週刊金曜日 編集後記

1163号

▼この十数年間、防衛省や自衛隊の役人は何かにつけ「一層厳しさを増すわが国の安全保障環境」などというフレーズを枕詞にして、軍備増強・軍事費増額を要求し続けている。だが、肝心な点に触れていないから説得力はゼロに等しい。ならば、どうしたら「厳しさ」なるものが減じるかについて、何も語れていないのだ。「厳しさを増す」から兵器を増やし、「仮想敵国」の近くに送り込んでも、相手が警戒して対抗すればいつまでたっても「厳しさ」は続く。天下りが最大の関心事の役人にとっては、それで儲かる兵器業者からの受けが良くなるからそれでいいのだろうが、「厳しさ」が問題なら軽減すればよく、そのための手段は外交による相互理解に落ち着く。連中が煽り立てるような、軍拡ではないのだ。この国にとって、軍事でしか解決できない問題を抱えている隣国は存在しない。いい加減、米国とその子分の安倍を「忖度」するしか能のない役人共のデマを止めさせるべきだ。(成澤宗男)

▼「ペンによって書かれた憲法の適正手続の条項が、コンピュータのコードによって毀損される」とウェブ版「ワイアード」の記事は、始まります。AIナウ(ニューヨーク大学の研究所)の報告書が、政府に対して、市民の権利が守られるように、AIのブラックボックス化を防ぐよう求めています。
 刑事裁判の刑期、警察での犯罪発生。教育、福祉での優先順位の決定・評価。民間の、労働時間や仕事の分配、採用の決定。こうした領域でAI(機械学習)の、スコア評価、予測が使われ、政府もこの結果に頼る傾向にあります。
 政府にAIのソフトウェアを提供する民間企業の知的財産権の問題によって、アルゴリズム(手順)が公開されないからです。結果によって人生を左右される市民の側にとっては、不透明です。
 今後、AIの使用に関する倫理性と透明性が求められます。日本でも近い将来、こうした問題が起こることになります。(樋口惠)

▼10月25日、遠藤賢司が亡くなった。60年代末に歌を歌い始め、反戦フォーク全盛の中においても、決して「私たち」とは歌わず、個の日常の心象風景や、人間の中に潜む「情念」の世界を歌い続けてきた。72年、三島由紀夫の割腹自殺の日のことを歌った『カレーライス』が大ヒット。78年、英国でのパンク・ムーヴメント(特にセックス・ピストルズ)に触発されたアルバム『東京ワッショイ』を発表。「不滅の男」となる。昨年、がんであることを公表するも、療養と並行しつつ音楽活動も継続し、名盤『満足できるかな』発売45周年を記念し、「遠藤賢司 with サニーデイ・サービス」で、このアルバムの再現ライブが行なわれた。(「遠藤賢司秘宝館」より)。
 12月10日、横浜シネマリンにて「アリガトウ エンケンさん!」と題し、2005年に製作された映画『不滅の男 エンケン対日本武道館』の劇場上映が決定(14時15分/19時30分)。伝説の無観客ライブが甦る。(本田政昭)

▼「本誌読者拡大キャンペーン」の開始からひと月が経過しました。この間、多くの読者のみな様からお知り合いの方をご紹介いただきまことにありがとうございます。例年この時期は多くの方が更新時期を迎える「大量更新」の直後にあたり、数百単位で部数が減ります。今年も約4000名のうち9割近くの読者の方が継続手続きを行なってくださいましたが、400人以上の方が何らかの事情で購読をおやめになっています。その理由は多様ではありますが、キャンペーンの最中ということもあり、いつにも増して厳しいお声も頂戴しました。記事内容や編集方針への批判だけではなく、振替用紙の体裁や文面へのご指摘、本紙のラッピング袋へのご批判等々、業務部で対応する問題についてです。それぞれの可否はともかく、いずれも検討をして今後の対応に活かす所存ですのでよろしくお願いいたします。(町田明穂)