週刊金曜日 編集後記

1228号

▼「下関北九州道路」をめぐる塚田一郎・前国土交通副大臣の選挙演説が問題になった。建設着工をさも自身の功績のように見せるための「忖度」発言で卑しくも支援者の歓心を買ったが、実際は官邸からの「指示」があったのは明白だ。建設「要望書」には安倍晋三の名前があり、昨年10月には首相自ら「早期建設に向けた活動にしっかり取り組むように」と発言している。そして問題が公になり、利益誘導の疑いがかかると、「私は知らない」とうそぶく。「森羅万象」を司っているにもかかわらずだ。この既視感たるや......。昭恵氏とのかかわりを追及された森友学園しかり、「首相案件」で認可されたとされる加計学園しかりだ。
 安倍「忖度」政権が悪質なのは官僚や政治家が、独断で勝手に「忖度」したとし、白々しくもトップが責任逃れをすることだ。公文書改竄の佐川宣寿元理財局長はじめ、そのトカゲの尻尾は数知れず。
 新元号は「令和」に決まった。「命令」で人をかしずかせ、「調和」させる。名は体を表すとはよく言ったものだ。安倍政権の本質ここに極まれり。(尹史承)

▼「くらしの泉」ページでは、4月より3カ月間、小早川明子さんによる「ストーカーと向き合って」を連載いたします。
 小早川さんは「NPOヒューマニティ」で、ストーカー相談にあたっている方です。ストーカー被害者を守るため、ご自身が被害者の防波堤となるべく加害者と直接対峙し、加害者へのカウンセリングや、治療のための医療機関への橋渡しを行なっています。加害者との1対1のつきあい(?)は、長い人で10年以上にもおよぶそうで、体を張った活動、本当に頭が下がります。
 先日も、「ストーカーやDVの相談件数が過去最多になった」というニュースがありました。小早川さんもコメンテーターとして登場なさっていた番組があったので、ご覧になった方もいたのでは? 法律ができたからといって、ストーカー被害がなくなるわけでなく、加害者自身にストーカー行為をやめてもらわなければならないわけで、ではどうすればいいのか――ということを、全12回の連載で書いていただく予定です。(渡辺妙子)

▼「方から」という言い方には、いまだになじめない。会計をするいろいろの場所で「500円の方からでよろしかったでしょうか?」と聞かれるのだ。「そちらの方からでよろしかったと思います」と答えると変な顔をされる。
 コンビニやユニクロや、これもいろいろな会計をする時点でとにかく質問されるのだ。「アプリをお持ちですか?」「(なんとか)カードをお持ちですか?」。私が持っているカードはテレフォンカードと図書館の貸出券と歯科の診察券くらいである。最近ではもう口を開くのが億劫になり、手の平をだしてヒラヒラリ(ないないよ)するだけになってしまった。
 先日は、近くの出版社のM氏が珈琲を奢ってくれるというのでヒョコヒョコと近所のブックカフェへ。するとM氏が前金払いでもらった領収書を見せて「これじゃ使えないですよね」と言う。見ると金額だけ書かれていてあとは白紙伝票。いやいや後学のためにと、M氏はハンコがある領収書を求めたら、今度は「鈴木」と三文判だけ捺されていた。(土井伸一郎)

▼花粉症持ちの私にとって今の季節、何が一番辛いかといえば「山登りに行けないこと」だ。
 くしゃみ、鼻水、目のかゆみに苦しみながらでは、山歩きも何もあったものではない。しかし行かなければ運動不足になる。イライラもたまってくる。鏡を見ればブスーッと不機嫌だ(元々か?)。
 4月に入り、さすがにたまりかねて先日、埼玉との都県境にそびえる棒ノ折山(標高969メートル)に登ってきた。花粉のピークは過ぎた、と踏んでのことだ。
 3月だと低山でも雪がついていることがあるが、4月ともなれば木々が芽吹いている。平地では盛りを過ぎたウメが満開。沢筋の青々としたワサビ田にも目を奪われ......アレ? 鼻水が出ない。目もかゆくない。「これってもしかして......花粉症が治ってる!?」
 山を下りて家に近づくに従い鼻水が出たり目がかゆくなったりしたので、空気が汚れると花粉症もキツくなるようだ。なあんだ。結局「治った」というのはぬか喜びだったが、来年はもっと早い時期から山登りしよう。(斉藤円華)