん。(吉田亮子)
▼報道されている通り、「派遣切り」でホームレスとなる人が続出している。製造業に派遣が解禁されて四年、一気にここまでひどい事態になるとは思わなかった。というか、こんなにも日本の大企業が、その経営者が残酷だとは思っていなかった。寒さが厳しくなり、世間はクリスマスやお正月で浮かれムードになるこの季節、わざわざ三月までの契約を一二月で切り、同時に寮からの退去も命じる。正社員の半分以下のお給料で必死で働き、企業を支えてきた人々がホームレスになることをまったく躊躇しない経営陣。「血も涙もない」とは、このことではないのか。
しかし、現場からはそんな状況に怒り、立ち上がる人も出てきている。それ自体は非常に喜ばしいことだが、もはや「立ち上がる気力も体力も余力もない」人が大半だ。そしてこの世の中には「派遣切り」などを自分とまったく無関係のものと考え、冷たい視線を向ける人もいる。そしてこの問題は都会以外では「見えない」。東京や名古屋にいれば、ファストフード店などに住む場所をなくした人々が押し寄せていることが目に見えてわかる。が、都会でないとそんな光景を目にすることはない。しかし、彼らの多くは地方出身者。特に沖縄が多く、「派遣切りホットライン」の窓口のひとつ「管理職ユニオン・東海」に電話相談してきた人の三割近くが沖縄出身者だという。製造派遣には北海道や東北、九州出身者も多い。決して他人事ではないのだ。(雨宮処凛)