週刊金曜日 編集後記

1199号

▼このたび......ではなくすでに8月末日、週刊金曜日を辞めました。幽霊部員による編集後記ということになりますがご容赦ください。
 1997年の9月1日に入社して丸々ちょうど21年。筑紫哲也さんの担当や中山千夏さんの元子役対談シリーズなど、愉しい企画をたっくさんやらせてもらいました。読者の皆さんに感謝します。
 本誌は厳しい状況です。私の退社も、経費削減のため希望退職が募られ、応募したという経緯。ほんとにまあ人生っつーのは、ときに思いがけない展開を見せます。悩ましい、究極の選択でしたが、新しい道を進むことにしました。
 最後に、愛着あるこの週刊誌にエールを。たとえば安倍批判の企画をやるにしても、政権に賛同する人やそのおかしさに気づいていない人の手元にこそ届かなければ、苦労してそんな記事を作る意味があるのか、どうか。筑紫さんが「工夫が足りないよ!」と部員を叱咤し続けたのもまさにそこ。幽霊部員は力及ばず去りますが、筑紫さんの遺した松明が灯り続けますように。ではそんなところで、皆さんお元気で。(小長光哲郎)

▼先日、ゴラン高原で育った、国籍のない若者たちのバンドTootArdが来日した。春先から彼らの中東サウンドにご執心の私。ところがライブ当日、珍しく仕事が終わらない! やっと開演15分前に社を飛び出し、走りに走ってギリギリセーフ。ああ、やっぱり行ってよかった。彼らが本当に楽しそう、嬉しそう。彼らの素敵な人生につられて私も笑顔に。しかし、愛してやまない彼らの生演奏を聴くのは初めてではないらしい。
 パレスチナ西岸では、秋にタイベという小さな村でオクトーバーフェストが開催される(近頃は開催地不定)。地ビール「タイベ」を飲みながら音楽などを楽しむのだが、私が参加した6年前、彼らが演奏者の一組だったとか。その時から彼らの虜だという友人に言われるも、まるで記憶にない。
 景色が変われば感じ方も違う。今般、退職することになった。これから新たにどんな喜びを見出すのだろう。お世話になった皆様、この場で御礼申し上げます。ありがとうございました!(市川瞳)

▼「ぼけますから、よろしくお願いします。」
 昨年のお正月に、(認知症になった)母が実際に娘に向かって言った言葉をタイトルにしたドキュメンタリー映画が11月に劇場公開される。認知症の86歳の母と耳の遠い95歳の父との「超・老老介護」の危ういバランスで成り立っている平穏な日々を、離れて暮らすひとり娘(監督・撮影・語り)の視点で丹念に描いたテレビドキュメンタリー番組に、追加取材と再編集をした完全版である。
 この映画の元となったテレビ番組は放送後、視聴者から再放送の希望が殺到したという。ここに記録された家族の小さな物語は、全国のどこの家族にも起こりうる、決して他人事ではない物語だろう。
 夏に帰省した時、子どもの頃に過ごした場所を訪れてみた。かつて賑わっていた駅前の商店街は閑散としていた。人々はどこへ消えてしまったのだろう。路地にある地元のラーメン屋だけは昔のままで少しホッとした。(本田政昭)

▼先日、業務会議で小誌8月24号の書店売れ行きの話になった。翁長雄志沖縄県知事の追悼号である。発売前に入手方法の問い合わせもあったので売れるかと思いきや現状、沖縄以外では売れ行きが鈍い。沖縄ものは全国的には数字が伸びない傾向にあるが、翁長さんでも関心度が低いとは。
 そして地元鹿児島以外は視聴率が伸び悩んでいるという大河ドラマ「西郷どん」。主役の鈴木亮平を始め俳優陣は熱演でドラマ自体は面白い。長州力のリキラリアットが炸裂したし、小栗旬の龍馬もいい。ただ関連番組での宣伝が多すぎてかえって興ざめしてしまう。極めつきは、安倍首相の鹿児島での総裁選出馬表明であった。まるでドラマの薩長同盟の回に合わせたのかのような醜悪な番宣だった。但し、NHKと安倍首相、どちらが忖度したのかは不明である。
 来年は、大河ドラマ「いだてん」で翌年の東京五輪を盛りあげるという魂胆らしい。明治150年から東京五輪へ。国策会社NHKここに極まる。クドカン脚本には興味あるが、さて......。(原口広矢)