週刊金曜日 編集後記

1297号

▼菅義偉氏は、9月16日の首相就任会見で「安倍政権が進めてきた取り組みをしっかり継承して前に進めていく」と決意を語った。
 文字通り「安倍なきアベ体制」を目論む菅新政権が発足した。
『神奈川新聞』の石橋学記者は、「差別まで引き継ぐのか」の見出しで9月16日付紙面にて、菅氏の女性蔑視や排外主義を断罪し、新政権に警鐘を鳴らした。その書き出しは、〈菅義偉氏を首相にしてはならない〉だ。
〈敵を仕立てて分断を刻み付ける政治の荒廃こそが安倍政権の7年8カ月であったが、それは菅氏のすさみでもあるようだった〉
 田中宏一橋大名誉教授は〈ヘイトスピーチを吹き上げ、植民地主義が尾を引く差別政策を行って恥じない安倍政治を引き継ぐと堂々と言った人物〉〈いずれ化けの皮がはがれよう〉と菅氏を評した。
『朝日新聞』論座(9月5日付)での白井聡氏の舌鋒も鋭い。
〈安倍を補佐する共犯者であった彼らが、失われた公正と正義を回復する意図など持っているはずがない〉〈後継者が誰になろうが(略)本質は何も変わらない。第二・第三の安倍がまたぞろ現れて、日本社会の腐敗を一層促進するだけのこと〉
 やはり第二の安倍を首相にしてはならない。アベ政治は終わらせなくてはならない。(尹史承)

▼徘徊団7回目は六本木。真夏の夜に美術館をさまよった。真夜中の美術館めぐりは初めてだ。というか、ほとんどの人は、やらないだろう。そのうえ、この夜はとても暑かった。美術館内に入れば涼しいのだが......閉まっている。当たり前だ。
 持ってきたタオルで頻繁に汗をふく。ペットボトルの水をちょこちょこ飲む。それなのに、ほかのふたりはいつも通りの手ぶら。汗もふかない。この身体感覚の違いに驚く。もしかして、俺が単なる汗っかき?
 その昔、六本木の交差点から数百メートル、西麻布のガラス店の地下に「自由劇場」があったころ何回か行った。1975年頃だろうか。吉田日出子はもとより、若き日の柄本明や立木(秋川)リサも出ていて、役者の飛ばすツバキを浴びながら夢中で見ていた。地下は人いきれでかなり暑い。終演後、路上で日本酒が振る舞われる。たいして飲めないのに、友人と2人でばかばか飲んでしまった。フラフラになりながら、電車のなくなった六本木をさまよった。相手のことをユビで指しながら、笑いがとまらない。意味もなくおかしいのである。その友人のロックンローラー、ヨシダは、俺に借金を残しながら行方不明になった。それから45年後、六本木、2度目の深夜徘徊。(土井伸一郎)

▼『週刊金曜日』にファッションなんて似つかわしくない、と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、ユニクロの下請け企業で働いていた労働者たちの苦しみを知ったら......どうでしょうか。
 詳しくは記事を読んでいただくとして、下請け企業の倒産に責任持つ必要あるのか? という意見も出てきそうですね。でも製品を作り販売するまでのすべての過程において、常に企業の社会的責任が問われる昨今の感覚からすると、ユニクロ(ファーストリテイリング)には、やはりきちんと対応していただきたいものです。それが日本企業全体のイメージを底上げすることにもつながると思います。
 米国は、中国の新疆ウイグル自治区で強制労働で製造されている(疑いがある)製品をボイコットすると発表しました。この"ウイグル疑惑"にはユニクロはじめ11の日本企業の名前があがっており、ユニクロ以外はITや家電企業です。あなたが使っているパソコンやスマートフォンの部品は、ひょっとしたらウイグルで作られたものかもしれません。
 日本企業といえば、最近あきれたのが、大坂なおみ選手のスポンサーである日清食品のツイッター。「大坂さんのかわいい情報」って......。いつまでもこんな感覚でいると、消費者から愛想つかされますよ、本当に。(渡辺妙子)