週刊金曜日 編集後記

1238号

▼6月23日は沖縄「慰霊の日」。本誌では一足早く、14日号で沖縄特集を掲載した。実は、15ページの写真は、今年辺野古のテント村を訪問したときに撮ったもの。大きな音がして外に出ると、向こうの空から2台のオスプレイ。辺野古を横切るように飛んで行った。
 そのときに訪れた宮古島では、ハンセン病療養所、宮古南静園へ。1944~45年、宮古島での空襲で園が壊滅状態になると、職員が職場放棄。その上入所者が掘った避難壕を日本軍は取り上げ、自然壕などでの避難生活を強いられたという。無治療、食料も乏しいなか、400人以上の入所者のうち、110人あまりが亡くなった。
 ハンセン病に対する隔離政策、偏見や差別だけでなく、戦争という二重の苦しみを入所者たちは受けたと、ボランティアガイドさん。らい予防法が廃止された以降にやっと、南静園の戦争犠牲者約90人が平和の礎に刻銘されたという。(吉田亮子)

▼6月2日放送の「NHKスペシャル」、見ました?
 多系統萎縮症という難病にかかった日本人女性が、スイスで安楽死するまでを追ったドキュメンタリーでした。この病気は身体機能が徐々に奪われ、そのうちに思考以外のすべての機能を失い、胃瘻や人工呼吸器、そして誰かの介助なしには生きられなくなります。治療法もありません。彼女は「自分が自分であるうちに死にたい」と、スイスの自殺幇助団体に登録します。とまどいを隠せない姉妹たち。彼女自身だけでなく、家族も葛藤する様子を、カメラは記録します。そして安楽死当日、医師から致死薬の入った点滴のストッパーを渡され、自分のタイミングで開けるよう言われます。彼女はためらうことなく点滴を開け、姉たちに「ありがとう。幸せだった」と言いながら息を引き取ります。
 亡くなる前の手続きの一部始終や、亡くなる瞬間そのものが放送されたことに、賛否両論あるとは思います。でも「死ぬ」とはどういうことなのか、「安楽死」とはどういうことなのか、充分考えさせられる内容でした。放送から1カ月近く経っても、忘れられない番組です。(渡辺妙子)

▼今日(6月28日)から全国公開されている映画『新聞記者』が面白い。詳しくは本誌14ページからの監督インタビューを読んでほしい。原案は『東京新聞』の望月衣塑子記者。話題作なのに、関西はいいけど関東のテレビ局は紹介に難色を示していると聞く。理由は、望月さんが参議院選に出る可能性があり、宣伝になるからだと(望月さんは立候補を強く否定)。じゃあ公示後ならと聞くと、自民の選挙妨害になる可能性があるからダメと言われたらしい。それぐらい政権を直撃する映画なのだ。関東のテレビ局上層部に政権への忖度があるのならば情けない。
「『愛媛新聞』と忖度」の連載を再開した。さまざまな関係者から話を聞きながら、「みなさん、新聞が本当に好きなんだ」とあらためて思う。愛しているからこそ、いまの社内の風通しの悪さや、紙面の惨状に立腹しているのだ。
 取材力や人脈、情報発信の技術などは、新聞社が群を抜いている。その力を誰のために使うのか、経営が厳しさを増す今こそ問われている。頑張っている現場の記者を力づけられる誌面をつくりたいと願っている。(伊田浩之)

▼定期購読のみなさまに、本誌の新しい「宣伝チラシ」を5月17日(1232)号に同封しました。お知り合いの方に『週刊金曜日』を紹介する際のツールとして、ご利用いただければ幸いとお送りした次第です。ところが蓋を開けてみると、現在購読をされている読者の方から、契約を更新する意思表示としてのご返信を、たくさんいただくことになりました。感謝の念に堪えません。そして同時に当方の説明不足であることを認識し、ここにお詫び申し上げます。今後もイベントや集会等でチラシを配布していただける場合は、必要な枚数をお送りします。ぜひ業務部までお声がけください。また今後「きんようびのはらっぱで」にて掲載したイベント情報の担当者様宛に、当社からチラシ配布をお願いする連絡が入るかもしれません。その節はお手数ですが、何とぞご検討ください。
 さて今号はG20大阪サミット開催に伴う交通規制の影響で、お届けに遅れが生じていると思われます。大変ご迷惑をお掛けしますが、次号より通常配達に戻りますので、引き続きのご購読をよろしくお願いいたします。(町田明穂)