週刊金曜日 編集後記

1321号

▼韓国の元日本軍「慰安婦」被害者12人の訴えを認め、日本政府に1人あたり1億ウォン(約950万円)の賠償を命じた韓国・ソウル中央地方裁判所の判決。本誌では2月12日号から、山本晴太弁護士の翻訳を転載する形で全文を連載している。
 解説もつけた。1回目は山本弁護士、2回目は国際法が専門の阿部浩己・明治学院大学教授、3回目はアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)の渡辺美奈館長だ。読者からも「慰安婦にされた女性の証言は胸に突き刺さる」などの感想が届いている。いまやこんな企画を立てられるのは本誌ぐらいかもしれない。「慰安婦」問題になると、一般紙は腰が引けてしまうのだろうか。読者からも「一部でもいいので、一般紙も載せるべき」との声が寄せられた。3月26日号に最終回を掲載する。解説を書いてくれたのは、「ナヌムの家」のスタッフとしてハルモニたちに寄り添い続ける方だ。いずれも素晴らしい論考で、意義ある企画になったと思う。(文聖姫)

▼うたごえ喫茶の存在はずいぶん前から知っていましたが、実際に訪ねたのは今回の取材がきっかけでした。藤田正さんの本文にもあるとおり、「家路」のみなさまの温かいもてなしに心を打たれました。単なる客としても数回通い、請われて『ワルシャワ労働歌』『私に人生といえるものがあるなら』などを歌わせていただきました。楽しい時間でした。
 年表欄にある「家路ともだちの会」は、今後もかつての常連を中心に定期的にうたごえ活動を続けていく予定で、家路の公式サイトなどネットを通じて案内をしていくそうです。
 また、コロナ禍で休業中の「うたごえ喫茶ともしび」は、『しんぶん赤旗日曜版』(3月14日号)に広告を出しています。〈新店に向けてあらたな始動! 今後、各地で出前うたごえを開催していきます!〉とのことです。こちらも公式サイトに情報があります。
 メディアによる流行とは別に、歌い継がれる名曲が世の中には数多くあります。さまざまに姿を変えながら、「うたごえ」は愛され続けるのでしょう。(伊田浩之)

▼昨年くらいから増えてきたサブスクリプションサービス(サブスク)。もともとは雑誌などの定期購読を指す言葉だったらしい。なので定期購読主体の『週刊金曜日』もまさにサブスク。今では、ソフトウェア、音楽、車など商品の種類も多岐にわたっている。定額制で継続して商品やサービスを利用するというのが基本だが、付加サービスも読み放題、見放題、などの量で勝負系から、税金、手数料込みや、コンサルティング料金込みなどのコミコミ系と幅が広い。
 コロナ禍でリアル店舗に出かけづらいこともあり、衣料品サブスクの利用を始めた。少額の追加手数料で何度でも交換し放題だ。その気安さから、試着感覚で普段は買わない色やデザインのものにチャレンジしたりしている。
 利用し始めてから実感したメリットは捨てる苦労がない(物が捨てられない性格)、クリーニング不要なので手入れする手間がない(ずぼらな性格)ことだが、とっかえひっかえする裏側で見えなくなっているのは、環境の継続性なのかもしれない。(志水邦江)

▼小社は出版社だが、刊行物の『週刊金曜日』が報道系だからか、これまでのメディア関連企画は新聞業界の企画が多かった。放送業界も時々取り上げてきたが、出版業界についての企画はあまりなかった気がする。出版社は業界大手でも企業規模としては小さいことと、業務内容が特殊なので、事例を出すと会社や個人が特定されやすいという事情もある。
 今週号に掲載しているメディア労組役員の座談会では、漫画編集の手法が話題になった。担当が作者にはりついて一緒に内容を考え、アシスタントがいて分業的に作業する日本の漫画編集スタイルは特殊で、海外の人は驚くという。知人の漫画編集者は夜でも食事中でも漫画家に呼ばれるとかけつけるという長時間労働を嬉々としてやっていたが、いくら本人がいいと言っているからといって労働者の「やる気搾取」的状況のままでいいのかという問題も残る。今回は紙幅の都合で削除したが、このエンターテインメント業界の問題については、今後機会があれば取り上げてみたい。(宮本有紀)