週刊金曜日 編集後記

1282号

▼ある日突然、路上に出没するメッセージ性を持った絵──そんなゲリラ性が真骨頂のバンクシーを「展覧会」で鑑賞するというスタイルを、バンクシー本人が歓迎するはずもない。それでも世界中を巡回している「バンクシー展 天才か反逆者か」は各地で盛況。「シュレッダー事件」でバンクシーの市場価値がかえって上がったように、「資本主義」の皮肉だろう。
 その「バンクシー展」の日本上陸は、新型コロナウイルスの感染拡大の時期と重なったため、開催から1カ月足らずで「休止」した。藤田正さんとアライ=ヒロユキさんは間に合って今回の特集ができたわけだが、記事中の表現を借りれば「バンクシーが仕掛けたみたい」な展開である。
 翻ってこの国の「表現」環境は「表現の不自由展・その後」の「中止」の経緯が示す通りだが、コロナ禍中の過剰な「自粛」強制も軌を一にするように思える。バンクシーから学ぶとすれば、何よりこの「不自由さからの脱出」の意思と技法ではないか。(山村清二)

▼『週刊金曜日』は記事中のワッペン表記として「新型肺炎」を使ってきましたが、5月29日号から「COVID-19」に変更します。この新型コロナウイルスは、肺炎以外にも、さまざまな臓器や身体の部位に悪影響が及ぶことがわかってきたためです。たとえば、子どもでは過剰な免疫活性化で川崎病に似た症状が出ることがあることが欧米で報道されています。
 日本政府は5月25日、緊急事態宣言を全国で解除しましたが、第2波、第3波が来ることが想定されます。小康状態のいま、次への備えを整えるとともに、営業自粛要請や仕事の大幅減、雇い止めなどで大きな被害を受けている方々への政府支援が必要です。
 ツイッターデモによる世論の可視化で検察庁法改悪を止められたように、必要な声を上げることで、政策転換につなげられればよいと痛感します。先週末の世論調査で内閣支持率が急落しました。『毎日新聞』27%(不支持64%)、『朝日新聞』29%(不支持52%)と30%を下回っています。現内閣では十分な対策ができないことをみなさんが痛感したのでしょう。「#さよなら安倍総理」の実現は近そうです。(伊田浩之)

▼ご報告とお詫びをさせていただきます。昨年末に亡くなった北村前発行人の追悼会の件です。実は当初「北村肇さんを偲ぶ会」としての開催を5月22日に予定しておりました。都内の会場を借りて簡単な立食形式で故人を偲ぶものです。事務局をたちあげて最初の打ち合わせをしたのは2月中旬。それを受けて詳細を本欄に掲載するはずであったのですが、「新型コロナウイルス感染症」は徐々に拡大期に入り、気が付けば本誌での告知をためらう事態となっていました。そして様子をみているうちに感染はさらに拡がり、4月上旬に関係者と相談のうえ今回の開催は見送ることになった次第です。
 本誌1月10日(1263)号、北村さんの訃報告知で"追悼会開催を予定しており、決まり次第詳細を本誌で告知する"旨記載いたしました。読者の方から「その後どうなったのか?」とのお問合せをいただいております。こうした状況下ではありましたが、事後報告となってしまい大変申し訳ございませんでした。あいにくの現状では、まだ見通しを申し上げることができません。今後も慎重に判断してまいります。(町田明穂)

▼新型コロナは世界経済に大きな打撃を与えているが、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)も例外ではない。中国と北朝鮮の貿易額が昨年に比べて大幅に減少している。北朝鮮は中国で新型コロナの感染者が出始めた1月にいち早く国境を封鎖し、中国との貿易を停止した。そのため、中朝貿易総額は昨年に比べて大幅に減少した。1~2月は2億807万ドル(約224億円)で前年同期比29・5%の減少、3月はさらに下がって1865万ドルで前年同期比91・3%の減少、4月は2400万ドルで前年同期比90%の減少。北朝鮮貿易の8割を中国が占めるとも言われるだけに、打撃は少なくない。金正恩・朝鮮労働党委員長が5月8日、習近平・中国国家主席に親書を送ったのに対し、習主席は翌9日にメッセージを送り、ウイルス対策で北朝鮮を支援すると言明した。中朝貿易が回復し、北朝鮮経済に好影響が出ることを願う。24日の『朝鮮中央通信』によると、北朝鮮では党中央軍事委員会が開催され、核戦争抑止力の強化方針が示されたという。経済苦境が続くなか、再び強硬路線に回帰するのか、心配だ。(文聖姫)