週刊金曜日 編集後記

1296号

▼本誌と提携している韓国の週刊誌『時事IN』に、団塊世代の高齢者問題について原稿を書いてくれと頼まれ、ここ数日必死に調べた。そこで「2025年問題」を知った。1947年から49年にかけての「第1次ベビーブーム」の時に生まれた団塊の世代が25年、全員75歳以上になる。9月9日の『朝日新聞』(朝刊)によると、社会保障の給付費は18年度の121兆円から25年度は140兆円に膨らむ見通しだ。厚生労働省によると、25年には65歳以上の高齢者の割合が人口の30・3%になり、高齢者世帯の約7割をひとり暮らし・高齢夫婦のみ世帯が占めると見込まれる。医療費の総額も61・8兆円になるとされる。
 問題は社会保障費の財源確保だ。菅義偉新総裁は消費税増税について10日のテレビ東京の番組で、将来的な引き上げに言及した。11日の会見では一転、安倍晋三前首相の19年10月の国会答弁を引き合いに、今後10年は上げる必要はないと述べた。冗談ではない。10年後だろうと、これ以上われわれに負担を強いるのか。武器の爆買いをやめれば、財源を確保できるのでは?(文聖姫)

▼本年2月から、投稿のページを担当しています。
 長らく働いていた新聞社では「オピニオン」のページを担当していた経験はありますが、読者からの原稿を直接、担当するのは初めてです。予想以上に難しく、同時に予想以上に面白い仕事だと感じています。
 担当して1カ月ほど経ったころ、自戒を込めてこんなことを手帳に書きました。
「編集作業で大事なのは、投稿者を一人ひとりのライターとして、敬意を持って接することだ。決して『選ぶ側』という、上から目線的な意識を持ってはならない。原稿に敬意を持って接することは、それは彼ら、彼女らの人生に敬意を払うことにつながる。一人ひとりを大切に。これがリベラリズムの原点だ。担当するページを、そのような世界にしたい」
 さて、目下の悩みは、3ページから4ページに増やしたにもかかわらず、いただいている原稿のかなりの数が掲載できないことです。申し訳ありません。
 これからも多くの方の多様な声が響き合うような「言葉の広場」にしたいと考えています。よろしくお願いします。(佐藤和雄)

▼コロナ禍対応の在宅勤務中、ご多分にもれず、ネットでの買い物が増えた。元々食料品などは生協の配達を利用し、コーヒーなど一部だけ地元店で購入していたのだが、感染者数急増でそれもネットに切り替えた次第で、Amazonが四半期で過去最高の利益を上げたというニュースは、デジタルに頼る自らを省みて苦々しかった。
 本号の連載「自由と創造のためのレッスン」で、資本主義システムが、コロナ禍を利用して如何に延命を図っているかを改めて認識したが、そのキーワードが「デジタル」。GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)を筆頭に、デジタル産業全体がコロナ禍で覇権を握りつつあるのは確かだ。
 廣瀬純さんによれば、それは、権力者個々というより、資本主義自体の性向だが、だとしても、総裁選の最中に「デジタル庁」構想を掲げた菅義偉氏に、カジノ疑惑同様の新たな利権に敏い政治家の匂いしか感じないのは私だけか。
「叩き上げの苦労人」などといったメディアの媚び諂いに呆れながら、とりあえず、地元店での買い物から再開する次第。(山村清二)

▼『週刊文春』の実売が伸びていたらしい。「文藝春秋」は7月、同誌の2020年上半期実売部数は前年同期比104・4%だったと発表した。スクープを連発するその実績を思えば当然のような気もするが、「日本ABC協会」による最新の雑誌販売部数(19年7月~12月)を見る限り、「文春砲」として名を馳せるこの雑誌でさえも前年比マイナスが続いていたのだ。
 この間、同誌は"森友事件で命を絶った財務省職員の遺書"を公開し、"検事長の賭け麻雀"を暴いた。もっとも、一番売れたのは芸能人の不倫問題を扱った号だったのだがいずれも完売。どれも大きなインパクトを与えた。自らにも言い聞かせることとして、結局、部数回復は誌面の充実が一番の処方箋なのであろう。ただもう一つ気になる動きがある。定期購読者がこれまでになく急増しているというのだ。コロナ禍で書店購入が困難になったことに加え、「富士山マガジンサービス」との連動が功を奏したことなどがあり、1月からの新規定期購読契約数は7000部を超え1万2000部に迫る勢いとのこと。この事実は本誌も参考にして生かしたい。(町田明穂)