週刊金曜日 編集後記

1160号

▼10月に小社が刊行した『21世紀に『資本論』をどう生かすか』(鎌倉孝夫・佐藤優著)の売り上げが堅調です。今年はカール・マルクスが『資本論』第1巻初版を出してから150年なのに、類似の企画があまりないことも背中を押してくれているようです。
『週刊金曜日』公式サイトとフェイスブックで佐藤さんの「まえがき」を公開しています。そのごく一部。〈資本主義社会では、労働力の商品化が行なわれている。その結果、資本が生産過程を支配することが可能となり、資本主義が自律的な社会システムとして自立することになる。『資本論』第1巻冒頭の商品を資本主義社会に特有のものであるという解釈をすると、この社会が資本家、地主、労働者の三大階級によって構成されているということがわかるというのが宇野学派の『資本論』解釈だ〉
 階級意識を皮膚感覚でとらえることが重要だと考えています。過労死するほど働いても労働者は通常、資本家にはなれません。社会の仕組みを根本から考えたい人々に薦めます。(伊田浩之)

▼本号の発売日に文部科学省の大学設置・学校法人審議会は、愛媛県今治市で建設中の加計学園獣医学部に対し「認可」答申を出す予定だと報じられている。
 しかし、ロッキード事件の賄賂5億円の10倍に当たる、最大で50億円の建築費水増しが疑われ、加計孝太郎理事長らが刑事告発されている。また、今治市では研究施設からのバイオハザード(生物災害)の危険性を審査する第三者による専門委員会が10月に設置され審査中だ。そして何より、森友学園への国有地売却問題と同様、理事長と親しくしてきた安倍晋三首相と妻・昭恵夫妻による政治の私物化と癒着・腐敗が疑われている。これだけの疑惑があり、しかもなに一つ事実解明されずに「認可」となれば、恐るべき教育行政の事例を残すことになる。
 なにより、国会でまともな説明のできない首相と、証言や説明を拒否しながら外遊には嬉々として出かける妻に対して、国民の不信と怒りがさらに高まるだろう。安倍政権は年末に向け、急速に支持を失う可能性がある。(片岡伸行)

▼2008年1月25日号からスタートした「浮躁中国」ですが、今号掲載の第105回をもって連載終了とさせていただくことになりました。足かけ10年にわたる長期連載となったことは、ひとえに読者の皆様方のご支持の賜であり、深く感謝いたします。
 と同時に、この10年(正確には9年強)が中国という国がさまざまに変化する過渡期であり、その変化のおもしろさに目が離せなかったということも感じます。まさしく「浮躁」――中国語でそわそわして落ち着かない、ざわざわした雰囲気を表す言葉――だったのかもしれません。私は私個人の、きわめて狭い範囲内での変化しか実感を持てませんが、それでも充分、刺激的でした。そして今、中国は「小康社会の完成」の時代に入っています。
「浮躁中国」の連載はいったん終了といたしますが、多少の準備期間をいただき、中国・台湾、ひいてはアジアの視点を伝える新連載を始める予定です。今後とも、どうぞよろしくおつきあいください。(渡辺妙子)

▼子どもの学校の学園祭で忙しい連休だった。今年は保護者会役員で、その仕事やクラス発表、部活、また保護者同士、先生方などのなかで、小さな社会でもいろいろな人間関係を見た。皆に感謝されまくりの信頼されている保護者かと思っていたら、違う立場から見たらとても手出し口出ししまくりで対応に困っていて驚いたり。
 外から見たら、狭くて小さな範囲のことかもしれないが、私たちにとってはそれは日常だし、身近で関わっていかなければならないことだからなかなか厄介だ。いろいろな角度からの見方も考えて想像していかなくてはと思う。
 なかなか世の中のことまで考える余裕が今はあまりないけれど、ふとニュースや新聞を見ていて、人間や物事をいろいろな角度から見ようと......しても、印象はそうは変わらなくて。もしかしたら見方を変えたらいいところがあるのかも、と思ったのだが。だめなものはだめだ。(佐藤恵)