週刊金曜日 編集後記

1227号

▼フィンランドでは映画撮影も労働法を厳守し、6時間働いたら必ず休憩を入れ、残り2カット程で終わる時も時間がくれば休むとか。土日は時給が倍になるが、大抵撮影を休むそうだ。今号掲載のフォトグラファー座談会出席者は全員追加料金なしの長時間労働に悩んでおり、「羨ましい。日本ではあり得ない!」と嘆いていた。
 テレビ局では社員→下請け→さらにその下請けというヒエラルキーがすごいという話が出て、紙媒体でも「主従関係じゃないのに、カメラを顎で使うペン(編集やライター)がいる」という声が出た。そういえば誌面をレイアウトするデザイナーからも「上から目線で深夜でも指示してくる編集者がいる」と聞いたことがある。
 広河隆一氏の性暴力報道後、カメラの世界で生きる女性の実態をとりあげたいと企画したのだが、全業界全職種に通底する問題ではないか。職種や性別、肩書きなどを問わず、相手を個人として尊重するという根本が実現しなければ、賃金差別やハラスメントは永遠になくならない。(宮本有紀)

▼卒業式などで「君が代」を大きな声で歌うように事前に指導し、声量調査することを定めた通知が2004年に東京都町田市で出され、市教育委員会に抗議をするために集まったのが、崔善愛さんとのはじめての出会いだったと思う。言葉に説得力があり、さらに話を聞いたのではなかったか。
 その後、「日の丸・君が代」強制に不起立で抗議し、処分を受けていた教師、根津公子さんとの対談「立ちはだかる国家と向き合って生きる」で09年に誌面登場。「平和は心の中で静かに祈り、願うだけでは実現しません」「平和を守ることを他人や国に委ねないこと」と話し、根津さんが「同感です。一人ひとりが自分の言葉で語り行動することから平和の希求ははじまりますよね」と応答した。
 これから編集委員としてどんなかかわりを持っていただくか、会いたい人、やりたいことが次々と出てくるので、こちらはタジタジである。ピアニストとして、音楽をはじめ文化面にも力を入れたいという崔さん。次週の「風速計」に登場です。どうぞ楽しみにしていてください。(吉田亮子)

▼1970年代のしらけた空気の中で、アナーキーな軽薄さを振りまきつつ、実は必死にもがいている若者を、萩原健一=ショーケンは全身で体現していたように思う。
 自ら出資したといわれる「祭りばやしが聞こえる」(77~78年、日本テレビ系列)は、事故でケガをして療養を余儀なくされた競輪選手の、挫折と再生に向けた日常を描いたテレビドラマ。代表作「傷だらけの天使」(74~75年、同)のようなエンタメ性が少ない分、淡々と心に沁みる作品だった。
 映画では『アフリカの光』(75年)。『青春の蹉跌』(74年)などと同じ神代辰巳監督作品で、原作は丸山健二。港町を舞台に、アフリカへの渡航を夢見て彷徨する群像劇。神代得意のアドリブと長回し演出に、ショーケンや共演の桃井かおりらが見事に応えている。
 そんな彼がバブルに向かう80年代前半に何度も逮捕されたのは、時代への違和感のゆえかと想像すると、いま、新元号狂想曲の前に逝ったことは象徴的にも思える。
 80年代の隠れた快作『カポネ大いに泣く』(85年、鈴木清順監督)でも観て追悼しよう。(山村清二)

▼4月開始を目標にイラストを中心としたページの連載企画をいくつか準備してきました。その一つ、「橋本勝の風刺画報」を3月29日号からスタートすることができました。いただいた案をぜひとも元号発表前に掲載したいということで当初の予定を早めました。新元号は惜しくも「平和」とはなりませんでしたが、「平和」を求めて50年も風刺画を描き続けてきた橋本勝さんの連載をお楽しみください。月1回掲載の予定です。
 また、橋本さんが集会などで読み聞かせている紙芝居をPDFにしたものを「9条世界憲法宣言」として金曜日のサイトに掲載しました。ぜひご覧下さい。
 橋本さんのイラストを使わせていただいているオリジナル9条Tシャツはおかげさまで600枚以上の注文をいただきました。品切れでご迷惑をおかけしていましたが、先週やっと皆さまへの発送を済ませました。ただ1件だけお申込者の住所と名前のない振替用紙があり、お送りできていません。名古屋方面でお心当たりの方は業務部までご連絡を。(志水邦江)