週刊金曜日 編集後記

1203号

▼『読売新聞』10月1日朝刊の社説がおかしい。玉城デニー氏が当選した沖縄県知事選をめぐり、〈辺野古への移設は、普天間の返還を実現する上で、唯一の現実的な選択肢である〉としている点だ。
 安倍晋三政権の主張と瓜二つだが、普天間基地を使用している米海兵隊が沖縄にいる必要がないことを本誌は何度も指摘し、直近では6月22日号で特集した。2012年に日米が合意した在日米軍再編で沖縄の海兵隊は現有兵力1万8000人が1万人にほぼ半減される。実戦兵力(地上戦闘部隊)のみの比較では800人の上陸大隊のみの配備となり、実戦兵力は7分の1以下になるのだ。
〈わずかな戦闘力しか持たない海兵隊のための飛行場建設だが、知恵を出せば代替案はいくらでもある〉(同号、屋良朝博氏の記事)
 米朝対話の進展で東アジアの安全保障環境は劇的に変わろうとしている。在日米軍や日米安保のあり方を根本的に考え直す責務が日本政府にはある。(伊田浩之)

▼言葉は生き物だ。誤読でも多くのひとに読まれ続けるとそれが標準の読みかたとなる場合がある。「早急」は本来「さっきゅう」と読むのだが、今では「そうきゅう」の読みかたも間違いとされない。
 先の国連総会の演説で安倍首相は「背後」を「せいご」と読んだ。過去には「云々」や「画一的」を誤読したこともある。今後「安倍読み」が広く親しまれることは一向に構わないが、安倍政権の改竄、隠蔽、恫喝などが至極当前のこととなり、それらが正当化されることは断じて許してはならない。
「放射能被害はない」と言い続けても、被害がなくなることはないし「モリカケ問題はシロ」としても、黒が白に変わることはない。
「玉城当選で沖縄が中国に占領される」。沖縄県知事選では、玉城デニー氏が当選を果たしたが、対立候補側から流される誹謗中傷やデマには目に余るものがあった。いくらデマが拡散されようが、それが真実になることはない。印象操作に惑わされず新たな知事を選んだ沖縄県民を讃えたい。(尹史承)

▼先日「斉藤さんの名前を雑誌『NO NUKES Voice』17号(鹿砦社刊)で見た」とメールが届いた。ハテなんでかなと思ったら、著述業・編集者の横山茂彦さんが寄稿した「ツーリング洞爺湖2008」の回想録に名前が出ていた。今回は前編で、次号に続きが載る。
 ちょうど10年前の初夏、洞爺湖サミットに向けて地球温暖化防止をアピールすべく、国会正門前から洞爺湖をへて札幌までの1500キロメートルを自転車で走るロングライドがあった。
 横山さんはこの「ツーリング洞爺湖」の元代表。コーディネーター役の渡瀬義孝さん、そして私の3人で全行程を15日かけて走破したが、道中では関東から東北の太平洋沿岸に点在する原子力施設を訪ね、地震への安全対策の強化を申し入れたものだった。
 今思い起こすのは、三陸のリアス海岸を縫うように走ったこと。イカの白子の刺身とホヤ冷麺、ホタテの生の貝柱。ツーリングから3年後、果たして3・11と東電原発事故は起きた。(斉藤円華)

▼9月20日、李政美さんのコンサート「おとと ことばと こころで」があった。小室等さんがゲスト出演していっしょに「老人と海」を歌ったり、能楽で祝いの舞があったり、最後はバースデーライブらしく、みんなで「ハッピーバースデー」を歌って花束を贈呈するなど盛り上がった。
 1部では武藤類子さんの詩「福島からあなたへ」に政美さんが曲を付けた「ああ福島」が歌われた。福島の美しい風景を歌った曲なのだが、福島県内にあった祖父母の家やまわりの風景が子どものころの楽しかった思い出とともに急に思い出され、おもわず涙。あれから7年が経つが、住民たちの思いはいかほどかと思う。
 27日、大阪朝鮮高級学校を無償化制度から除外した国の処分を違法と判断した一審判決が、控訴審で逆転敗訴になったとのニュース。朝鮮学校の子どもたちが大人になったとき、よいこともたくさん思い出せる世の中にしたいと思う。東京の無償化裁判の控訴審判決は10月30日だ。(吉田亮子)