週刊金曜日 編集後記

1239号

▼本誌きんようぶんか欄で今号より、編集部員がリレーして執筆してきた「本箱」コーナーに代わり「TVドキュメンタリー」コーナーが始まる。詳細はご覧いただくとして、毎週TVで放映されるドキュメンタリー番組の中から注目作を紹介する内容だ。
 気になる番組があれば、わりと簡単に視聴できるのはTVのいいところだろう。同コーナーは膨大な番組編成の中から良質な番組をピックアップして紹介していく。週刊誌の速報性、それに情報を選別して届ける紙媒体のよさが生きる企画ではないか、と担当者として自画自賛している。
 なお「本箱」コーナーを楽しみにしていた読者は、当面の休載ということで時期は未定だが再開をお待ちいただきたい。
 ところでTVドキュメンタリーといえば今、気になるのは7月4日、11日に放映のEテレ「バリバラ」(木曜20時)だ。元タレントの田代まさし氏が出演し、薬物依存症になった自らの体験を語る。何かへの依存を深めずにはいられない、世の中の「生きづらさ」も見えてくるのでは。(斉藤円華)

▼6月下旬に神戸から読者の方が家族を伴われて「表敬訪問」に来社。82歳、声は大きいしはりがある。元気だ。創刊号からの購読者。佐高信さんの編集委員辞任に「もう少し頑張ってほしかったです」と伝言を頼まれた。当日は武蔵野に用事があって、その前に神保町に寄られたとのこと。
 本誌6月14日号の松元ヒロさんの「写日記」にある「ミロンガ」の看板を見て、昔よく行かれたその場所が懐かしく想い出され、「いまミロンガに行ってきたところです。まあ、そのついでに『金曜日』にも顔を出させてもらいました」。それでも読者からの直接の励ましは(カップアイスクリーム12コの差し入れも)うれしい。
 ヒロさんも書かれているように写真は「ミロンガ」ですが、裁判当日矢崎泰久、山根二郎両氏が行ったのは、すぐ向かいにある「ラドリオ」。その裁判の2回目が9月2日に開かれるのを前に、8月10日(土)お茶ノ水「エスパス・ビブリオ」で「君は元号を生きるのか!?」と題しイベントが開かれる。予約・問合せはTEL・03・6821・5703。(土井伸一郎)

▼歴史的な板門店での米朝首脳会談の立役者は韓国の文在寅大統領だ。文政権の米朝対話継続への並々ならぬ外交努力が実を結んだ。
 日本のメディアは、G20に際し、日韓の対立を煽り、韓国孤立と報じた。「日本との関係は過去最悪と言われるほどに悪化」「アメリカともギクシャクしている」「一方日本は、トランプ大統領が短期間に3度来日しアメリカとの関係は蜜月」6月28日配信のFNN.jpプライムオンライン、「外交的『孤立感』に悩む文在寅氏」6月23日付『産経新聞』ウェブ版など。しかし、蚊帳の外に置かれていたのは、ほかでもない日本であった。外務省はNHKの取材に「米から連絡なし 詳細不明」と答える始末。意図的に韓国との接触を避けてきた安倍外交が裏目に出た形だ。
 安倍首相はG20夕食会で大阪城のエレベーター設置は、「ミスだった」とバリアフリーの視点を欠く発言をし、世界各国から失笑を買ったが、米国に媚びを売ってもハシゴを外されまくる自身の外交ミスもいい加減認めたらどうだ。三原じゅん子氏の言葉を借りれば「恥を知れ」だ。(尹史承)

▼伊藤聡・茨城大学教授へのインタビューで特に印象に残ったのは、古くは"神功皇后の「三韓征伐」譚"にあらわれたような朝鮮半島への視線が、「今も変わっていないのでは」との指摘だ。現在の韓国への対応をみると激しく同意する。
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)との関係はもちろん、中国とも米国とも一定の距離を保ちつつ、独自の外交で自らの立場をつくりだす韓国の文在寅政権に比べて、安倍晋三政権は米国に追従するだけで事足れりとする。こじれた日韓関係を自ら打開する姿勢は皆無で、G20での二国間協議さえも開催しない傲慢さは呆れるばかりだ。
 日本の中の朝鮮文化を追い続けた故金達寿氏は、『日韓 理解への道 座談会』(中公文庫、1987年)の中で、「日本と朝鮮との関係においては、古代史とは現代史」と明言して、相互理解を深めるための歴史教育の重要さを説いた。隣国蔑視の日本が、どれだけ朝鮮半島から歴史的文化的な影響・恩恵を受けてきたか。本特集の伊藤氏や岡谷公二氏、高麗文康氏のインタビューを通してその一端でも伝わればと願う。(山村清二)