週刊金曜日 編集後記

1213号

▼今週号の本箱でも関連書籍を紹介したが、今、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)が注目されている。厚生労働省が今年四度目の改訂版を出した「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」においてACPの概念が導入されており、これからの医療・ケアを考えるうえでの指標となりつつある。
 ACPとは、患者本人とその家族、医療・ケア提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、将来のケアについてあらかじめ考え、終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定ができなくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておく「話し合いのプロセス」を意味する、とのこと。
 先日、厚生労働省が、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を「人生会議」に決定したらしいが、ちょっと重くないですか? 個人的にはACPのままでいいと思うのですが。(本田政昭)

▼恒例、誰かは待っていたかもしれない「映画ベスト5」。
『デトロイト』 1967年7月25~26日、デトロイト暴動の際に起こった「アルジェ・モーテル事件」。緊迫した状況を手持ちカメラで演出。鎮圧部隊の心理描写。
『スリー・ビルボード』 こちらはミズーリ州の架空の街。主演のフランシス・マクドーマンドの表情が脳膜にずっとこびりつく。
『メトロレディーブルース総集編』地下鉄売店で働く女性たちが組合を作った。「東京琉球館」で見る。その場にいました組合の人たちが。笑いがあるから闘える。
『万引き家族』 エンドロールに姪の名前を発見。安藤サクラ必見。
『ボヘミアン・ラプソディ』 高校生の私は、ビートルズのLPに針を落とし、妹の部屋からはクイーンが聞こえてきていた。そして、LPを交換した。「応援上映」も観てしまった。
 年末は『アリー/スター誕生』が楽しみ。1976年の『スター誕生』から42年。(土井伸一郎)

▼必見、誰かは待っていたかもしれない「アイドルベスト5」。
「BiSH」 楽器を持たないパンクバンド。飛ぶ鳥を落とす勢い。ロックフェスでも存在感。奇才、渡辺淳之介に時代が追いついてきた!? 本誌もアイドル特集でお世話になりました。紅白落選残念。
「たけやま3.5」 官邸・加計学園と対立した中村愛媛県知事もサブメンバー。「驚異の顔面偏差値」が売り。松山・東京を車で往復し活動。来年の台風の目はここか。
「NGT48」 炎上系アイドルとして話題の中井りかにはプロレス的要素が多分にある。お笑いコンビのおぎやはぎが、「おんな明石家さんま」と評すほどの才能。
「欅坂46」 不動のセンター平手友梨奈。売り方に賛否両論あるが、彼女の存在感は唯一無二。楽曲やライブ演出は、非常にクオリティが高い。ソニー恐るべし。
「BABYMETAL」  いや、もう"外タレ"に分類か。公式ツイッターも英字って......。(尹史承)

▼先月の連休、雲取山に登ってきた。東京都の最高峰(標高2017メートル)であり、埼玉・山梨の両県との都県境に位置する。
 JR奥多摩駅から西東京バスに揺られて登山口へ。見頃は過ぎていたが、ふもとはまだ紅葉が残っていた。半月、いやあと1週間来るのが早ければ、山全体が紅葉で染め上げられていただろう。
 山小屋で1泊して早朝、頂上へアタック。そうしたら何と! 稜線から頂上にかけて雪がついているではないか。しかも樹霜が陽光を浴びて白くキラキラ輝いている。気温が上がると、風で樹霜がサーッと舞い落ちてダイヤモンドダストのようだ。今年は猛暑で、秋の冷え込みも弱かったのに、東京の山の上ではもう冬景色......。
 ところで雲取山の東京・山梨側は都の水源林だ。雨や雪は多摩川へ注ぎ、貴重な飲み水となる。国会で水道「民営化」案が通った。自然の恵みを元手に、地域と縁もゆかりもない資本が利益を吸い上げることになるのか。(斉藤円華)