週刊金曜日 編集後記

1291号

▼3食食べてしっかり睡眠もとっているのに、朝起きるとだるくてつらい......。梅雨の時期のこうした症状は「梅雨バテ」というのだそうだ。かくいう私も梅雨バテの当事者で、先日もかつてない倦怠感に見舞われた。栄養剤をのみのみやっとの思いで出社したが、こんなのは今年が初めてだ。
 特に今回の梅雨は長引いた上、折からのコロナ禍でマスク着用や遠出自粛などを余儀なくされ、心身にストレスがたまったことも影響しているのだろう。
 早くコロナ禍は終息してほしいが、危機回避のかじ取りをするべき政治家や首長の不甲斐なさは目にあまる。検査や医療の体制拡充をという場面で、小池百合子東京都知事が「感染拡大特別警報」と"キャッチフレーズ大喜利"に興じていたのには、あきれて思わずイスから落ちそうになった。
 しかし、こんな水準の政治家や首長を日本社会が選挙で選んでいるのも事実。こうして強まる社会の閉塞感もまた、梅雨バテをこじらせる一因に違いない。
 ところで梅雨が明ければ明けたで今度は猛暑の日々か。気候変動まっさかりの今を生き抜くのもホントに大変だ。(斉藤円華)

▼迷走を続ける政府の新型コロナウイルス対策に、もはや期待するものは何もないですが、「マスク転売禁止規制を廃止する」には唖然。誰の目にもすでに第二波であることは明らかなこの状況下で(でも誰も第二波と言わないのはどうして?)、再度マスク需要が高まるのは火を見るよりも明らか。なのに、このタイミングで転売禁止規制の廃止を打ち出すとは、この人たち、本当に国民のほうを向いていないんだなと、つくづく実感する次第でございます。今のうちにマスクを買いだめしておかなければ、な~んて思う2020年の夏。
 それにしても、夏場のマスクはつらいですね。涼感マスクとかありますが、100%の解決ではないところが惜しいところ。
 そして夏場といえばもうひとつ、UV問題が。みなさんどうしているのでしょう? 私、気をつけていたつもりだったのですが、ものの見事に眉間が日に焼けてしまいました。いっそのこと、ヒジャブみたいに顔全体を覆いたい──とここまで書いて調べたら、顔全体を覆うのはブルカかニカブであることがわかりました。マスクよりも涼しそうですよね。(渡辺妙子)

▼松尾芭蕉『野ざらし紀行』に富士川で「三つ計なる」捨て子の話がある。芭蕉は食い物をやりつつ「猿を聞人捨子に秋の風いかに」と詠み「汝が性のつたなき(を)なけ」と通り過ぎてゆく。いかに昔とは言え「猿を聞人」も驚くだろう一種の自己責任論だ。 
 れいわ新選組の大西恒樹氏(現在は除籍)の発言や難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者嘱託殺人で、命の選別や優生思想という言葉が「津久井やまゆり園」の大量殺人事件以来、再びクローズアップされている。優生思想の辞書的定義を持ち出して大西発言を「優生思想ではない」と擁護する人々や、嘱託殺人を奇貨として安楽死や尊厳死の議論をはじめようとする政治家が現われるなど、決して少数派の戯れ言ではないのが恐ろしい。優生思想が差別主義や自己責任論と相性がよいのは論を俟たない。朝鮮学校差別や生活保護費を切り下げる政府の姿勢が優生思想の蔓延とつながっているのは明らかだ。もちろん現政権だけの問題ではなく、旧優生保護法下の優生手術が戦後社会で行なわれたことも忘れてはならない。「汝が性のつたなきをなけ」は過去の話としなければならない。(原田成人)

▼新型コロナウイルスの拡大を無視するかのように「Go Toトラベルキャンペーン」が強行される中、独自の「自粛要請」「休業要請」を出す自治体が出ている。本末転倒。理不尽きわまりない。まず国は、感染拡大の危険が高いこのキャンペーンを即座に停止すべきだ。
 しかも、キャンペーンでは「東京発着旅行は対象外」とされているものの、すでにネットにはさまざまな"裏技"を使えば東京でも割引が適用される方法があふれているし、名義貸しなどの抜け道もある。何より東京以外でも感染は広がっていて、東京外しは建前でしかない。そもそも「感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後」にキャンペーンを実施すると国は言っていたはずだが、一日の感染者数が最多を更新する中でもこのキャンペーンを停止する意思は、まったくないようだ。JNNの世論調査では、安倍内閣の支持率が最低を記録したというが、至極当然のことだろう。
「休業要請」をしている自治体も、少額の補償しか提示していないし、希望がまったく見えてこない。結局、自己判断と自衛という「自己責任」を市民も業者も押しつけられ続けている。(渡部睦美)