週刊金曜日 編集後記

1189号

▼誰一人欠けても、このドラマは成立しなかっただろう。
 主役はもちろん、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領。そして準主役は韓国の文在寅大統領だ。中国の習近平国家主席も、時折登場しては金委員長に助言を与える"名わき役"として存在感を示す。ロシアのプーチン大統領は今のところ出番はないが、ラブロフ外相と金永南最高人民会議常任委員会委員長という露朝高官の相互訪問が実現しており、遠からず出演するだろう。
 12日に行なわれた米朝首脳会談については、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」の文言が入らなかったとか、非核化の期限が設けられなかったなどと批判的な声も聞かれる。だが、ドラマは始まったばかりだ。両首脳の相互訪問も日程に上る。しょっちゅう会うようになれば、信頼関係も深まり、共同声明履行の環境も自ずと整うだろう。ドラマは最終回まで見ないとどうなるか分からない。結論を急がない方がよいのでは。
 ところで、安倍首相はいつ頃登場するのだろう?(文聖姫)

▼沖縄から嬉しいニュースが飛び込んできた。今年4月に終了した沖縄県独自の、沖縄戦の影響下での義務教育未修了者に対する支援事業が年度内に復活されることになったという。復活を求める署名2万305筆を6月10日県教育庁に提出した際、平敷昭人教育長が年度内に復活させることを表明したのだ。NPO珊瑚舎スコーレの自主夜間中学の署名要請にこれほどの署名が集まったことに驚かされたことは勿論、県教委が国民の要望にまっすぐ応えてくれたことが、安倍政権で人間不信になりかけていた身としては小躍りしたいほどの気持ちだった。改めて11月に迫る沖縄県のトップを選ぶ県知事選の重要さを思う。
 米朝首脳会談の結果、韓国から米軍が撤退?という更なる「明るい」見通しに、ならば沖縄の米軍基地だって! しかし韓国の基地がなくなれば、沖縄の基地がその分強化されることになるのではないか、というあるテレビ番組のコメンテーターの言葉に厳しい現実を思い知る。(柳百合子)

▼友人から聞いた話です。自宅に親戚が泊まりに来たときのこと。親戚の衣服の香りが強くて、洗濯をしたら洗濯機にまで香りがこびりついてしまったとか! 驚いて何の洗剤を使っているのか聞くと、親戚は自分が普段使用している洗剤で友人がわざわざ洗濯してくれると勘違いしたらしく、「(友人が使っている洗剤と)同じでいいわよ~」との返事。「香害」に気づかず、悪びれた様子がまったくない親戚に、友人はそれ以上つっこめなかったと言います。
 6月5日付『朝日新聞』『毎日新聞』に掲載されたシャボン玉石けんの広告、インパクトがありましたね~。「日本に新しい公害が生まれています。その名は『香害』」という文字と、花柄の洗剤ボトルに全面どぎついピンク色。何かにおってきそうでした。ネットでは「香害」を知ってほしいという反応が多数あがっていて、友人のように身近な人にさえ伝えることが難しい、この問題の深さを感じます。今後も「香害」を誌面で取り上げます。(吉田亮子)

▼Childish Gambino「This Is America」のミュージックビデオがネットで話題になっていたので見てみた。なるほど、アメリカの差別や銃社会を告発したという不穏な内容は、その暴力の描写から英語が分からなくても察知できるレベルのものだ。日本でも影響をうけてパロディ動画「This Is Japan」がつくられたが、「This Is America」の批評性が欠落しているとして、これまた話題になったようだ。この無邪気なパロディ動画を見ていて、ある集会で「日本にもまだ差別があるんでしょうか?」と質問した高齢者を思い出した。老若問わず日本に差別もなければ人権問題もないといまだ思っている人がいる。
 30年ほど前に「黒人差別をなくす会」という団体が絵本の黒人差別表現を告発したことがあった。告発はある程度社会を変えたが、版元ではなく同団体への猛烈なバッシングが印象に残る。「差別はない」と思い込む日本人ほど差別を告発されると告発者に牙をむいて襲いかかるのだ。(原田成人)